子宮頸がん治療の画期的進歩ー導入化学療法で死亡率35%低下

キャンサーリサーチUK

(「2023年重大ニュース」より)
キャンサーリサーチUKの助成を受けた研究者らは、既存薬の使用方法を変えることで、過去20年以上の間に子宮頸がん治療に最大の改善をもたらした。

子宮頸がん患者に対して標準治療開始前に化学療法を短期間行うことで、子宮頸がんによる死亡または再発のリスクが35%低下することが、INTERLACE試験結果で示された。

英国では年間約3,300人の女性が子宮頸がんと診断されている(2017〜2019年)。

悲しいことに、英国では年間約860人がこの疾患で死亡している(2018〜2019、2021年)。1999年以来、医師らは化学療法および放射線療法の併用である化学放射線療法(CRT)の方法で、子宮頸がん治療を行ってきた。新たな研究は、化学放射線療法の前に6週間の導入化学療法を行うことにより、より多くの人が、がんを再発せずに生存できることを示した。

5年後、導入化学療法後に化学放射線療法を受けた試験参加者のうち生存していたのは80%、再発または転移が認められなかったのは73%であった。一方、標準治療を受けた試験参加者の場合、それぞれの割合は72%、64%であった。

「がんの治療はタイミングがすべてです」と、Iain Foulkes医師(キャンサーリサーチUK、研究・革新担当理事)は言う。「子宮頸がんの化学放射線治療開始前に導入化学療法を追加するという単純な行為が、この試験で驚くべき結果をもたらしたのです」 。

また、導入療法に使用された2種類の化学療法薬は安価で入手しやすく、すでに使用が承認されているため、新たな標準治療になるのは比較的早いのではないか、と専門家は語る。

「この疾患における転帰がこれほど大きく改善したのは、20年以上ぶりのことです」と、試験責任医師であるMary McCormack医師(ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンがん研究所、ユニヴァ―シティ・カレッジ・ロンドン病院)は語る。「私は、この試験に参加した患者全員を大変誇りに思います。彼女たちのおかげで、あらゆる場所での子宮頸がん患者の治療改善に必要なエビデンスを収集することができました」。

この治療法は他のがんにも同様の画期的進歩をもたらす可能性がある。「他のいくつかのがん種でも、手術や放射線治療の前に化学療法を追加することが有効であること示すエビデンスが増えてきています。再発リスクを低下させるだけでなく、すでに世界中で入手可能な薬剤を用いて迅速に運用することができるのです」と、 Foulkes医師は述べた。

  • 監訳 喜多川 亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)
  • 翻訳担当者 佐藤美奈子
  • 原文を見る
  • 原文掲載日 2023/10/31

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

 

女性のがんに関連する記事

若年層のがん罹患率増加の理由を追究の画像

若年層のがん罹患率増加の理由を追究

もしかしたら、ディズニーワールドにいた時にそれはすでにあったのかもしれない。冬の終わりの朝、ビジネススーツ姿のテディベアを前面にあしらったスウェット・パーカーとジーンズという服装でオフ...
米FDA、KRAS変異陽性の再発低悪性度漿液性卵巣がんにアブトメチニブ+デファクチニブ併用を迅速承認の画像

米FDA、KRAS変異陽性の再発低悪性度漿液性卵巣がんにアブトメチニブ+デファクチニブ併用を迅速承認

2025年5月8日、米国食品医薬品局(FDA)は、全身療法の治療歴があるKRAS変異再発性低悪性度漿液性卵巣がん(LGSOC)成人患者を対象に、avutometinib[アブトメチニブ...
【米国癌学会(AACR)】MDアンダーソンから画期的発表12演題の画像

【米国癌学会(AACR)】MDアンダーソンから画期的発表12演題

アブストラクト:1186、3746、3763、3776、3824、6367、6384、6396、6424、6427、6436、6438テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの...
卵巣がんの根本原因は― 答えの一部が新研究で解明かの画像

卵巣がんの根本原因は― 答えの一部が新研究で解明か

研究者らが、卵巣がんで最も多いタイプの重要な生物学的因子とみられるものを発見した。この発見は、卵巣がんを早期発見したり、そもそも発症を予防したりするためのアプローチ開発を方向付ける可能...