新型コロナウイルス:がん患者さんが知っておくべきこと:コロナワクチン

更新日:2021年2月5日 本記事は、毎日内容がレビューされ、更新されています。

メリー・ジェニファー・マーカム医師、米国内科学会フェローは、フロリダ大学、血液・腫瘍学責任者代理、フロリダ大学医学部の准教授、フロリダ大学ヘルスがんセンター、メディカルアフェアーズ部門の副部長を務めています。婦人科がんの治療が専門ですマーカム医師はCancer.Netの婦人科がんの副編集者でASCOのがんコミュニケーション委員会の前委員長ですマーカム医師のツイッター@DrMarkhamを フォローしてください。

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米臨床腫瘍学会(ASCO)は、がん患者、がんサバイバー、特に免疫機能が低下している人々がコロナウイルスが自分たちの健康に与える影響を心配していることを理解しています。患者さんは、担当のがん専門の先生や健康管理チームの方に感染から身を守る方法について話し合う必要があります。(*以下、COVID-19=新型コロナウイルスのこと)

COVID-19ワクチンについて何を知っておくべきなのでしょうか?

米国において初めて緊急使用許可を得たCOVID-19ワクチンは、ファイザー社とビオンテック社が共同開発したワクチン(ファイザー/ビオンテックワクチン)です。緊急使用許可を得た2番目のワクチンはモデルナ社が開発したワクチンです(モデルナワクチン)。緊急使用許可は米国食品医薬品局(FDA)による正式な認可ではありませんが、緊急使用許可をうけたワクチンは米国内での使用が許されます。

ファイザー/ビオンテックワクチンは、16歳以上を対象として3週間間隔で2回接種されます。モデルナワクチンは、18歳以上を対象に1カ月間隔で2回接種されます。予想される最も一般的な副反応は、注射部位の痛み、倦怠感、筋肉痛、頭痛、悪寒、関節痛や発熱です。副反応は予想されるものであり、数日のうちにおさまります。

COVID-19ワクチンはメーカーを問わず、2回接種が推奨されています。1回の接種では不十分です。また、1回目にファイザー/ビオンテックワクチンの接種を受けたのなら、2回目もファイザー/ビオンテックワクチンの接種を受けなければなりません。1回目にモデルナワクチンの接種を受けたのなら、2回目もモデルナワクチンの接種を受ける必要があります。モデルナワクチンとファイザー/ビオンテックワクチンを混ぜて接種することは推奨されません。

現在使用できるこれらのCOVID-19ワクチンが、2020年後半に発見されたより伝染力の高い最新の変異ウイルスに対しても有効であると考えられていることは重要なことです。

米国疾病管理予防センター(CDC)は、ワクチンはまず医療従事者と長期介護施設(すわわち老人ホーム)入所者に、続いてエッセンシャルワーカー、65歳以上の人、そして、基礎疾患のある16歳から74歳の人に配られることを推奨しています。ワクチンの供給量が増えるにつれ接種推奨範囲は広がるでしょう。ワクチンの配布は州レベルで調整されており、ワクチンを入手できるかどうかについての詳しい情報は、お住まいの群や州の保健当局に確かめればわかるでしょう。

COVID-19ワクチンの臨床試験は慢性肺疾患、糖尿病や肥満などの疾患を持つ人を対象としていましたが、がん患者やがん治療を受けている人は対象とされていませんでした。このことは、がん患者やがん治療を受けている人に対するワクチンの安全性と有効性については現時点ではわかっていないということを意味します。がん患者に対するCOVID-19ワクチンの安全性についての情報は不足していますが、がん患者も肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンなど多くのワクチンを受けることが推奨されます。がん治療により免疫システムが弱っているときでも受けても良いワクチンもいくつかありますが、生ウイルスワクチンなどいくつかのワクチンは、がん治療を受けているときには受けてはいけません。COVID-19ワクチンは生ウイルスワクチンではありません。

