減量薬とがん:現時点でわかっていること
マンジャロやウゴービといった減量薬に関するニュースから逃れるのは難しい。GLP-1受容体作動薬と呼ばれるこれらの薬は、最近になって研究室から出て、レッドカーペット、株式市場、そしてオンライン薬局と、私たちの暮らしの中に入ってきた。今や英国政府の保健計画にも組み込まれている。
これらの薬剤が健康的な体重達成に役立つという証拠は数多く存在するが、特にがんに関しては未解決の疑問も数多く残されている。本記事では、これらの薬剤がどのようなもので、がんに対してどのような影響があるのかについて解説する。
減量薬とは?
減量薬とは、体重減少をサポートすることで人々が体重を管理しやすくするために使用される医薬品である。 現在英国で最も一般的に処方されているのは、チルゼパチド(販売名:マンジャロ)とセマグルチド(販売名:ウゴービ)で、どちらも週1回の注射薬である。これらは、所定のBMI値を超える体重関連疾患を抱える人々における一般的な減量用に認可されている。
GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)は、体内で生成されるホルモンの一つで、血糖値の調節や食欲抑制を助ける。減量注射はGLP-1受容体作動薬と呼ばれ、GLP-1を模倣することで食後のインスリン分泌を促進し、満腹感をもたらす。
減量注射の台頭
減量注射について考えるとき、真っ先に思い浮かぶのはオゼンピックかもしれない。これはデンマークの製薬会社ノボノルディスク社が開発した、最初のGLP-1受容体作動薬の一つである。しかし英国では、オゼンピックは2型糖尿病患者の治療薬として限定的に使用され、一般的な減量目的では使用されていない。
ノボノルディスク社の主な狙いは糖尿病治療にあるが、同社の新薬が減量にも効果があることがすぐに明らかになり、処方箋なしで購入する人々が現れた。ソーシャルメディアも手伝ってオゼンピックの人気は急上昇した。パンデミック終息間際、有名人やインフルエンサーがGLP-1受容体作動薬を用いた減量体験をオンラインフォロワーと共有し始めると、この薬に膨大な宣伝効果をもたらした。
その後数年の間に、ウゴービとマンジャロは減量目的で英国において承認された。
われわれが調査をした結果、減量に効果がある医薬品に対する新たな需要が存在することがわかった。最近のある調査では、英国の成人約160万人が減量薬を使用したと報告しており、さらに330万人が使用に関心があると回答している。研究者らはこの数字はさらに増える可能性があるとみている。
| 英国における減量薬の入手 オゼンピック、マンジャロ、ウゴービはいずれも現在英国で入手可能であるが、糖尿病ではない人の減量目的で使用が認められているのはウゴービとマンジャロのみである。 ここで注意すべき重要な点として、これらの薬剤は医療従事者だけが処方できるもので、医療従事者は投与量を監視し、食事や活動に関するサポートを手配する継続的なケアを提供すべきである。 このような薬をNHS(英国民保険サービス)経由であれ個人入手であれ、減量目的で使用したいと考えているなら、まずかかりつけ医に相談するのがよい。医師はあなたの状況や健康状態を考慮して具体的にアドバイスをし、必要に応じて専門的な体重管理サービスを紹介してくれるでしょう。 |
減量注射は本当に減量に効果があるか?
臨床研究によると、減量注射は、身体活動の増加と健康的なバランスの取れた食事へのサポートと併用した場合には、減量に効果的な手段となり得る。
減量注射を使用するすべての人々で体重が減るわけではないが、臨床試験によれば、セマグルチド(ウゴービ)を使用する大半の人は、投与量に応じて体重の約15%の減量が見込める。一方、チルゼパチド(マンジャロ)を使用する人々は、約20%の減量が見込める。
しかし、臨床試験では、これらの薬剤の使用を中止した人の大半が、減量した体重を再び増加させることも示されている。これはGLP-1受容体作動薬の潜在的な健康効果を制限する可能性がある。また、体重の増減を繰り返す(減量とリバウンドを繰り返す)ことによる身体的・精神的健康への影響についても疑問を投げかけている。
減量注射に副作用はあるか?
すべての人が減量注射の副作用を経験するわけではないが、あらゆる薬と同様にリスクは常にある。減量注射を受ける人は、吐き気や下痢、便秘など消化器系に関連する副作用を経験することがある。また、注射によってめまい、疲労感、頭痛が生じることもある。
これらの薬剤には、膵臓の炎症(すなわち膵炎)など、頻度は低いもののより重篤な可能性のある副作用もある。使用上の説明書によると、これらの注射を打つ人のうち多くて100人に1人がこの症状を発症する可能性があると推定される。
現在、ウゴービに対しては米国で、げっ歯類で行われた初期研究に基づき、甲状腺腫瘍の潜在的リスクを指摘する正式な警告が出ている。しかし、最近の研究では48件の異なる試験データを分析した結果、甲状腺がんのリスク増加を示す証拠は認められなかった。
減量注射は体重関連のがん症例を減らせるか?
