コロナ世界的大流行における臨床試験−米国国立がん研究所(NCI)声明

がん患者は、がんに罹患しているため、また、がん治療が免疫システムを弱めることがあるため、COVID-19(コロナウイルス感染症)などの感染症への感染および重症化リスクが高くなる。世界で猛威を振るっているコロナウイルスが今後与える影響、またはがん患者、家族、および介護者へどの程度の負担がかかるのかは現時点では未知数である。

米国疾病管理予防センター(CDC)および公衆衛生の専門家は、各々が自分自身を守る方法について信頼できるアドバイスを提供している。がん患者は、個別のケアについて、および、コロナウイルス検査を受けるべきかどうかについて、担当医など医療関係者および医療機関に助言を求める必要がある。

患者の状況を個別に評価し、最も安全な行動方針について助言するのに最も適しているのは、患者の医療チームである。がん患者の治療を行う現場の医師から、がん患者管理に関する情報がより多く寄せられるようになると、その情報はがんコミュニティで広く共有されるようになる。例えば、アメリカのシアトルにあるシアトル・キャンサーケア・アライアンス、フレッドハッチンソンがん研究センター、ワシントン大学の研究者達は、コロナウイルス世界大流行におけるがん患者管理に関する情報を公開しており、NCIは世界中のがん医療関係者の臨床経験を注意深く見守っている。

がんの治療を受けている患者には、幅広い分野で緊急な対応が求められる。患者の状況によっては、がん治療をすぐに受けることが不可欠である。一方、現在治療を受けていない患者などの場合など、経過観察のための通院は安全性を保ちながら延期をすることも考慮される。がん患者は医療チームと各々の治療計画について話し合う必要がある。

コロナウイルス世界的大流行における厳しい状況においては、医療を提供するための資源が制限され、臨床試験の運営に影響を与える可能性もある。しかし、がん患者が臨床試験に参加する、または臨床試験に参加し続ける必要がある状況(たとえば、命を救う可能性のある治療を受けるため)が必ずあるだろう。臨床試験に参加している患者への助言は、各々の状態に合わせて個別に行われるべきである。

米国食品医薬品局(FDA)は3月18日に、コロナウイルス世界的大流行時の医薬品、医療機器などの臨床試験実施に関するガイダンスを発表した。さらに、NCIは臨床試験により柔軟性を持たせ、患者と介護者が必要な治療を円滑に受けられることを目的として、コロナウイルス世界的大流行時の臨床試験活動に関わるガイダンスを提供している。

NCIは、臨床試験を通じて治療を受ける患者のケアを行う医師のニーズをくみ取り、課題と施策に取り組むため、NCIがサポートする臨床試験をこれからも注意深く見守る。臨床試験実施機関の方針や運営が、上記のガイダンスと異なる場合は、NCIがん治療評価プログラム(Cancer Therapy Evaluation Program、CTEP) に連絡することを推奨する。

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翻訳担当者 為石万里子

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学奈良病院)

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