がん患者、がんサバイバー、化学療法や免疫療法などのがん治療を現在受けている人に、COVID-19ワクチン接種が推奨される可能性のあることについては専門家の意見が一致しています。ワクチンが推奨されないのは、ワクチンの特定の成分に対するアナフィラキシーなど有害な反応を示す可能性のある人だけです。COVID-19ワクチンが推奨されるのかどうかについて、自分の医療履歴に基づいて主治医またはがんケアチームと相談してください。あなたがワクチン接種をいつ受けられるかについて、主治医は時間がたつにつれより多くの情報を得られるようになります。COVID-19ワクチンとがん患者との関係についてはFAQをお読みください(このリンクは別のASCOウェブサイトに移動します)。

ワクチン接種を受けてからも、マスク着用、社会的距離(ソーシャルディスタンス)などそれまでと同じようにCOVID-19に対する予防措置を取らなければなりません。大多数の住民がワクチン接種を受けるまでウイルスはコミュニティーに残るので、ウイルスが拡散しないようにするためにはこれらの予防措置が決定的に重要です。

コロナウイルス2019とは何ですか?

コロナウイルス疾患2019(またはCOVID-19)は、新規(または新型)コロナウイルスによって引き起こされる呼吸器疾患で、2019年12月の中国の武漢で最初に発見されました。

コロナウイルスは、風邪といった軽微な病気から重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)といった重度な病気を引き起こすウイルスまで含まれる大きなウイルス属に含まれます。新型コロナウイルスはSARSに関連したコロナウイルス(SARS-CoV)であることから、SARS-CoV-2と命名されました。COVID-19の原因となるSARS-CoV-2の正確な発生源は特定されていませんが、おそらくコウモリに由来するものと考えられています。

このウイルスは、咳やくしゃみをしたときに鼻や口から広がる少量の飛沫を介して人から人へと感染します。これらの飛沫を吸い込んだり、表面に飛沫がついているものを触った後に目や鼻、口を触ったりすることでCOVID-19に感染する可能性があります。最近では、ウイルスが空気中にとどまり、人から人へ感染すると考えられています。一般的には濃厚接触(約2m)以内によりウイルス感染が広がりますが、空気感染によることもあります。ウイルス粒子は、閉鎖空間では数分から数時間にわたり空気中にとどまることができ、2m以上離れたところにいる人を感染させることができます。

COVID-19による症状は軽度から重度に渡り、発熱、咳、息切れなどが含まれ、症状はウイルスに曝露されてから2日〜14日の間に現れることがあります。症状としては、発熱、咳、息切れ、悪寒、頭痛、喉の痛み、新たに味覚や嗅覚の消失などがあります。その他の症状としては、痛みや倦怠感、鼻づまりや鼻水、下痢などがあります。人によっては、この病気が原因で重度の肺炎や心臓病を引き起こし、死に至ることもあります。しかし、中には感染しても症状がない人もいます。

COVID-19は、小児および成人どちらにも発症する可能性があります。

小児の症状は成人の症状よりも軽いようです。小児がCOVID-19にかかると、発疹、発熱、腹痛、嘔吐や下痢などの症状を伴う多臓器炎症症候群になる危険性があります。初期の報告では、小児や若年成人は他の年齢層ほどCOVID-19の影響を受けないことが示されていました。しかし、乳幼児を含むあらゆる年齢層の人がCOVID-19で命を落とす可能性があります。さらに、黒人やヒスパニックを含む多様な人種ではCOVID-19による死亡が不釣り合いに多いようです。

ASCO20 Virtual Scientific Programで発表された、がんとCOVID-19の患者928人を対象とした解析では、活動性のある進行がんの患者は、がんから寛解している患者と比較して30日以内に死亡するリスクが5倍高いことが明らかになりました。

一般的にウイルスは時間の経過とともに突然変異により変化しますが、SARS-CoV-2についてもいくつかの変異種が見つかっています。2020年9月にイギリスで新しい変異株が見つかりましたが、今では米国を含む多くの国でも見つかっています。この変異ウイルスは人から人へより簡単に感染しますが、致死性が高いとは考えられていません。

COVID-19にかからないようにするためには何ができますか?

