一般的なCTスキャンが年間がん発症数の5%の原因となる可能性(米国)

一般的なCTスキャンが年間がん発症数の5%の原因となる可能性(米国)

画像診断に用いる放射線が肺がん、乳がんなど、将来のがんにつながる可能性乳児ではそのリスクは10倍。

コンピュータ断層撮影(CT)スキャンは、年間がん発症総数の5%の原因となる可能性がある。カリフォルニア大学サンフランシスコ校の新研究は、CTの過剰実施に注意を促している。

がんリスクは乳幼児で最も高く、次いで小児、思春期の若者の順である。しかし、スキャンを受ける機会が最も多い成人もリスクが高い。2023年だけで9,300万件のCT(CATとも呼ばれる)スキャンが実施された結果として、がんが103,000例近く発生すると予測されている。これは以前の評価の3〜4倍である、と著者らは述べている。

米国国立衛生研究所(NIH)から資金提供を受けた本研究は、4月14日付のJAMA Internal Medicine誌に掲載されている。

「CTは命を救うことができますが、その潜在的有害性は見過ごされがちです」と筆頭著者のRebecca Smith-Bindman医師(UCSF放射線科医、疫学・生物統計学および産婦人科・生殖科学教授)は話す。

「米国ではCT検査の実施が非常に多いことを考えると、現在のやり方が変わらなければ、将来多くのがんが発生する可能性があります」と、フィリップ・R・リー医療政策研究所のメンバーでもあり、放射線医学アウトカム研究ラボの責任者でもあるSmith-Bindman医師は言う。

「われわれの推定では、CTは、アルコール摂取や体重過多など、他の重大な危険因子と同等です。スキャンの回数を減らし、1回あたりの線量を減らせば、多くの命を救うことができるでしょう」。

利点と潜在的危険性

CTは腫瘍の発見や多くの病気の診断に不可欠であり、広く使われている。2007年以降、米国では年間CT検査件数が30%急増している。

しかし、CTは患者を電離放射線(発がん性物質として知られている)にさらすものであり、このCTスキャンががんリスクを高めることは以前から知られていた。

現在のCT使用が公衆衛生に与える影響を評価するため、本研究では、2023年に実施されたCT検査の回数と種類に関連して、放射線被曝に関連する生涯がんの総数を推定している。

「われわれのアプローチは、CT線量と利用について先行研究よりも正確で個別化されたデータを使用したため、放射線誘発がんの数をより正確に推定することができました」と、共著者でUC Davisの乳がん研究者・生物統計学部長であるDiana Miglioretti博士は述べた。「これらの最新推定値は、過剰リスク、特に幼児における過剰リスクが、以前の認識よりも高いことを示唆しています」。

研究者らは、米国の6,150万人の患者が受けた9,300万件の検査を解析した。スキャン検査件数は年齢とともに増加し、60歳から69歳の成人でピークに達した。小児が占める割合は4.2%であった。研究者らは、患者の人生最後の1年間の検査はがんにつながる可能性が低いとして除外した。

放射線被曝による将来のがん

がん予測件数は、50歳から59歳の成人で最も高く、女性で10,400件、男性で9,300件であった。成人のがんで最も多かったのは、肺がん、結腸がん、白血病、膀胱がん、乳がんであった。小児で最も多く予測されたがんは甲状腺がん、肺がん、乳がんであった。

成人では腹部と骨盤のCTによるがんが最も多く予測されたのに対して、小児では頭部のCTによるがんが最も多かった。予測されるがんリスクは、1歳未満でCTを受けた患者で最も高かった。1歳未満でCTを受けた人は、それ以外の人々と比べて10倍がんになりやすいと推測された。

研究者らは、上気道感染症に対するCT検査や、心配な徴候や症状のない頭痛に対するCT検査など、一部のCT検査は、患者の助けになる可能性が低く、過剰使用であると述べた。これらのCT検査を受ける回数を減らすか、低線量のCT検査を受けることによって、患者のリスクを下げることができるという。

「現在、CTに使われる線量には許容しがたいばらつきがあり、過剰な線量を受ける患者もいます」とSmith-Bindman医師は言う。

共著者であるMalini Mahendra医師(UCSF小児クリティカルケア助教授)は、小児スキャンによる発がんリスクを家族が理解することが重要であると述べた。

「CT検査に伴うリスクについてカウンセリングを受けている患者やその家族はほとんどいません。私たちの研究結果がこれらのがんリスクの数値化や伝達に役立ち、臨床医たちがCT検査の利益とリスクを比較検討する際に、より多くの情報に基づいた話し合いができるようになることを願っています」。

原文には、グラフ「生涯がん発生総数の予測(男女別・被爆時年齢別」、「小児期の撮影部位別のCT誘発がん数の予測(男女別」、「成人期の撮影部位別のCT誘発がん数の予測(男女別)」があります。]


(※サイト注)
「2023年における世界主要国のCT保有台数国際比較統計によると、日本は第1位で、その数は1万4595台です。2位は米国で1万4150台となっています。僅差のように見えますが、人口100万人当たりの台数では日本が世界で突出して1位となっており、OECD加盟国平均の4倍以上です。この傾向は既に十数年以上前からみられており、CTを保有している診療所も多く、国内におけるCT保有施設の4割以上が診療所でした。(出典:日本医事新報社)」

  • 監修 石井一夫(計算機統計学/公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科)
  • 記事担当者 山田登志子
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  • 原文掲載日 2025/04/14

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