稀な腎臓癌における癌細胞の代謝変化の役割に新知見

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日 :2014年8月21日

癌ゲノムアトラス研究(TCGA)ネットワークの研究者らは、稀な腎細胞癌の生物学と発生に関する新たな知見を多数得た。 研究者らは、嫌色素性腎細胞癌(ChRCC)は、細胞にエネルギーを供給するミトコンドリアの遺伝子変化に一部起因していることを明らかにした。 さらにこの腫瘍には、DNAの修復や細胞の寿命を決定する酵素テロメラーゼの維持に重要な遺伝子付近の遺伝子再配列に特徴があることが判明した。研究者らは最終的に、ChRCCは特異な疾患であり、他の腎臓癌とはゲノムの特徴をほとんど共有していないことを明らかにした。

ベイラー医科大学(ヒューストン)のChad Creighton博士、ノースカロライナ大学(チャペルヒル)のKimryn Rathmell医学博士が主任研究者となり実施したChRCCのゲノムに関してこれまでで最も詳細である本研究では、ChRCC腫瘍66検体中50検体の全ゲノム解析を含むさまざまな分析を実施した。この検体数は、稀少な癌としては数多いものである。 本研究により、ミトコンドリアDNAの変異と同様、ミトコンドリアの数も増加していることが判明した。 このことからChRCC腫瘍は、より一般的な淡明腎細胞癌で利用されているエネルギー供給とは異なるエネルギー供給経路を好むことが明らかにされた。 その上これらは、癌の発生に影響すると思われるTERT遺伝子に影響を及ぼす特異的変化を示す初めての知見であり、癌における同遺伝子の発現増加と脱制御を説明する助けになると思われる。 全体としては、この知見はより一般的な腎臓癌の発症についての新たな見識をもたらし、癌におけるミトコンドリアと代謝経路の役割を解明するのに役立つものである。 多くの癌は、特異的な治療を必要とする複数の異なる疾患から構成されているため、この結果は、癌のゲノム特性と起源となっている細胞の両方が重要であるという、近年高まりつつある認識を支持するものでもある。TCGAは、国立癌研究所(NCI)と国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)によって支援・運営されている共同研究である。両研究所はいずれも米国立衛生研究所に属している。この研究結果は、Caner Cell誌8月24日号に掲載された。

原文

翻訳担当者 野川恵子

監修 榎本裕(泌尿器科/三井記念病院)

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