2つのワクチンが米国食品医薬品局から緊急使用許可を得ていますが、正式な認可を得たワクチンはまだありません。COVID-19ワクチンの有効性を調べる臨床試験はまだ進行中であり、これらの臨床試験に参加することはいまなお重要です。これらの臨床試験により、科学者らは、長期的には患者や一般の人々の助けとなる価値ある情報を得ることができます。COVID-19ワクチンの臨床試験への参加を希望する場合は、ClinicalTrials.govで参加できるすべての臨床試験リストを見ることができます。

自分の身を守る最も重要な方法は、COVID-19に曝露しないようにすることです。できるだけ家に居るようにし、混雑する場所を避けます。不必要な旅行は避け、米国疾病管理予防センター(CDC)や世界保健機構(WHO)の旅行制限ガイダンスに従ってください。

その他の自分自身を守る重要な方法は、石鹸と水で少なくとも20秒以上、手を頻繁に洗うことです。20秒とは大体「ハッピーバースデートゥーユー」を最初から最後まで2回歌うくらいの長さです。石鹸や水がない場合には、60%以上のアルコールを含む手消毒を使います。

頻繁に手を洗うことに加えて、以下のことが重要です:

  • ・目、鼻、口を触らないようにする。
  • ・咳やくしゃみをするときにはティッシュペーパーを使用する。使用後はティッシュペーパーを捨てること。もしくは、手ではなくひじに向かって咳やくしゃみをする。
  • ・病気の人と近距離での接触は避ける。
  • ・接触するものや表面を頻繁に洗剤や雑巾できれいにする。これらの表面やものにはドアノブ、テーブル、トイレ、キーボード、タブレット、携帯電話、電灯スイッチ、その他多くのものが含まれます。

公共の場では、鼻と口を覆うマスクや布製の顔面カバーを着用することが重要です。これは特に、COVID-19の人の中には、症状がなく、自分がウイルスに感染していることに気づかない人や、まだ症状が出ていない人もいるため、地域社会でのCOVID-19の感染拡大を防ぐのに役立ちます。呼気弁や通気口のあるマスクを着用すべきではありません。通気口があると、自分の呼吸器の飛沫がマスクから漏れてしまい、他の人を危険にさらす可能性があるからです。

布製のマスクや顔面カバーをつけることが社会的距離や物理的距離をとることの代わりになるのではないことを覚えておいてください。公共の場では両方を行う必要があります:他の人からの最低約2mの物理的距離をとることとマスクを着用することを守ってください。

亜鉛やビタミンCは、たとえたくさん摂取したとしても、COVID-19の感染防止に役立つという科学的証拠はありません。マウスウォッシュや鼻洗浄剤、あるいはマウスウォッシュを大量に摂取してもCOVID-19を防ぐことはできないでしょうし、危険なこともあります。

がん患者が特に気を付けることはありますか?

がん患者さん、現在がん治療中の方、高齢者、肺疾患、糖尿病、心疾患といった重篤な慢性疾患のある方は、死に至ることもある重篤なCOVID-19となるリスクが高い可能性があります。最近のデータは、活動性または進行中のがんの人は、がんが寛解している人よりもリスクが高い可能性があることを示しています。がん患者さんにもがんを患っていない方々と同じルールが適用されます。必ずよく手を洗うこと、頻繁に洗うこと。顔を触らないようにし、病気の人と近距離での接触は避けること。

