海辺でがんを打ち負かす、がんリスクを減らす6つの習慣

海辺でがんを打ち負かす、がんリスクを減らす6つの習慣

「シー・キュア(海洋療法またはタラソセラピー)」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。この療法は、18世紀~19世紀にかけて、ジョージ王朝時代(1714~1837年ごろ)やヴィクトリア朝時代(1837~1901年ごろ)の医師たちにより、結核からハンセン病、がんに至るまであらゆる病気に対する治療法とされてきました。潮風を吸い込み、海水に短時間浸かることを重視するこの治療法については、ご自身の病気を治そうと英国のドーセット州ウェイマスの地を頻繁に訪れていた英国王ジョージ3世の承認を得て一気に広まりました。

海で過ごす一日が、今では“奇跡の治療法”とは言えないことは分かっています。でも、日差し対策をしっかりしてビーチで賢く過ごせば、まだまだたくさんのメリットがあります。友人や家族と充実した時間を過ごせるだけでなく、運動や新たな出会い、楽しい時間を過ごす機会にもなります。そして意外に思えるかもしれませんが、海という場所は、がんの仕組み、いかにしてがんを防ぐかについて、私たちに多くのことを教えてくれる場所でもあるのです。

これから海への旅支度をする人も、すでに海辺にいる人も、がんのリスクを減らすのに役立つ6つの健康習慣を、一緒に見ていきましょう。進めていく過程で、過去からの思いがけないヒントや、海を住処とする生き物たちが見せてくれる、ちょっとした賢い工夫にも目を向けていきます。

ご存知でしたか?

海そのものが、実際のがん治療の着想源になった例もあるのです。

一部の血液がんの治療に用いられる抗がん剤のシタラビンは、実はある海綿から発見されたものです。また、抗がん剤のトラベクテジンは、ホヤから抽出されたものです。

波の下に、pharma-sea(海洋(Sea)と製薬(Pharma)を掛け合わせた欧州のプロジェクト)が隠されていたなんて、誰が想像したでしょうか?

太陽、海、そして安全

暑くて日差しが強い日は、つい海辺へ出かけたくなるものです。しかし、太陽からの紫外線(UV)を浴びすぎると、肌へのダメージや皮膚がんの原因となります。気温が低い日や曇りの日でも同様です。英国では、3月中旬~10月中旬にかけて、特に午前11時~午後3時は、肌にダメージを与えるほどの強い日差しが降り注ぐことがあります。

朗報として、英国における悪性黒色腫(メラノーマ)の症例の最大10件中9件は、紫外線に対する適切な対策や日焼けマシンの使用を避けることで予防できるのです。だからこそ、海辺でがん予防の最も重要な対策は、肌を保護することなのです。

ヒント1:日陰を探すこと

パラソルや傘は紫外線からしっかり守ってくれる優れものです。日差しを遮り、体を涼しく保ってくれます。人々は3,000年以上も前からパラソルを日よけとして使っており、16世紀後半には、精巧な装飾が施されたファッションアイテムとしても人気を集めました。

今日では、パラソルが誰もが好んで選ぶファッションアイテムとは限りませんが、日陰を作る方法はたくさんあります。砂丘や崖といった自然の地形近くに腰を下ろしたり、木陰や屋内でひと休みすることもできます。昔を偲ぶなら、エドワード朝時代(1901~1910年ごろ)の海辺のシェルター(海辺や公園の遊歩道に設置された日除け・雨宿り用の東屋・ベンチ)にインスピレーションを得たビーチテントを持参するのも良いでしょう。ビーチテントは、鮮やかな色のキャンバス製であり、着替えや荷物置き場、そしてもちろん、少しの日陰を楽しむために使われていました。

ウニは、日陰を作りつつ体を覆って日差しから身を守る生き物の好例です。彼らは管足や棘を使って、貝殻・海藻・小石などの海の漂流物を体の上に載せます。これが “カバーリング(covering)” と呼ばれる行動です。研究によると、岩による日陰が少ないほど、日焼け防止効果を最大化するため、この行動をより頻繁に行うことが分かっています。

