癌の治療計画を立てることで不安が軽減する可能性

キャンサーコンサルタンツ

進行性の癌患者において、将来の治療について計画を立てることは精神的な苦痛を与えず、むしろ不安を軽減する可能性があるという研究結果が、Journal of Pain and Symptom Management誌に掲載された。

アドバンス・ケア・プランニングとは、どのように意思決定をしていくか、誰が責任をとるかなど、将来の治療についてあらかじめ計画を立てることである。これまで、アドバンス・ケア・プランニングについて患者と話し合うことで患者が希望を失ったり、将来の体調に対する不安を感じたりすることを恐れ、このような話し合いを避ける医師もいるのではないかと考えられてきた。

このほど、癌患者におけるアドバンス・ケア・プランニングは、希望(または絶望感)や不安感に悪影響がないかどうか、特にオンラインツールを使用してケア・プランニングを実施した場合について評価が行われた。

研究の参加者は、「あなたの願いを知らせること(Making Your Wishes Known)」(makingyourwishesknown.com)というオンラインツールを使用してアドバンス・ケア・プランニングを実施する群と、実施しない群の2群に分けられた。参加者200人は進行癌の治療中であり、余命2年以下と推定されていた。すべての患者について、希望、絶望および不安のレベルについて評価した。これらのレベルを、アドバンス・ケア・プランニング実施群においてプランニング実施前後で比較し、また、ケア・プランニング実施群と非実施群の間でも比較した。また、本研究では、アドバンス・ケア・プランニングに関する知識、患者の自己決定能力(患者自身の人生のコントロール能力)およびアドバンス・ケア・プランニングの手順への満足度も評価した。

アドバンス・ケア・プランニング実施群は非実施群に比べて、より悲観的であったり、絶望感が強かったりすることはないようであった。さらに、プランニング実施群ではプランニング実施後、わずかに不安が軽減したようであった。プランニング実施群も非実施群もその手順は理解したが(アドバンス・ケア・プランニングに関して正確に回答した質問事項のパーセンテージで評価)、プランニング実施群は非実施群に比べて、アドバンス・ケア・プランニングについてより深く学習し、その手順により満足していた。すべての患者は高い自己決定能力を示した。

これらの結果から、進行癌患者は感情面や精神面を害することなく、オンラインツールを使用してアドバンス・ケア・プランニングを行うことができることが示された。オンラインでのプランニングの過程で希望を喪失したり、絶望感が増したりすることはなく、むしろ、不安が軽減する傾向がみられた。

参考文献:

Green MJ, Schubart JR, Whitehead MM, et al. Advance Care Planning Does Not Adversely Affect Hope or Anxiety Among Patients with Advanced Cancer. Journal of Pain and Symptom Management. 2014 Dec 23. pii: S0885-3924(14)00939-7. doi: 10.1016/j.jpainsymman.2014.11.293.


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翻訳担当者 後藤由紀子

監修 吉松由貴(呼吸器内科/淀川キリスト教病院)

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