COVID-19で重症化するリスクの高い人は、COVID-19パンデミックの間は不要の旅行はするべきではありません。家にとどまり、他の人との接触を減らし、ウイルスへの曝露を減らしてください。少人数の一緒に住んでいない家族や友人とのものを含めて、社交的な集まりは避けてください。どうしても家を出なければならないときは、他人と最低でも6フィート(約2m)の距離を保ってください。家を出るのは、食料品の買い物、通院や薬局での薬の受け取りといった必要不可欠な時だけにするのが最も安全です。布製顔面カバーかマスクを着用し、できるだけ短時間の外出にとどめてください。外出する必要がないように、食料品や薬を配達してもらうという方法もあります。

屋外でのウォーキングや運動は、混雑していない場所で、他の人との距離が少なくとも6フィート(約2m)以上離れていれば問題ありません。他人と出会った場合に備えて、マスクは持っておきましょう。

処方薬、市販薬ともに必要な薬が十分量、少なくとも1カ月分、手元にあることを必ず確認しましょう。家族、友達、隣近所の方、コミュニティや近隣で必要な時に情報提供やサポートしてくれる方などを含む緊急連絡先リストを作成または更新しておきます。

あなたのサポートシステムにいつでも連絡できるように、家族や友人とビデオチャットや電話で繋がる計画を立てます。ビデオやその他のライブチャットが行える技術には、フェイスタイム、ズーム、Googleハングアウトあるいはインスタグラムやフェイスブックなどのソーシャルメディアのツールがあります。

COVID-19大流行中にがんの治療予定がある場合、担当のがん専門医と治療の継続または延期の利点とリスクに関して話し合います。治療の予定はないけれど、診察の予約が入っている場合、ビデオ会議や遠隔医療による診察が可能な場合もあります。この方法があなたに推奨されるかどうか、がん管理チームに必ず確認してください。

最後に、あなた自身が決断できないほど重症になったときのために、あなたの健康管理に関する希望を書いておくことは常に重要です。あなたの家族やあなたの医療チームがあなたにとって重要なことや希望を知ることができます。まだ、行っていないのであれば、今が良い機会です。このトピックに関する有用な情報がCancer.Netにあります。(英語)

訪問者数を制限したり、訪問者の受け入れを取りめる病院や診療所もあるため、健康管理に関する希望を書いておくことは今まで以上に重要です。以下に重要な質問をいくつか紹介しますので、大切な方と一緒に話し合って書いてみてください。

  • ・許容できる生活の質はどんなものか?
  • ・健康状態が悪化したとき、一番大切にしたいことは何か?
  • ・会話ができなくなったとき、代わりに話してもらいたい人は誰か?
  • ・治療に関する決定に参加して欲しくないのは誰か?
  • ・心停止した場合、心配蘇生(CPR)を希望するか?

がん治療のための来院に変化はありますか?

COVID-19の大流行と、公共の場へ出かけることによるウイルス曝露のリスク増加を考慮して、病院や診療所の多くは来院ポリシーを変更しています。患者1人あたり1名の訪問を許可する施設もあれば、訪問者の受け入れを取りやめる施設もあります。受診のため施設へ向かう前に、病院や診療所へ最新の来院ポリシーを確認してください。

がん治療チームは、予約の一部を遠隔診療に切り替える可能性があります。自宅にいて、電話やパソコンを使ってテレビ面談をしながら医師や他の医療チームのメンバーと面会することができます。主治医の医療施設では、遠隔医療の予約にどのようなシステムを使用しているかをお知らせし、この方法で診察を受ける方法を説明してくれます。もし、対面ではなく遠隔医療での診察を希望される場合は、可能かどうか医師の医療施設のスタッフに尋ねてみてください。

主治医は骨強化療法(例えばデノスマブ(Xgeva)、ゾレドロン酸(ゾメタ)、経静脈鉄補充)などの支持療法の延期を勧めるかもしれません。医師が治療延期を勧めるのは、そうすることが利益になると判断した場合だけです。マンモグラムや大腸内視鏡検査などのがんスクリーニング検査も、ウイルス曝露のリスクを減らすために延期することがあります。

