癌サバイバーの高い失業率

キャンサーコンサルタンツ
2009年2月

癌を患ったことのない人に比べ癌サバイバーは失業する可能性が高い、とヨーロッパの研究者らは報告した。このメタアナリシスの詳細はJournal of the American Medical Association誌2009年2月18日号に掲載された。[1]

癌が治癒した後、癌サバイバーは正常な日常生活を営む上で多様な困難を抱えている。有意義な仕事への復帰は回復過程の重要な構成要素であることに、大半の観察者は異論を唱えないであろう。とはいえ、多くの癌サバイバーにとって、これは至難の業である。多くが癌を患ったことによる身体的支障に加え、精神・感情面の問題を抱えている。こういった要因のすべてが、有意義な仕事に復帰する障害となりうる。しかもアメリカでは、雇用と健康保険が一体となっており、先行する基礎疾患は保険の適用外となることが多い。保険料の負担が増したことを事由に職を失う癌サバイバーもでている。

現行の研究に参加している研究者らは癌サバイバーの雇用を扱った文献に掲載された36件の報告結果を調査した。これらの報告は1966年から2008年までの間に出版されたもので、アメリカやヨーロッパ、他諸国から出された研究を検討したものである。このメタアナリシスには、合計20,366人の癌サバイバーおよび157,603人のコントロールが含まれた。全体では、癌サバイバーの失業率は34%であったのに対してコントロールでは15%であった。しかしながら、以下のように失業率は癌の種類によって異なっていた。

 •36%の乳癌サバイバーに失業が見られたが、コントロールでは32%であった。

 •49%の消化器癌サバイバーに失業が見られたが、コントロールでは33%であった。

 •49%の女性生殖器癌サバイバーに失業が見られたが、コントロールでは38%であった。

 •39%の前立腺癌サバイバーに失業が見られたが、コントロールでは27%であった。

 •31%の血液癌サバイバーに失業が見られたが、コントロールでは24%であった。

 •18.5%の睾丸腫瘍サバイバーに失業が見られたが、コントロールでは18%であった。

著者らはアメリカの癌サバイバーの失業率はヨーロッパと比べて24%高いと報告したが、この差は統計学的な有意差には達しなかった。

コメント:

以上のデータは癌サバイバーが抱える問題を浮き彫りにしている。主として健康保険が雇用主から付与されるアメリカの癌サバイバーにとって、この点は特に重大である。また、これはヨーロッパと比べてアメリカの癌サバイバーの失業率が高いことの裏付けともなろう。雇用主には癌サバイバーの身体的障害にも適用できる保険契約の採用が勧められる。

参考文献:
[1] De Bour AGEM, Taskila T, Ojajarvi A, et al. Cancer survivors and unemployment. A meta-analysis and meta-regression. Journal of the American Medical Association. 2009;301:753-762.


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翻訳担当者 村中 健一郎(生物物理)

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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