放射線治療における嘔気・嘔吐の前向き観察試験:イタリア45カ所の放射線治療施設で集められた1,020名の患者の解析

A prospective observational trial on emesis in radiotherapy: Analysis of 1020 patients recruited in 45 Italian radiation oncology centres.
Radiother Oncol. 2009 Dec 4. [Epub ahead of print]
Maranzano E, De Angelis V, Pergolizzi S, Lupattelli M, Frata P, Spagnesi S, Frisio ML, Mandoliti G, Malinverni G, Trippa F, Fabbietti L, Parisi S, Di Palma A, De Vecchi P, De Renzis C, Giorgetti C, Bergami T, Orecchia R, Portaluri M, Signor M, Di Gennaro D; on behalf of The Italian Group for Antiemetic Research in Radiotherapy IGARR.
S.Maria病院 放射線治療センター (イタリア)

目的:放射線誘発性嘔気・嘔吐(RIE)の発症率、パターン、予後因子を評価し、放射線治療または同時化学放射線療法を受けている患者での制吐薬使用を評価するために多施設共同前向き観察試験を行った。Multinational Association of Supportive Care in Cancer(MASCC)ガイドラインの放射線診療での適用についても検討した。

対象と方法:この試験にはイタリアの45カ所の放射線治療施設が参加した。登録は連続した3週間続けられ、この期間に放射線治療もしくは同時化学放射線療法が開始された患者のみが登録された。評価は治療期間中と治療終了後1週目まで毎日患者が記載する日誌にもとづいて行った。日誌には嘔気/嘔吐の強さと予防的/対症的制吐薬の処方が記録された。

結果:試験登録患者は1,020例で、1,004例が評価可能であった。嘔吐と嘔気はそれぞれ11.0%、27.1%の症例に発生し、27.9%の症例で嘔気と嘔吐の両方が認められた。多変量解析では患者関連リスク因子で統計学的に有意であったのは同時化学療法と以前の化学療法で嘔吐した既往があることのみであった。さらにRIEのリスク因子として有意な放射線関連因子は照射部位(上腹部)と照射野の大きさ(>400cm2)の2つであった。制吐薬は放射線治療を受けている患者の少数(17%)のみで投与されていて、予防的処方が12.4%、対症的処方が4.6%であった。さまざまな化合物と幅広い用量とスケジュールが用いられていた。

結論:これらのデータは我々の以前の観察試験で登録された症例と類似しており、放射線腫瘍医がRIEを過小評価していることと制吐薬の処方が少ないことが確認された。

PMID:19963296

平 栄(放射線腫瘍科) 訳

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