がん専門医は、化学療法や免疫療法などの薬剤を使うがん治療について、治療間の間隔を長くすることを勧める可能性があります。また、がんの診断状況や治療目的によっては、これらの治療開始の延期を勧めることもあります。がん専門医は、あなたの状況に応じたリスクとメリットを考慮した上でのみ、そう判断することを心に留めておくことが大切です。

ウイルス曝露の危険性を減らすために、あなたのコミュニティーでのウイルス拡散の程度によっては、マンモグラフィー、大腸内視鏡検査などのがんスクリーニングや骨密度検査といった他の検査が延期されることが時々あります。定期的ながんスクリーニングを受けることは、パンデミックの間であってもやはり重要です。Prevent Cancer FoundationのBack on the Booksウェブサイトで、COVID-19と安全ながんスクリーニングについてもっと詳しく知ることができます。リンチ症候群やBRCA変異といった遺伝性がん症候群を持つ人など、がんのリスクが高い人は、スクリーニング検査やがんリスク軽減のための処置を遅らせることを主治医に勧められる可能性があります。主治医がこういったことを勧めるのは、あなたの居住地域におけるウイルス感染率やあなたの個人的リスクを考慮したうえで、あなたにとって最も安全であると思った時だけです。これらの検査や処置をいつ行うのが最も良いかについて主治医と相談することは、どんな場合にも最善のことです。

コロナウイルスに感染したかもしれないと思ったら何をすべきですか?

熱あるいは咳や息切れといった呼吸器疾患の症状がある場合、医療従事者や救急部門へ行く前に、まず電話で連絡をしてください。COVID-19に感染した疑いがあることを伝えてください。あなたの症状や旅行歴、接触感染の可能性や健康上のリスク因子について電話で問診を行った後、COVID-19検査を受けるべきかどうか判断するために、あなたの症状、旅行歴、暴露、医学的危険因子について質問されます。その後、地域で検査を受ける方法を説明してもらえます。

患者さんからよく尋ねられるのは、どの医師に電話をすればよいかということです。あなたが一番連絡を取っている医師に電話をすることをお勧めします。がん治療後1年以上経過しており、近くのかかりつけ医に定期的に通っている場合、かかりつけ医に連絡をするのがよいでしょう。しかし、がん治療中であったり腫瘍医のところへ定期的に通っているのであれば、がん治療の主治医に電話をしてください。

免疫系を抑制するがん治療を受けていて、発熱や呼吸器症状が出た場合は、治療中に発熱した場合と同じように、腫瘍専門医に連絡してください。いつオフィスや病院に入院するか、家にいる方が安全かどうかについては、必ずガイダンスに従ってください。症状がひどい場合は、医療上の緊急事態である可能性があり、911に電話する必要があるかもしれません。あなたやあなたの大切な人に、呼吸困難、胸の痛みや圧迫感の持続、新たな混乱状態、唇の青みなどの症状がある場合は、すぐに医師の診察を受けてください。

COVID-19の検査は、Qチップに似た長さ6インチ(約15 cm)の綿棒を鼻腔の奥深くに少なくとも15秒間挿入する必要があります。綿棒は特別な容器に挿入され、検査のために研究室に送られます。地域によっては唾液検査も行えます。家庭でウイルス検体を自分で採取するためのキットで、米国食品医薬品局の緊急使用許可を得たものもいくつかあります。これらのテストでは多くの場合、医療スクリーニングのための質問票への回答と一時払いのあとに、検体が検査機関に送られます。また、薬局で購入でき、20分で結果の出る家庭用検査が最近、米国食品医薬品局から初めて緊急使用許可を得ました。この検査には、ウイルスがあればその断片を検出できる鼻腔用綿棒を用います。これらの検査があなたにとって適切な検査かどうかは主治医と相談してください。家庭用検査を受けることに決めたときには、必ず、あなたのがんケアチームに結果を知らせてください。

