腫瘍内科の診療に一次緩和ケアの提供を推奨

ASCOの見解

「職能団体間の協力は、すべての患者にとって利用しやすく質の高い緩和ケアへの重要な一歩となります」と米国臨床腫瘍学会(ASCO)の専門医で、本日のpresscast(インターネットでのライブ配信による記者会見)の司会でもあるDon S. Dizon医師は述べた。「その推奨は米国中で必要不可欠な緩和ケアを認識し、腫瘍内科の医業に対して達成可能な目標を設定する一助となります」。

ASCOおよび米国ホスピス緩和医療学会による新たな指針の提言が、ボストンの2015年度臨床腫瘍緩和ケアシンポジウムで初めて発表される予定である。

緩和ケアは、患者および介護者の双方に恩恵があることが証明されている。しかし、進行性がん患者全員が緩和ケア専門医の診療を受ける機会を得られるわけではない。もしすべての腫瘍内科診療で質の高い一次緩和ケアを提供できれば、少なくとも基礎的な緩和ケアサービスへの均一なアクセスが改善する。本提言は、腫瘍学における質の高い一次緩和ケアを構成する、緩和ケアの種類に関して、正式な合意に基づいた初めての推奨を提供する。

「がん専門医は、すでに多くの緩和サービスを提供できていますが、これまでそれが何を目指すべきか明記された総合的なガイダンスは存在しませんでした」と本研究の主著者で、ニューハンプシャー州ハノーバー市ダートマスにあるWhite River Junction Veterans Affairs Medical CenterおよびGeisel School of Medicineの内科学助教であるKathleen Bickel医師、哲学修士は述べた。「患者への日々のケアのなかで、腫瘍診療において質の高い一次緩和ケアを提供するため、われわれは合理的かつ達成可能な目標を初めて設定しました。このことによって患者の苦痛が和らぎ生活の質が向上することを願っています」。

日常の腫瘍治療と統合される緩和ケアは、症状の負担を軽減させ、生活の質を改善させるとともに患者や介護者の満足度を向上させることができる。ASCOは、転移性がん患者や症状の負担が大きい患者に対しても、疾患の経過の初期にがん治療と同時に緩和ケアを行うことを推奨している。

しかし、先行研究は、緩和ケア専門医の就労人口が少なく、がん患者のニーズに応えるには不十分であることを示唆している。それゆえ、がんおよび緩和ケアコミュニティからの専門家が、代替的な緩和ケア提供のアプローチを模索してきた。

指針の提言を進展させるため、集学的な専門委員会が、重要性、実現可能性、そのサービスが腫瘍内科診療の範囲内かどうかに準じて、さまざまな緩和ケアサービス966項目をランク付けした。全3領域(重要性、実現可能性、範囲)で上位にランク付けされたサービスは、腫瘍学における質の高い一次緩和ケアとして委員会の決定に含まれた。委員会には、医師、患者アドボケート、社会福祉士、看護師、診療看護師等が参加している。

今回の決定に含まれた緩和ケア体制の主たる範囲は、症状の評価および管理、コミュニケーションおよび意思決定の共有、ならびに事前ケア計画に関するものである。サービス項目の具体例としては、二次治療に対する抵抗性として発現する悪心および嘔吐を管理すること、予後に対する患者および家族の理解を確認すること、および不治のがんと診断された時にホスピスの紹介の必要性を評価することなどがある。

本体制で提供される項目のリストは、どのケアをすでに提供しているか確認し、すべての適格患者に対してそのサービスを一貫して行うかどうかを決定するために、医業における一次緩和ケア提供の向上に関心を促す一助となる。

Bickel医師は、腫瘍学診療において推奨されるケアが実行されるには時間がかかると強調した。Bickel医師は、改善目標のために優先事項を明確にし、有効な質の測定法および基準を作り、がん治療において緩和ケア提供を標準化し、患者および家族の緩和ケアへのニーズをさらによく確認するため、さらなる努力が必要であると述べた。

アブストラクトの全文はこちらを参照のこと。

読者のために:

  • 緩和ケア
  • がん治療チーム
  • ASCOはがん治療の一環として緩和ケアを推奨
  • 患者および友人との対話
  • 双方向的ながん研究進歩の歴史

2015年度臨床腫瘍緩和ケアシンポジウムのニュース企画チーム

Don S. Dizon医師(米国臨床腫瘍学会[ASCO])、Joseph Rotella医師、MBA、HMDC、FAAHPM(米国ホスピス・緩和医療学会[AAHPM])、Joshua Jones医師、MA(米国放射線腫瘍学会[ASTRO])、Dorothy Keefe医師、MBBS、FRACP、FRCP(国際がんサポーティブ学会[MASCC])

ニュース企画チームについてはこちらで公開されている。

翻訳担当者 太田奈津美

監修 吉松由貴(呼吸器内科/淀川キリスト教病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

がん緩和ケアに関連する記事

慢性疼痛を持続的に軽減するスクランブラー療法の画像

慢性疼痛を持続的に軽減するスクランブラー療法

ジョンズホプキンス大学ジョンズホプキンス大学の疼痛専門家2名が共著した新たなレビュー論文で、非侵襲的疼痛治療法であるスクランブラー療法が、慢性疼痛のある患者の約80%から90%で有意に...
がん性疼痛へのオピオイド利用に人種格差の画像

がん性疼痛へのオピオイド利用に人種格差

終末期が近い黒人およびヒスパニック系がん患者は、痛みをコントロールするために必要なオピオイド薬を入手する確率が白人患者よりも低いことが、新しい研究結果で明らかになった。

2007年から2019年...
ステロイドはがん患者の呼吸困難の緩和に最適か?の画像

ステロイドはがん患者の呼吸困難の緩和に最適か?

進行がん患者には、生活の質を損なうさまざまな症状が現れる。呼吸困難といわれる呼吸の障害に対しては、症状を緩和するため副腎皮質ステロイドという薬剤がしばしば処方される。 しかし、進行がんにより引き起こされる呼吸困難を対象としたステロイドの臨床
デキサメタゾンはがん患者の呼吸困難緩和に投与すべきではない【MDA研究ハイライト】の画像

デキサメタゾンはがん患者の呼吸困難緩和に投与すべきではない【MDA研究ハイライト】

デキサメタゾンはがん患者の呼吸困難緩和のためには投与すべきではないとの試験結果 がん患者の呼吸困難や息切れを緩和するための全身性コルチコステロイド使用を支持するエビデンスは今のところほとんどない。David Hui医師が率いる研究チームは、