9癌種の細胞株から遺伝子変異の包括的リストを作成

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日 :2013年7月15日

NCIの研究者らは、NCI-60として知られている細胞株コレクションを構成する各種細胞ごとに、遺伝子変異の包括的リストを明らかにした。この新たなリストにより、癌研究、分子薬理学さらに創薬において最も頻繁に研究されているヒト腫瘍細胞株データがさらに厚みを増す。NCI-60癌細胞パネルは、異なる9種類の癌(乳癌、卵巣癌、前立腺癌、大腸癌、肺癌、腎臓癌、脳腫瘍、白血病、黒色腫)からなる。この研究において研究者らはNCI-60の各細胞株について、全エクソーム、すなわちDNAのコーディング領域の塩基配列を決定した。新たな癌変異や腫瘍細胞での異常な遺伝子発現パターンを明らかにし、これらの発現パターンや変異と癌が発生する過程で起こる事象との関連性を示すのが狙いだ。彼らはさらに、TP53BRAFおよびATAD5などの遺伝子の特定の変異と、ニュートリン(nutlin)、ベムラフェニブ(vemurafenib)、エルロチニブおよびブレオマイシンなどの抗癌剤活性との相関関係も見出した。

塩基配列を決定する大規模な研究を通じて新たな癌遺伝子が同定されるにつれ、このNCI-60の塩基配列データの結果が貴重な情報源となるとみられる。特定の遺伝子に変異を有する細胞株とそれらの遺伝子欠損を標的とする薬剤との60億を超える関連性を正確に示すためである。この新たなデータは、現在NCI-60に含まれており、CellMinerやIngenuityのウェブサイトなど多数の情報源を通じて、様々なフォーマットで自由に利用することができる。この研究結果は、がん研究センター(Center for Cancer Research)の遺伝学部門(Genetics Branch)長Paul S. Meltzer医学博士、および分子薬理学研究室(Laboratory of Molecular Pharmacology)長Yves Pommier医学博士、癌治療・診断部門ディレクターJames H. Doroshow医師の主導で行われ、2013年7月15日付Cancer Research誌電子版に掲載された。

原文
 

翻訳担当者 田村克代 

監修 北丸綾子(分子生物学/理学博士)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

がん研究に関連する記事

プロトコル例外適用で標的治療試験に参加した患者の転帰は適格参加者と同様の画像

プロトコル例外適用で標的治療試験に参加した患者の転帰は適格参加者と同様

臨床試験の適格基準拡大がもたらす利点に注目した研究 大規模ながんバスケット試験/アンブレラ試験において、適格基準(参加要件)免除および検査免除により試験に参加した、治療抵抗性を...
臨床試験における全生存期間(OS)解析の考察:米国AACR、ASA、FDAによる概説の画像

臨床試験における全生存期間(OS)解析の考察:米国AACR、ASA、FDAによる概説

ベネフィット・リスク評価改善のためのベストプラクティス、新たな統計的手法、提言をClinical Cancer Research誌に掲載米国癌学会(AACR)の学術誌Clini...
遺伝的要因から高齢女性のX染色体喪失パターンを予測できる可能性の画像

遺伝的要因から高齢女性のX染色体喪失パターンを予測できる可能性

概要研究者らは、女性の2本のX染色体のうち1本が加齢とともに失われること( X染色体のモザイク欠損(mLOX))を予測する遺伝的変異を同定した。これらの遺伝子変異は、異常な血液...
がん性T細胞から得た戦略でCAR-T細胞療法が強化される可能性の画像

がん性T細胞から得た戦略でCAR-T細胞療法が強化される可能性

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ白血病やリンパ腫のような血液腫瘍患者の一部では、CAR-T細胞療法が画期的な治療法であることが証明されてきた。しかし、がん患者の約90%を占...