COVID-19に感染した可能性がある場合、検査を受け、結果を待っている間は、在宅し、ご自身を隔離してください。病気の時に在宅するという方法は、新型コロナウイルスやインフルエンザといった呼吸器系のウイルスを他の人に移さないための最良の方法です。同居人がいる場合は同居人にウイルスを広げるリスクを下げるためにも、できれば自室に自己隔離すべきでしょう。

繰り返しますが、必ず頻繁に手を洗ってください。

COVID-19に感染したことが心配な場合は、症状の発生に注意してください。発熱がないか定期的に体温をチェックしてください。増悪中のがんがあるか、現在がんの治療を受けている場合は、可能性のある暴露について医療チームに知らせてください。2020年6月3日、ニューイングランドジャーナルオブメディシンで、COVID-19に家庭または職場で曝露したCOVID-19の症状のない821人を対象とした研究が発表されました。この研究は、COVID-19の人への暴露後のヒドロキシクロロキンによる治療は何の利益ももたらさないことを示しました。

コロナウイルスに感染しているかを知る方法はありますか?

抗体検査(血清検査)が開発されました。この検査により、あなたがCOVID-19に感染しているかを判定できます。この検査は血液の抗体を調べるものです。抗体とは、感染に反応して体内で作られる特定のタンパクです。

抗体検査は完全ではありません。COVID-19 に感染した人の中には、抗体を作らない人もいます。あるいは、抗体のレベルが非常に低いかもしれません。人によっては、抗体検査で抗体が検出されても、その抗体はCOVID-19ではなく、別のコロナウイルスに関連したものであることを意味する「偽陽性」の抗体検査を受けることがあります。

抗体検査により検査を受けた時点でのCOVID-19感染につき診断を下してはなりません。体内で抗体が作られるには、感染後1週間から3週間かかることがあります。

もしCOVID-19に感染したのであれば、それがウイルス検査による診断であろうと抗体検査によるものであろうと、約3カ月にわたり免疫を獲得する可能性があります(確実ではありません)。しかし、COVID-19感染後のその3カ月間に疑わしい症状が出た場合には、他の明白な原因がない限り、もう一度COVID-19検査を受けることが推奨されます。

COVID-19にかかった場合、がん治療は継続できますか?

COVID-19検査で陽性と判定された場合は、その影響ががん治療に与える影響について、担当の腫瘍医と話し合う必要があります。がん治療センターの中には、化学療法や他のがん治療を再開する前にCOVID-19検査で陰性となっていることを求めるところがあるかもしれません。しかし、COVID-19の患者さんの中には、症状が回復した後も陽性が続く方もいます。このような状況では、あなたの医療チームは、陽性検査にもかかわらずがん治療を再開することのリスクと利点を検討します。ウイルス検査で陽性であっても症状がないか軽度である場合には特にそうですが、ある種の治療、とりわけ免疫システムを損なわない治療、は継続することができるかもしれません。

がん治療があるいは継続されたら、輸液クリニックやがん治療センターに通院する際にはマスクを着用し、通院前後には手指消毒剤の使用や手洗いをするなど、手指の衛生管理をしっかりと行うことが大切です。

COVID-19の治療薬はありますか?

COVID-19を治す方法はありません。研究者らは、COVID-19の治療薬の開発および試験を一生懸命に行っています。臨床試験は人を対象とした研究的試験です。非常に早く研究が進み、研究者や医師によりこの病気に有効な治療を見つけるための臨床試験が計画されました。COVID-19治療の臨床試験が米国やその他の国々の一部の地域で開始されています。コロナウイルス疾患と診断され、COVID-19患者を対象とした臨床試験に参加する場合には、これらの治療を受けられる可能性があります。また、臨床試験に参加することにより、研究者がこの病気に対する最も有効で安全な治療薬を見つけるために役立つかもしれません。例えば、Beat19研究the NCI COVID-19 in Cancer Patients Study (NCCAPS)やスタンフォード研究は、研究者が病気の経過を知り、治療法を見つけるのに役立つように、COVID-19にかかっている可能性のある人から症状を収集することを目的としています。

