1回の採血でがんを判別できる新検査技術

ASCOの見解
「がんの症状がなく、特にリスクが高い人のがんを判別できる血液検査で、正確ながんスクリーニングや早期の判別を容易にすることにより、がん診断を変えることができるでしょう。さらに研究を進める必要があるものの、今回明らかになった結果により、臨床での実用に向けて一歩前進します」と、米国臨床腫瘍学会(ASCO)専門委員であるMerry-Jennifer Markham医師(FACP:米国内科学会フェロー)は述べている。

本リリースには電子版Meeting Library(2019年10月16日時点の最新版)のアブストラクトで公表されていない最新情報が含まれる。

2種類の血液検査において、さまざまな病期のさまざまながん種の患者を判別するツールとしての将来性が示された。この2種類の手法で得られたデータは2019年10月11日から13日までバンコクで開催予定のASCOのBreakthrough meetingで発表される。

この2種類の検査の背景にあるテクノロジーや科学は複雑であるが、概念はシンプルである。血液検体を採取し、がんのスクリーニングを行い、早期にがんの検出および診断をするというものである。

いずれの検査手法もセルフリーDNAを用いてがんの分子シグナルを検出するものであるが、うち1つの手法ではそれに加えてタンパク質マーカーの結果も用いる。セルフリーDNAは、血液中を循環する分解されたDNA断片であり、その出所は、死滅してDNA断片を放出した腫瘍細胞など多様である。

血液検査により、がんの部位および病期を特定
1つめの検査では、さまざまな病期にわたる複数のがん種を特定する。この検査はDNAメチル化、すなわちDNAの配列を変えずに遺伝子機能が体に作用する方法を変えられる化学反応に基づいている。DNAメチル化は、がんの発生など、体の多くの過程において重要な役割を果たしている。この研究では、メチル化のパターン、すなわちシグネチャー(特性)を特定するために、バイサルファイトシーケンスと呼ばれる技術が用いられている。

この研究では、20種類以上の腫瘍のすべての病期を対象とした。がんの状態および原発組織、すなわち、がんの有無および部位を特定するアルゴリズムを開発するため、血漿中のDNAを用いて特定部位のメチル化解析を行った(本データは以前発表されている)。この独立的な検証分析において、本技術は、事前に規定した主要ながん12種類のすべての病期における全検出率が76%であった。さらに、この検査でがんが検出された場合、検出症例の96%でがんの原発部位を特定した。このうち93%の結果が実際の部位と一致していた。ASCOのBreakthrough meetingで発表されたデータには1,264人のデータが含まれたが、このうち654人にがんが認められた。これらの数値は、この検査技術の精度を示すとともに、偽陽性率30%低下(検証データでは偽陽性率1%から0.7%に低下)など、検査性能の改善も示している。

「偽陽性の結果に伴って不必要な診断用検査や不安が生じる可能性は最小限に抑える必要があるため、偽陽性率の低下は不可欠です」と、米国ミネソタ州ロチェスターのメイヨークリニックの腫瘍学研究部門長である腫瘍内科医のMinetta Liu医師は述べている。「今回の結果は、特定部位のメチル化解析技術が臨床で適用される可能性を裏づけています。また、この結果は、複数種のがんを早期に検出する血液検査を臨床現場に広めるという現在のわれわれの取り組みを後押しして、医師や患者ががん特有の転帰を改善できるように支援するものです」。

ASCOのBreakthrough meetingで発表されたデータには、循環セルフリーゲノムアトラス(Circulating Cell-free Genome Atlas:CCGA)研究のうち、事前に計画したサブ研究の検証分析データが含まれている。

本研究はGRAIL, Inc.社より資金提供を受けている。

全ゲノム解析を用いた血液検査により、がんを正確に特定
2つめの検査は、血液検体からがんを特定するため、セルフリーDNAを浅く読んだ全ゲノム配列解析データとタンパク質の腫瘍マーカーの結果を統合する。「浅い」ゲノム配列解析とは、1個の検体を薄く読んで配列を解析することを意味するが、一度に多くの検体を検査することができるため、従来の配列解析よりコスト効率が良い手法となっている。

多変量解析がんリスクスコア(MCRS)は、ステージIからIVまでのがんを有する患者76人および健康な人152人の対象集団をもとに開発された。このスコアは妊婦466人で検証されたが、そのうち39人が画像検査および組織学的検査によりがんと診断された。このMCRSモデルでは複数のがん種が効果的に検出され、感度71.8%、がん種特異度97.7%であった 。

本研究はSeekIn, Inc.社より資金提供を受けている。

翻訳担当者 瀧井希純

監修 花岡秀樹(遺伝子解析/イルミナ株式会社)

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原文掲載日 

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