乳癌検診が過剰診断につながる可能性

キャンサーコンサルタンツ
2009年8月

集団検診プログラムの結果、疾患の過剰診断に至り、3分の1の女性は必要のない乳癌治療を受ける可能性があることが、デンマークの研究者らによって報告された。この試験の結果はBritish Medical Journal誌の2009年7月9日号の電子早版に掲載されている。[1]

乳癌は米国女性の癌による死亡のうち2番目に多い死因であり、毎年約18万人が乳癌と診断されている。癌に対する最良の「治療」は発症を予防すること、または治療可能な時期に早期発見することである。その結果、乳癌検診は40歳超の女性や、発ガンリスクの高い女性にとってスタンダードとなった。

理論では、進行した乳癌の患者数は、大規模集団検診プログラムを開始後に減少するはずであるが、これを裏づけるデータは混乱を招くものであったと言っても過言ではない。実際、大規模検診の結果、乳癌の過剰診断につながっている可能性があると推測する研究者もいる。一方で、多くの研究者らが、現在の検診技術は、治療が必要な乳癌とそうでないものを十分区別できないと認めている。

コペンハーゲンの研究者らが、オーストラリア、英国、カナダ、スウェーデン、ノルウェーで政府が行ったマンモグラフィーによる検診プログラム開始前後の数年間における乳癌の傾向を分析した。データは検診実施前7年から実施後7年に渡るものであった。

結果は、乳癌を患っていると診断された女性の3人に1人が、実際には治療が必要なかったことを示した。進行が遅く、患者に影響がない癌もある。癌治療は、しばしば有害な影響を与える側面があり、また身体的にも精神的にも患者にストレスを与え、治療を受けることによりすべての患者が利益を得るわけではない。

これらの研究者らは「乳癌の発症率の増加は、検診の導入に密接に関係していた。」と結論づけている。

コメント:
この種の分析の妥当性は、数カ国で実施されたマンモグラフィーによる検診前後の発症率の信頼度に基づいている。調査結果に関わらず、全早期乳癌症例の30~40%しか発見できないマンモグラフィーのような検診方法が、診断困難で死亡に至ることのないような癌の発見にそれほど大きな影響があるとは信じがたい。マンモグラフィーや他の検診技術による早期検診の結果、より早期の診断が可能になり、進行癌患者数が減少したという多くの個別の試験のデータが明らかになりつつある。現在必要とされるのは、乳癌を早期発見する為のより良い検診手段である。乳癌患者の生存率を高めるためには容認されなければならないが、不必要に治療を受ける女性も出てくるだろう。ここで問題となるのは、検査された全体の人数に対して「過剰診断」された人数である。3分の1というのは非常に大きい数字であるが、他の試験との相関関係がない。例えば、あるデンマークの試験では、検診を受けた女性の人数のうち、問題となるような「過剰診断」は見つからなかった。

参考文献:
[1] Jorgensen KJ, Gotzche PC. Overdiagnosis in publicly organized mammography screening programmes: Systematic review of incidence trends. British Medical Journal [early online publication]. July 9, 2009. DOI:10.1136/bmj.b2587.


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翻訳担当者 平川 麻衣子

監修 中村 光宏(医学放射線)

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