抗ウイルス薬のレムデシビルは、COVID-19の治療に役立つ可能性があります。レムデシビルは2020年5月1日に米国食品医薬品局から緊急使用許可を受け、2020年10月23日にCOVID-19治療薬として初の認可を受けました。レムデシビルは、入院が必要なCOVID-19患者に使用することが認められています。レムデシビルは入院期間を短くすることはできるかもしれませんが、死を防ぐことはできません。

バムラニビマブは、2020年11月9日に米国食品医薬品局の緊急使用許可を得た静脈内投与される抗体医薬ですが、SARS-CoV-2検査で陽性となり重篤なCOVID-19症状を呈しているか入院のリスクが高い12歳以上の人の治療に使用されます。この薬剤の臨床試験はまだ続いていますが、初期段階の情報によると、患者によっては入院や救急外来受診の頻度が下がるかもしれないことが示唆されているようです。さらに、カシリビマブ(casirivimab)とイムデビマブ(imdevimab)という2つの静脈内投与用抗体医薬が、軽度あるいは中等度のCOVID-19患者で重篤になるリスクが高い人の治療に対して、2020年11月21日に米国食品医薬品局の緊急使用許可を得ました。この2剤は同時に投与されます。これらの最新の抗体医薬は、いずれも、酸素吸入をしている人や入院中の人には使用できません。

ステロイド剤であるデキサメタゾンは、COVID-19の重症患者の治療に有益である可能性があります。査読付きの論文には掲載されていませんが、英国のRecovery Trialの初期データによると、酸素療法を必要とする患者や人工呼吸器を使用している患者の救命にデキサメタゾンが役立つ可能性があることが.K. Recovery Trial試験によりわかりました。この試験に参加した重症患者では、デキサメタゾン服用により28日後の死亡率が下がりました。本剤は軽症の場合には有用ではないと見られています。

回復期患者の血漿投与とは、COVID-19から回復した患者から採取できる血液の液体部分です。この血漿にはSARS-CoV-2の抗体が含まれている可能性があります。回復期患者血漿の治療薬としての可能性が臨床試験で検証され、米国食品医薬品局が8月23日に緊急使用許可を与えました。しかし、その利益とリスクは、まだランダム化臨床試験では確認されていません。COVID-19から完全に回復した場合は、他の人を助けるために、お住まいの地域の血液バンクで血漿を提供することができるかもしれません。回復期血漿の提供についての詳細は、赤十字とAABB(以前は米国血液銀行協会として知られていた)のウェブサイトをご覧ください。

ヒドロキシクロロキン(プラケニル)は当初COVID-19治療薬として有望に見えましたが、その後、多くの臨床試験でその安全性と有効性のデータが報告されると、有益であるとは言えないことがわかりました。ヒドロキシクロロキンをCOVID-19治療に使用することは、単独であろうと他の医薬品との併用であろうとも、推奨されません。

クロロキン化合物(リン酸クロロキン)は、魚用の水槽をきれいにするための添加物として使用されています。水槽清掃用のクロロキン摂取による一人の死亡と複数の過剰摂取が報告されています。この製品を服用してはいけません-死に至る可能性があります。

漂白剤を飲んだり、漂白剤などの家庭用消毒剤を注射したりするのは非常に危険であり、命を落とす可能性があります。これらはCOVID-19の治療薬ではなく、予防にもなりません。有毒低木の抽出物であるオレアンドリンを用いた治療も提案されていますが、避けなければなりません。たとえ少しであってもこの植物を摂取すると死ぬことがあります。これらでCOVID-19を治療することはできず、予防することもできません。

どうすれば学校や職場に安全に戻れるでしょう?

