術後化学療法は進行性膀胱がんの生存期間を延長する可能性

キャンサーコンサルタンツ

膀胱摘出後に化学療法を受けた進行性膀胱がん患者の方が手術だけ受けた患者よりも全生存期間が長い。この所見はフロリダ、オーランドで2月26日から28日まで開催された2015年度米国臨床腫瘍学会(ASCO)泌尿生殖器がんシンポジウムで発表された。

ステージIIIの膀胱がん患者、または、進行性膀胱がん患者のがんは結合組織と筋肉を通じて、膀胱の外側に隣接した組織の中へと浸潤したものである。男性では前立腺に、女性では子宮または膣に浸潤することもある。ステージIII膀胱がんの場合は、リンパ節や遠隔部位にまで拡がっていることはない。

膀胱がん患者は、膀胱および近接するいくつかの臓器を切除する手術、つまり、根治的膀胱摘除術を受ける場合がある。そうした患者は、膀胱摘除術後の追加治療である術後補助化学療法も受けることがある。その目的は術後に残る一切のがんを排除し、がん再発のリスクを低下させることである。現在、実施されている研究では、膀胱摘除術後に術後補助(追加)化学療法を実施することと、術後再発の徴候が現れるまで待機すること(経過観察)の有用性を評価するものである。

このほど実施された臨床試験では、進行性膀胱がん患者において術後補助化学療法、および、経過観察による治療効果を比較した。この試験には3,294人が登録され、すべて膀胱摘除術を受けた患者であった。これらの患者のうち937人は術後補助化学療法も受けていた。

全生存期間は、膀胱摘除術+術後化学療法を受けた患者の方が膀胱摘除術だけを受けた患者よりも長かった。術後補助化学療法を受けた患者の方が年齢層が低く、リンパ節にがんが拡大している割合が高く、がんの侵襲性はより高い傾向にあった。

これらの所見によると、進行性膀胱がんに対する膀胱摘除術後の化学療法は、膀胱摘除術後に経過観察する場合と比較して、患者の生存期間を改善する。これまで、進行性膀胱がんにおける術後補助化学療法を支持する十分なエビデンスがなく、術後化学療法の研究はあまり進んでいなかった。今回の情報は、そうした情報不足を補うとともに進行性膀胱がんに対する術後補助化学療法の実施を支持するものである。

参考文献:
Galsky MD, Stensland K, Moshier EL, et al. Comparative Effectiveness of Adjuvant Chemotherapy (AC) versus Observation in Patients with ? Pt3 and/or Pn+ Bladder Cancer (BCa). Presented at the 2015 Genitourinary Cancers Symposium. Journal of Clinical Oncology. 2015; 33 (supplement 7; abstract 292).


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 有田香名美

監修 榎本 裕(泌尿器科/三井記念病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

膀胱がんに関連する記事

尿路上皮がんにエンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブ併用で生存期間がほぼ2倍にの画像

尿路上皮がんにエンホルツマブ ベドチンとペムブロリズマブ併用で生存期間がほぼ2倍に

ジョンズホプキンス大学抗悪性腫瘍薬エンホルツマブ ベドチン(販売名:パドセブ)とペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)との併用療法は、標準的な化学療法と比較して、進行尿路上皮がん(膀...
進行膀胱がんにエンホルツマブ併用療法が新たな選択肢にの画像

進行膀胱がんにエンホルツマブ併用療法が新たな選択肢に

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ2件の大規模臨床試験の結果によると、進行膀胱がん患者に対する有効な治療選択肢が数十年ぶりに増えた。そのうちの1つの治療法、エンホルツマブ ベ...
HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023の画像

HER2標的トラスツズマブ デルクステカンは複数がん種で強い抗腫瘍効果と持続的奏効ーASCO2023

MDアンダーソンがんセンター(MDA)トラスツズマブ デルクステカンが治療困難ながんに新たな治療選択肢を提供する可能性

HER2を標的とした抗体薬物複合体であるトラスツズマブ デルクステ...
術後ニボルマブ免疫療法は高リスク膀胱がんに長期的に有益の画像

術後ニボルマブ免疫療法は高リスク膀胱がんに長期的に有益

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ手術で切除できる膀胱がんの一部の患者において、術後すぐに免疫療法を受けることが有効な治療法であることが、大規模臨床試験の更新結果で確認された...