より安価な後発薬で、治療の質をおとさずにがん診療費の削減が可能

ASCOの見解

「より安価な後発薬を使用した治療の場合でも、患者さんは治療の質を断念せずに自己負担額や支払額が削減できるという恩恵を受けられることが研究で示されました。これは、患者さんにとって受ける治療の質が変わらないだけでなく、同質の治療がより安価に受けられる、言わばwin-winの状況です」と米国臨床腫瘍学会(ASCO)最高医学責任者兼副会長であるJulie R. Gralow医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:米国臨床腫瘍学会フェロー)は語る。

費用のかかる既存薬剤からバイオ後続品やジェネリック医薬品、臨床的に適切で安価な薬剤に置き換えることは、がん患者の治療の質を維持しながら、総治療費を5%程度削減する方法として効果的であることを示した。わずかでも安価な薬剤に切り替えた場合、総治療費が大幅に削減する結果に至ることが2022年ASCO Quality Care Symposium(良質医療シンポジウム)の一環として発表される研究で明らかになった。

【試験要旨】

目的:  治療の質を維持すると同時に、がんの総治療費を削減する。

対象者: 米国公的保険メディケアのがん患者

結果: バイオ後続品、ジェネリック医薬品、臨床的に適切で安価な薬剤に置き換えることにより、

    がん患者の治療の質を維持すると同時に総治療費が約5%削減した。

結論: がん治療費は、医療の質を維持したまま削減することが可能である。

「われわれの研究は、がん治療の質を向上させながら、より賢明なお金の使い方ができることを示しています。しかし、さまざまな保険会社の望ましいオプション、ならびに契約している保険プランがさまざまな患者にそれぞれ異なるバイオ後続品等医薬品を使用する必要のある場合に生じる保管、事前承認、および請求の特殊性の間でバランスを取ることは、医療従事者や薬剤師にとって至難の業です。一方、われわれは、この研究が取捨選択に役立ち、その結果すべての人が治療費を削減することができるように願っているという複雑な状況があります」と共著者のテキサス州ザ・ウッドランズの米国腫瘍学ネットワーク(The U.S. Oncology Network)の臨床データ上級アナリスト(Senior Clinical Data Analyst)でBCPSのErica Feinberg薬学博士は語る。

試験について

よりよい腫瘍治療を推奨するため腫瘍治療モデル(Oncology Care Model)と呼ばれるアフォーダブルケア法の構想が2016年にメディケア&メディケイドサービスセンター(CMS:Centers for Medicare & Medicaid Services)により策定された1。腫瘍治療モデルは、がん治療中の人たちが24時間体制で医師にアクセスできるようにし、治療の量よりも治療価値に報酬が支払われることを目的とした協調的な個別化医療を重視した。参加した診療施設は、メディケア受給者ごとに毎月の治療管理料の支払いを受けて、がん治療の提供方法の変革を支援した。

腫瘍治療モデルに参加した患者を6カ月ごとに評価した。ある薬剤の選択が他の薬剤の選択よりも臨床的に適切かどうかは、当該患者にその治療の忍容性があるか、またその薬剤が他の治療と相互作用する可能性があるかという医療従事者の医学的判断に基づいている。費用曲線を下げるためにより安価な代替治療の使用を提案した。より安価な薬剤または支持療法が、腫瘍治療モデルの実施中またはその直前に8種類利用可能となった。

OCMに参加している米国オンコロジーネットワークの診療施設14カ所のメディケアパートB(主に医師の医療業務)とD(薬剤費)の請求書を用いて、5年に及ぶOCMプログラムの最後の18カ月間に8種類の治療に置き換えた影響を評価した。臨床的に適切な場合、治療を対照薬剤からバイオ後続品(ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、ペグフィルグラスチム、フィルグラスチム)、商標登録医薬品からジェネリック医薬品(アビラテロン、イマチニブ、ホサプレピタント)、高額薬剤から低額薬剤(アプレピタントからホサプレピタント、デノスマブからゾレドロン酸)に変更する置き換えが実施された。

主な知見

累積削減額は、2019年7月から2020年12月までの連続した6カ月間隔ごとに2600万ドル、3230万ドル、3290万ドルであった。バイオ後続品への切り替えは、2020年の前半6カ月で660万ドル、後半6カ月で1220万ドルの節約に貢献した。全体として、代替治療に切り替えることにより2019年7月から2020年12月まで実施した腫瘍治療モデルの腫瘍薬剤治療費の総額は6カ月間隔ごとに2.78%、4.13%、5.25%連続して削減された。研究者らは、互換性のある2つの製品間に価格差が存在する限り、この利点が継続する余地があると指摘している。

次のステップ

研究者らは、腫瘍治療モデルにおいてバイオ後続品やジェネリック医薬品に切り替える利点を引き続き調査している。CMSは最近、5年におよぶ新たな試験的プログラム「The Enhancing Oncology Model」を発表し、研究者らはいずれこのプログラムを研究することを希望している。また、他の薬剤クラス(治療薬と支持療法の両方)での類似した切換えの機会があった場合、その有益性が最大限に得られるよう、研究者らはジェネリック医薬品とバイオ後続品の開発を継続的に追跡している。

資金 この研究は外部からの資金援助を受けていない。

監訳:斎藤 千恵子(薬学・毒性学/ロズウェルパ―クがん研究所 病理学部)

翻訳担当者 松長 愛美

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原文掲載日 

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