全国の地元と州の当局は、学校システムと協力して学校の再開を計画しています。対面授業だけをおこなっている学校もあれば、年間全部または一部で完全にオンラインの授業を行ったり、まだ両方の方法を取り入れている学校もあります。

もしあなたのお子さんが対面授業戻るのであれば、鼻や口を覆うフェースカバーあるいはマスクを常につけておくことが、感染拡大のリスクを下げるためにはたいへん大切です。ソーシャルディスタンスを取れるときは取ってください。大人数のグループになることは避けてください。手指消毒液を頻繁に使い、できるときにはいつでも手を洗ってください。体調不良や熱がある場合は、家にとどまりまたは家から出さないようにしてください。

対面での仕事に戻るときも、同じルールに従ってください。大人数で集まることを避け、できるだけソーシャルディスタンスを取り、食事の際の短時間を除き常にマスクをしてください。机やよく触るものの表面を消毒ワイプや他の洗浄液で頻繁に清掃してください。体調が悪い時や熱があるときは出勤しないでください。

そして、必ずインフルエンザの予防注射を受けてください。そのことで、あなたとあなたの周りの人を助けることができます。

いつになったら通常に戻りますか?

この質問の答えはまだわかりません。ウイルスの感染率は2020年初頭から変動しましたが、ウイルスはなくなっていませんし、すぐになくなりそうにもありません。全体としてみれば、アメリカではCOVID-19症例数とウイルスによる死者数は増加を続けています。ワクチンが使えるようになり、ほとんどの人がワクチン接種を受ければ、事態が元にもどる助けにはなるでしょうが、それでもウイルスと感染のリスクは残ります。当面の間はマスク着用が大切であり続けるでしょう。

あなたの地域、市区町村、または都道府県が、不要不急の事業を再開することを許可し始めた場合、安全を確保する最善の方法は、家に留まり続け、できるだけ人前に出ることを避けることです。家を出なければならないときは、布製のフェイスマスクやフェイスカバーを着用し続けましょう。徹底的に頻繁に手を洗い、食料品店や薬局など他の人がいるかもしれない場所に行く必要がある場合は、他の人から少なくとも6フィート(約2メートル)離れてください。

再開したレストランで食事をしようと思ったら、屋外で食べるのが一番安全ですが、それでも飲食しているとき以外はマスクをつけておくべきです。。レストランには、ソーシャルディスタンシング(社会的距離)を保つための措置がとられているはずですが、もしそうでないなら、屋外に席のある他の店を選んでください。。ビュッフェは避けましょう。消毒されたことを確認しない限り、メニューを触らないようにするか、携帯電話でレストランのメニューをオンラインで読むようにしましょう。何かに触れた後は必ず手を洗うか、手指消毒剤を使うようにしましょう。

COVID-19検査で陰性であれば、家の外で友人や家族と集まっても安全だと多くの人が信じています。しかし、それは真実ではありません。COVID-19検査が陰性であるということは、検査を受けた時点で陰性であったことを示すに過ぎないことを覚えておくことが重要です。この検査では、検査を受けたちょうどその時のウイルス量についての情報が得られるだけです。人によっては、COVID-19に感染していても検査で陽性と判定されるだけのウイルス量が体内にない可能性があります。また、これらの検査は100%正確というわけではありません。

最も安全な方法は、特にリスクが高いと考えられる場合は、自宅待機の制限がまだあるかのように生活を続けることです。

がんやがん治療による個人のリスクについて疑問がある場合は、必ず医師に相談して指導してもらいましょう。

COVID-19に関する最新情報はどこにありますか?

常にCOVID-19大流行に関する最新情報を取得しておくことが重要です。米国疾病管理予防センター、地方や州の保健当局にはあなたの地域で感染が確認されたかについて進行中の情報があります。

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翻訳担当者 後藤若菜、佐々木亜衣子、伊藤彰

監修 野崎 健司(血液・腫瘍内科/大阪大学医学系研究科)、小坂 泰二郎(HITO病院 乳腺外科)

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原文掲載日 

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