GLP-1受容体作動薬は英国で広く使用されているが、体重管理ツールとしては比較的新しいものである。つまり、その長期的な効果に関しては、答えるべき疑問点がまだ多数あるということである。
これまでのところ、これらの薬剤は多くの人々において短期的な減量に効果があることがわかっている。また、健康的な体重の人々と比較して、過体重の人々はがんを発症する可能性が高いこともわかっている。では、減量注射はがんのリスク低下に役立つのか?
答えはそれほど単純ではない。
英国では、過体重と肥満が喫煙に次いで最大のがんの原因となっている。そして、がんリスクは、肥満の程度と肥満状態の持続期間に依存することがわかっている。したがって論理的には、減量注射による体重減少ががんリスクを低下させると推測される。
しかし、ブリストル医科大学の臨床疫学教授であるRichard Martin氏は、「これらの薬ががんリスクを低下させるとは、実際には明確に証明されていない」と説明する。「多くの人がこれらの薬の使用によって体重が大幅に減少することから、そう推測されているのである」。
Martin氏の説明によれば、一般的な体重減少が、がんリスク低減の鍵であるかもしれない効率的な脂肪減少を意味するというわけではない。
「脂肪組織は特定の特性を持ち、炎症作用などの局所的な影響を及ぼす」とMartin氏は言う。「発がん性があるのはこれらの炎症作用かもしれないが、その具体的なメカニズムや、がんリスクを低減するためにそれらのメカニズムに介入する最善の方法は、まだはっきりとわかっていない。また、一般的な脂肪組織、脂肪の分布、臓器特有の脂肪とがんとの関係も、完全には解明されていない」。
キャンサーリサーチUKの資金援助により、Martin氏らのチームは現在、脂肪減少とがんリスクとの関連性の解明を目指している。彼らは、カロリー制限、胃バイパス手術、GLP-1減量注射など、さまざまな減量方法を比較し、それぞれの方法で脂肪がいかに減少し、それががんリスクにどのような影響を与えるかを検証する予定である。
「これらの薬剤が、どのようにしてがんリスクを逆転させるのか、その正確なメカニズムはわかっていない」とMartin氏は言う。「リスクを減らすために、誰かに対しておこなっていることを生物学的に理解することは重要であるが、特にがん予防に関しては、より的を絞った新しい減量ツールの開発に役立つ可能性もある」。
減量注射について、まだどんな疑問があるか?
これらの薬剤の入手可能性は、肥満対策の一環として英国政府内で重要な議論のテーマとなっている。2025年7月、Wes Streeting保健大臣はイングランドにおける減量注射への国民のアクセス拡大を約束した。英国政府は、NHS(英国民保険サービス)でこれらの薬を待たなければならない人々と、個人的に薬を入手する余裕のある人々との間の不平等の格差を縮小したいと考えている。
しかし、これらの薬剤については、いくつかの大きな根本的な疑問点があり、Martin氏は、どの疑問にまず答えるべきか優先順位付けをしている研究者の一人である。
「私にとって重要なのは持続期間である」と彼は言う。「がんリスクを低下させるために必要な肥満減少レベルを維持するには、短期間の薬剤投与で十分なのか、それとも長期的な投与が必要なのか。そしてがん予防における長期使用の、より広範な利害の影響は何か」 。
さらに、これらの減量注射を中止した多くの人は体重が元に戻ったと報告している。持続可能な減量を英国政府は重視する必要がある。
「これらの薬は減量の助けにはなるものの、万能薬ではない」と、キャンサーリサーチUK健康情報部長Jo Harbyは述べる。
「私たちの周りの世界は健康を形作るものであり、英国政府はすべての人々のためにより健康的な環境を創出するために、さらなる取り組みを行う必要がある」。
減量薬は、持続可能な効果を発揮するために単独で使用することはできない。人々がそもそも過体重や肥満になるのを防ぐことを優先する、より広範な計画の一環として使用する必要がある。この取り組みとしては、不健康な食品を注目の対象から外し、より健康的なショッピング体験を創出するための、新たなプロモーションや広告規制などがある。
減量薬業界の勢いは衰えていない。これらの薬剤の錠剤が米国ですでに承認されており、製造しやすく、服用も簡単になる。より多くの人々がこれらの薬剤を利用できるようになるにつれ、その使用で誰が最も利益を得るのか、どの程度の期間使用すべきか、そして減量を維持するためにどのような追加の医療サポートが必要かについて理解することが重要となるだろう。
がんに関しては、GLP-1受容体作動薬の潜在的な影響を真に理解するには時期尚早である。しかし、われわれが必要とする答えを見出すための研究は急速に進んでいる。
- 監修 加藤恭郎(緩和医療、消化器外科、栄養管理、医療用手袋アレルギー/天理よろづ相談所病院 緩和ケア科)
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- 原文掲載日 2026/02/05
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