FDAがオピオイド系とベンゾジアゼピン系薬剤の併用に警鐘

[2016年8月31日]

薬局、内科、精神科、神経内科、家庭医療向け

課題:オピオイド系薬剤とベンゾジアゼピン系薬剤または他の中枢神経系抑制薬が広く併用されるようになり、呼吸回数の低下や呼吸困難および死亡といった重篤な副作用を引き起こすことがFDAの再評価で明らかになった。オピオイド系薬剤は、鎮痛および鎮咳薬として使用され、ベンゾジアゼピン系薬剤は、不安、不眠およびけいれん発作の治療に使用されている。FDAは、オピオイド系薬剤とベンゾジアゼピン系薬剤の併用、またはオピオイド系薬剤と他の中枢神経系抑制薬の併用を可能な限り減らすため、最高の注意喚起レベルである枠組み警告を、オピオイド系鎮痛薬、オピオイド系鎮咳薬およびベンゾジアゼピン系薬剤の添付文書へ追加する。承認済の全てのオピオイド系鎮痛薬、オピオイド系鎮咳薬、ベンゾジアゼピン系薬剤およびその他の中枢神経系抑制薬のリストの医薬品安全性情報は次を参照:http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm518473.htm

FDAは、重篤なリスクと、オピオイド系薬剤にベンゾジアゼピン系薬剤、その他の中枢神経系抑制薬、およびアルコールを併用することが相関することを示したいくつかの試験を実施および再評価した。結果のまとめは次を参照:http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm518473.htm

FDAは、評価結果に基づき、これらのリスクを反映するため、オピオイド系薬剤やベンゾジアゼピン系薬剤の添付文書の変更および患者治療ガイドの新規作成あるいは改訂を求めている。この添付文書の変更には、新たな枠組み警告を追加すること、および警告欄、使用上の注意、薬物相互作用、患者カウンセリング情報の項目の改訂が含まれる。

FDAは、ベンゾジアゼピン系薬剤および他の中枢神経系抑制薬に、オピオイド中毒や依存の治療に使用される薬物関連治療(MAT)薬との併用についてもエビデンス評価を継続している。さらに、他の中枢神経系抑制薬についても添付文書の変更の要否を検討中であり、十分な情報が得られた時点で情報を更新する予定である。

背景:オピオイド系薬剤は、痛みに対して他の治療や薬剤が使用できない、または十分な除痛が得られない場合に使用される、効果の高い医療用医薬品である。ベンゾジアゼピン系薬剤は、不安、不眠およびけいれん発作を含む症状改善に広く使用されている。

推奨: 医療従事者は、オピオイド系鎮痛薬とベンゾジアゼピン系薬剤または他の中枢神経系抑制薬を併用して処方する場合は、他に代替薬がない患者に限定するべきである。これらの薬剤を併用する際は、臨床的に十分な効果がみられている間は、それぞれの薬剤の投与量および投薬期間は可能な限り最小限にする。患者やその介助者に対して、呼吸回数の低下や呼吸困難および/または鎮静作用、ならびにそれらに関連した徴候や症状の発現リスクを警告すること。ベンゾジアゼピン系薬剤やその他アルコールを含む中枢神経系抑制薬を内服または摂取している患者には、オピオイド系鎮咳薬の投薬処方は避けること。

オピオイド系薬剤に、ベンゾジアゼピン系薬剤、他の中枢神経系抑制薬またはアルコールを併用している患者およびその介助者は、普段とは違うめまい、意識のもうろうとした状態、過剰な眠気、呼吸回数の低下、呼吸困難、無応答を自覚し気付いた場合には、直ちに医師の診察を受けること。

医療従事者および患者は、これらの薬剤に関連する有害事象や副作用をFDAのMedWatch Safety Information および有害事象報告プログラムに以下の要領で報告するよう努めること:

・オンラインで報告様式を記入し提出:www.fda.gov/MedWatch/report

・報告様式をダウンロードまたは電話(1-800-332-1088)にて報告様式を請求し,記入後郵送またはFAX(1-800-FDA-0178)する

翻訳担当者 滝坂美咲

監修 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/福島県立医科大学白河総合診療アカデミー)

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原文掲載日 

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