リキッドバイオプシーにより原発不明がん特異的遺伝子特性を同定
血液循環腫瘍DNA(ctDNA)の次世代シーケンシングにより、検出可能な変異を有する原発不明がん(CUP)患者の99.7%で、標的候補となる変異を有する特異的なゲノムプロファイルが認められたという研究報告が、米国がん学会が発行するCancer Research誌に掲載された。
「診断に難渋するこのような患者のCtDNAを簡易な血液検査で効率的に評価できることが、われわれの研究で初めて示された」とRazelle Kurzrock医師は述べた。Kurzrock医師は、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UC San Diego)医学部血液腫瘍学部門の責任者で、カリフォルニア州サンディエゴにあるUC サンディエゴのムーアがんセンター個別化治療センターのセンター長でもある。「原発不明がん患者に対する治療法決定までの障壁は多いため、われわれの研究は意義深い」。
原発不明がんは、年間10万人あたり7~12人しか発症しない、原発巣が同定不能のまれな転移性疾患である。「CUP患者の医療ニーズはほとんど満たされていない。プラチナ製剤と化学療法剤を用いた標準的な併用療法の効果はそれほど大きくなく、全生存率の中央値も約6~8カ月と低い」とShumei Kato医師は述べた。Kato医師はUCサンディエゴ・ムーアがんセンター個別化治療センター血液腫瘍学部門の実験治療学助教兼臨床腫瘍医であり、Kurzrock医師らと共にこの研究に参加した。
原発不明がん患者442人のリキッドバイオプシーから、次世代シークエンシングを用いてctDNA中の54〜70の遺伝子を調べた結果、患者の66%が1つ以上、43.9%が2つ以上の特徴的な遺伝子変異を有することを発見した。中でも多くの患者に見られた変異がTP53、KRAS、PIK3CA、BRAFおよびMYC遺伝子の変異であった。1つ以上の特徴的な変異を有することが判明したCUP患者のうち、99.7%がFDA承認薬剤の適応外使用か現在臨床試験が進行中の薬剤のいずれかにより、分子標的薬による治療が理論的に可能と考えられる遺伝子変異を有していた。
次に、2件の症例研究により研究結果の臨床的関連性を実証した。最初の症例はAvera Cancer Instituteとの共同研究によりBrian Leyland-Jones医師らによるもので、転移性原発不明がんを有する女性に対して5回のリキッドバイオプシーを実施した。検体の解析により、治療介入に反応したctDNAの流動的変化を認めた。「この症例では、治療中のがんの劇的な変化を簡単な血液検査により同定し、個別化治療が可能になることが示された」とKato氏は説明する。
もう一方の症例では、KRASおよびMLH1変異を認める肝臓および腹部リンパ節転移を有する原発不明腺がんの患者を、下流KRAS変異を標的とするMEK阻害剤トラメチニブ(Mekinist)と抗PD1チェックポイント阻害剤ニボルマブ(オプジーボ)の併用療法にマッチさせた。8週間以内に、部分奏効(腫瘍縮小率36.4%)を認め、腫瘍マーカーCA-19-9という治療効果の確認に使用する抗原が急速に低下した。
「この結果から原発不明がんや、薬理学上治療の標的となり得る変異を持つまれな体細胞特性を有する患者の大半が、ctDNAを用いた評価の対象になることがわかった」とKurzrock医師は述べ、さらに「リキッドバイオプシーは原発不明がん患者の治療効果の検討または評価に利用でき、次世代の臨床試験に組み込まれるべきである」と述べた。
本研究の限界として、原発不明がん診断の報告が紹介医師によるものであったこと、個人識別情報が利用できなかったため臨床的特徴および結果の評価ができなかったことが挙げられる。
本研究はJoan and Irwin Jacobs Fundおよび米国国立がん研究所から支援を受けた。Kurzrock医師はXbiotech社、Roche社、Actuate Therapeutics社より報酬を得ており、CureMatch Inc社の持分権を所有している。
またIncyte社、Genentech社、Pfizer社、Sequenom社、Guardant Health Inc社、Foundation Medicine、Merck Serono社から研究助成を受けた。Kato医師に利益相反はなかった。
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