ヒント2:肌を覆うこと

モクズショイなど(飾りつけるカニ)は、ウニよりさらに一歩進んだ“身づくろい術”を披露していて、しかもとびきりスタイリッシュです。モクズショイは海綿や海藻などを甲羅に付着させ、日光に対する自然なバリアを作ります。捕食者を寄せ付けないために、有毒なイソギンチャクを甲羅に付着させることさえあるほどです。まさに“殺し文句級”のファッションです。

ビーチファッションに貝殻を貼り付ける必要はありませんが、肩を覆う服につばの広い帽子やUVカットのサングラスを組み合わせるだけで、簡単に肌を保護できます。

ヴィクトリア朝の人々を少し見習ってみるのもいいかもしれません。彼らは長袖でハイネックの水着に、膝丈のショートパンツを合わせることが多く、実用的な日差し対策としてとても優れていました。もちろん、昔のビーチウェアに戻るべきだと言いたいわけではありませんが、ここには学べることが確かにあります。

肌を覆う面積が広いほど、日焼け防止効果は高まります。特に、水は紫外線を反射するため、上からの光だけでなく下からも紫外線が肌に届くことを考慮し、リゾートウェアや古いTシャツなどを水中で羽織って、肌を休ませましょう。

ヒント3:日焼け止めをこまめに塗ること

日陰を探したり肌を覆うことと併せ、日焼け止めを使用することも肌の保護に役立ちます。日焼け止めだけでは100%の保護は得られないため、これら3つの対策を組み合わせて行うことが非常に重要です。

日焼け止めは、SPF30以上で星4つまたは5つの評価が付いたものを選び、例え「1日1回でOK」と謳っている製品であっても1日を通してこまめに塗り直しましょう。

海洋生物の中には、なんと自分自身の体内で日焼け止めを作り出すことができるものがいます。淡水魚であるゼブラフィッシュは、紫外線を吸収する「ガドゥソル」と呼ばれる物質を生成します。これは母体内で生成され、発育中の卵に付着することで、卵は波の下での生命の始まりからしっかり紫外線から守られるのです。彼らは生まれた時からすでに日焼け止めを塗ってもらえるのです。私たち人間は、水に浸かるたびに日焼け止めを塗り直さなければなりません。

過去14年間、キャンサーリサーチUKはNIVEA SUNと提携し、日陰を探す、肌を覆う、日焼け止めをこまめに塗る、という3つの簡単なステップを組み合わせることで、安全に太陽を楽しめることを人々に呼びかけてきました。
(※サイト注:本記事は、英国人を対象に書かれています。肌の色の濃い人種ほど日光を多く浴びる必要があります)

ヒント4:自分の肌を知ること

日焼けは皮膚がんのリスクを高めることがあります。誰でも日焼けをする可能性はありますが、特にリスクが高い人もいます。例えば、肌の色が薄い人、髪や目の色が明るい人、ほくろやそばかすが多い人などです。また、日焼けは肌の色によって見え方が異なることを覚えておきましょう。

そして、日焼けするのは人間だけではありません。最近の研究によると、肌の色が薄いシロナガスクジラは、肌の色が濃い他の種類のクジラに比べて、太陽光によるダメージをより受けやすいことが分かっています。

自分の肌が日差しにどう反応するかを一番よく知っているのは、自分自身です。だからこそ、外に出る前には必ずUVインデックス(太陽光の強さを示す指標)を確認しましょう。数値が3以上なら、肌を守る対策を考えるタイミングです。

英国では、太陽が空の高い位置にある午前11時から午後3時頃が、日差しが最も強くなる時間帯です。そこで、“逆ビーチデー”(日中の強い日差しを避け、夕方近くにビーチへ行く過ごし方)を試してみるのもいいかもしれません。午後遅くに海辺へ向かえば、混雑も紫外線のピークも避けられます。それに、地元の生き物たちとも気が合うはず。多くの海の生き物は、日差しが最も強い時間帯には身を隠したり動きを控えたりする、いわば“逆ビーチデー”のような過ごし方をすでにしているのです。

ウニはスタイリッシュな日焼け対策の先駆けとなっただけでなく、がんの理解において、私たちの研究者たちに重大な突破口を開くうえでも大きな役割を果たしてくれました。

1980年代、科学者のTim Hunt卿は、ウニの卵の中で、細胞の成長や分裂に伴い増減するタンパク質を発見しました。彼はこれを「サイクリン」と名付けました。そして彼のチームが研究を重ねるうちに、このタンパク質ががん細胞を含むあらゆる細胞の複製メカニズムにおいて極めて重要な役割を果たしていることに気づきました。この研究により、同チームは2001年のノーベル生理学・医学賞を受賞したのです。

