複数のがんを経験する患者の12人に1人は、がんリスク遺伝子に変異がある
新しい研究によると、2種類以上の異なるがんと診断された患者のおよそ 12人に1人は、既知のがんリスク遺伝子に先天的な変異を持っていることが明らかになった。この発見によって、がん患者に対する遺伝子検査の提供方法が見直される可能性がある。
今回の研究はデューク大学の研究者によって行われ、Journal of the American Medical Association (JAMA) Oncology誌に掲載された。
複数のがんを発症した人に、遺伝性のがんリスク遺伝子の定期的な検査は行われていない。しかしこのグループの患者は遺伝性のがんリスク遺伝子が多いため、著者らは、こうした患者に対してより広く遺伝学的スクリーニングを実施すべきであると提言する。こうした取り組みは、治療方針の決定に役立ち、新たながんの検診の指針となり、家族が潜在的な遺伝リスクを知る手がかりにもなるとしている。
「最初のがんを克服する患者さんが増えてきた結果、さらに別のがんを発症するリスクを高める遺伝性の遺伝子変異を持っている人が多くいることが分かってきました」と、本研究の上席著者でありデューク大学医学部医学科長、ジョージ・バース・ゲラー名誉教授称号を有するKathleen Cooney医師は述べる。
「このことが分かれば、より早期の検診、より個別化された治療、そして遺伝子検査を通じて家族を守るチャンスが広がります」と同氏は述べた。
研究チームは、数十万人規模の参加者の遺伝情報と健康データを集めた 英国バイオバンクのデータを用い、11種類の主要ながんに関して既知のがん素因遺伝子(計96種類)を解析した。この中には、がんとの関連でよく知られるBRCA1およびBRCA2も含まれていた。
解析の結果、複数のがんを経験した人の8.36%が、これらの遺伝子のいずれかにまれな病原性変異を持っていたことが判明した。特に注目すべき点として、BRCA2がこれまであまり関連が指摘されてこなかった膀胱がんや肺がんとも関連していることが確認された。
今回の研究は、がん家族歴のある人や専門クリニックに紹介された患者だけでなく、一般集団を対象とした大規模解析であるため、遺伝性のがんリスクが実際にどの程度存在するのかをより正確に示している。
「今回の研究では、患者さんに発症リスクがある可能性のある新たながん種を特定しました。これは、これまでの家族単位の研究では見られなかった結果です」と研究の第一著者であり、デューク大学医学部内科学講座助教のJeffrey Shevach医師は言う。
「遺伝子とがんの新しい関連が明らかになることで、遺伝性のがんリスクに関する理解が広がり、それを反映した検診ガイドラインの改訂につながるかもしれません」とShevach氏は述べた。
本研究の著者は他に、Cooney、Shevachの他、Jianfeng Xu、Nathan Snyder、Jun Wei、Zhuqing Shi、Huy Tran、Lilly Zheng、Jennifer L. Beebe-Dimmerなど。
この研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の助成(PO1 CA272239)を受けて実施された。
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