英国の子宮頸がん予防(HPV)ワクチン、1回接種に移行

キャンサーリサーチUK

イングランドにおけるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種プログラムは、2023年9月より1回接種に移行すると英国健康安全保障庁(UKHSA)が発表した。

入手可能なエビデンスの複数のレビューから、HPVに関連するがんの予防には1回接種でも2回接種と同等の有効性があることが示された。この結果を受け、イングランドの12歳から13歳の若年者たちは、2回接種ではなく1回接種を受けるようになる。

HPVワクチンは、2008年以来、英国の国民保険サービス(NHS)の定期接種スケジュールに組み入れられており、高い接種率と数百万回の投与回数を有する世界で最も実績を上げたワクチンのひとつである。2019年からは、女子だけでなく男子にも投与されるようになった。

子宮頸がん、膣・外陰部、陰茎、肛門、咽頭がん若年者のがん予防

およそ10人に8人が、一生のうちにいつかはHPVに感染する。HPV感染は、多くの人にとって問題にならないが、特定の「ハイリスク」タイプのHPVに感染した場合は、がんにつながる可能性がある。

HPVは子宮頸がんの主要な原因であり、同様に膣、外陰部、陰茎、肛門から生じるがんの主原因でもある。また、一部の頭頸部がんにも関連している。これらはすべて比較的まれながん種である。

HPVワクチンは、特にリスクが高いとされるタイプのHPV感染を予防するための効果的な方法である。HPVワクチンの接種を受けた人では、HPVに関連したがんを発症する可能性がはるかに低くなる。

2021年にキャンサーリサーチUKが資金提供した研究では、12〜13歳の時にHPVワクチンの接種対象であった若年女性で子宮頸がんの発症率が87%低いことが示された。

この研究の総括として、英国のHPVワクチン接種プログラムは、10年あまりの間に約450症例のがんと17,200症例の前がん状態を予防したと推定された。

昨年、本研究の筆頭著者であるPeter Sasieni教授は、「こういった次世代の人々がおそらく、この国で子宮頸がんを心配する必要がほとんどなくなると思えるというのは素晴らしいことだ」と語っている。

HPVワクチンの1回接種への切り替え

1回接種への移行は、予防接種・免疫合同委員会(JCVI)による数年にわたるエビデンスレビューを受けて決定された。

こうした動きは、世界保健機関(WHO)の予防接種の専門家からなる戦略諮問委員会(SAGE)も支持しており、SAGEは2022年4月に「HPVワクチンの1回接種がHPVに対して確実な予防効果をもたらす」と結論付けるレビューを発表している。

1回接種への変更により、若年者のワクチン接種がより容易になり、費用対効果も向上する。これは世界中でより多くの命が救われることにつながる。

HPVワクチンの今後の展開

イングランドでは、まだ予防接種を受けていない、より年齢の高い人々もワクチンを接種できる。学校でワクチン接種を提示されていた人は、25歳になるまでNHSを通じて接種を受けることができる。

25〜45歳までのゲイ、バイセクシュアル、その他男性と性交渉を持つ男性(GBMSM)は、セクシャルヘルスクリニックを通じて、引き続き2回の接種を受ける。学生時代にワクチンの接種を受けなかった25歳以下のGBMSMは、1回接種に移行する。

検診とワクチン接種に関する英国の指揮官であるSteve Russell氏は、「これは世界をリードする英国のHPVワクチン接種プログラムの新たな前進であり、子宮頸がんのリスクをさらに減少させることで命を救う」と述べる。

「より簡単に、たった1回のHPVワクチン接種でこのウイルスによるがんのリスクを減らせることになるので、HPVワクチン接種の案内を受けた人々が積極的に参加することが非常に重要だ」。

  • 監訳 喜多川 亮(産婦人科/総合守谷第一病院 産婦人科)
  • 翻訳担当者 加藤千恵
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  • 原文掲載日 2023/06/21

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