クジラは日焼け止めを使いませんが、身を守るための工夫をしています。

ホッキョククジラは200年以上生き、その細胞数は人間の約1,000倍にもなります。それだけの細胞数があれば、細胞に異常が生じてがんを引き起こす可能性も高くなるはずですが、実際にはそうはなりません。ホッキョククジラががんにかかることは極めて稀なのです。

Alex Cagan氏のような科学者たちは、これらの大動物を守る進化の仕組みを解明しようと取り組んでおり、その成果が人間をがんから守る新たな方法につながる可能性があります。

ヒント5:ピクニックには健康的でバランスのとれた食事を持っていくこと

海や砂浜で過ごし、太陽の下で活動すれば、食欲もわいてきます。健康的でバランスの取れた食事は、適正体重の維持に役立ちますし、バランスのとれた食事により13種類のがんのリスクが低減します。

楽しいピクニックの秘訣は、なんといっても事前の準備です。新鮮な果物や野菜など、栄養があり水分補給にもなる食べ物を詰めていきましょう。また、がんのリスク増加と関連する加工赤肉を、全粒粉パンのチキンサンドイッチや豆たっぷりのサラダなど、より健康的なタンパク質源に置き換えるといった工夫もできます。満腹感が長続きして、海水浴や砂浜で戯れたり、浜辺の散歩などのエネルギー源になるような食べ物を選ぶことが大切です。

ただし、あまりあれこれと持っていくことはやめましょう。そうでないと、道具を使う数少ない動物であるラッコの真似をする羽目になってしまいます。ラッコは自分のお腹でお気に入りの貝を開ける見事なテクニックを持っていますが、人間が岩をお皿やカトラリー代わりに使い始めたら、周囲から奇妙な目で見られることになってしまいます。

ヒント6:体を動かすこと

1900年代に入ると、海水浴はレジャーとして楽しまれるようになり、人気がさらに高まりました。ただし、その光景は今とはずいぶん異なっていました。当時は、まだ海洋療法用に使われていたバシング・マシン(海水浴用機械・脱衣車)を利用する人が多かったのです。バシング・マシンは、車輪付きの小さな木造の小屋で、海の中まで引き込んで、人目を避けて水に浸かることができました。

今日では、このバシング・マシンには見落とされていた大事なポイントがあったことが分かっています。身体活動を行うことは、適正体重の維持やがんのリスク低減など、確かな健康効果をもたらします。海水浴は体に負担の少ない素晴らしい運動です。海水浴といっても、シャチのように1日に100マイル(約161キロメートル)も泳ぐ必要はありません。体が少し温まり、軽く息が上がり、心拍数が少し速くなる程度の運動で十分です。ただし、海から上がった後は、必ず日焼け止めを塗り直しましょう。

日差しが弱まった時間帯に海辺を散歩することは、体に負担を掛けない最良の運動です。ある研究によると、砂の上での運動は固い地面での運動よりも多くのエネルギーを使い、関節への負担を軽減することが示されています。ウニやカニを探しに行き、彼らから日差し対策や“おしゃれのヒント”をもらったり、フリスビーやサッカーボールを持参し、砂浜でひと遊びするのもいいですね。

海水浴は、友人や家族と楽しい時間を過ごす最高のレジャーです。また、ちょっとした気配りを加えるだけで、健康維持にもつながります。日陰を探す、肌を覆う、日焼け止めを塗る、体を動かす、栄養価の高い食べ物を持っていく――こうした工夫をするだけで、海辺の魅力を満喫しながら、がんリスクを低減することができるのです。

次に海を訪れた際は、長袖を着ていた先人たちや、私たちに多くのことを教えてくれる海洋生物たちに敬意を表し、そっと日よけ帽に手を添えてみてください。そして、水着やリゾートウェア姿の人たちだけでなく、次の大発見を求めて白衣のまま海辺を歩き回る科学者たちにも、ぜひ目を向けてみてください。

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