アービタックスが食道扁平上皮癌治療を改善する可能性

キャンサーコンサルタンツ
2009年10月

アービタックス(セツキシマブ)は、プラチノール(シスプラチン)および5-FU投与中の転移性扁平上皮癌患者の奏効率、無増悪期間、全生存率を改善することが、ドイツの研究者らにより報告された。本試験の詳細は、2009年10月発行のAnnals of Oncology誌に掲載されている[1]。

食道癌の頻度は相対的に高く、致死性も非常に高い。米国において1998年には約12,300症例が新規に食道癌と診断され、12,000人近い患者が死亡した。このことが、食道癌が全ての癌の中でも致死性の高いものであると知らしめることとなった。食道の口側3分の2の部分に生じる癌の大部分は扁平細胞由来のものである。食道肛門側に生じる癌の大部分は円柱上皮由来のものであり、腺癌性のものである。かつて、全食道癌の80%以上が扁平上皮癌であったが、過去20年間において、急激な腺癌の発生率上昇がみられており、現在、腺癌は全食道癌の3分の1から2分の1を占めている(サイト注※欧米では逆流性食道炎による腺癌が増加していますが、日本においては全食道癌の約95%が扁平上皮癌です)。しかしながら、食道扁平上皮癌は現在も大きな問題であり、転移した場合の治療は困難である。転移性食道扁平上皮癌の一般的な治療法には、プラチナ製剤および5-FUを用いる。

アービタックスは、上皮増殖因子受容体(EGFR)の細胞外領域に結合するキメラ化モノクローナル抗体である。局所性または局所進行性の頭頸部癌に対する放射線療法との併用、またはプラチナ製剤をベースとした治療が奏効しなかった進行性のEGFR陽性頭頸部癌に対する単独療法として、最近承認された。初期の研究により、食道扁平上皮癌治療におけるアービタックスの効果が示唆されている。

今回の研究では、転移性食道扁平上皮癌患者62人を、プラチノール+5-FUにアービタックスを併用する群と併用しない群とに無作為に割付けた。アービタックスの毒性としては、発疹および下痢がある。全奏効率は、アービタックスを投与した患者で19%、化学療法のみの患者で13%であった。病勢コントロール率は、アービタックスを投与した患者で75%、化学療法のみの患者で57%であった。無増悪生存期間の中央値は、アービタックスを投与した患者で5.9カ月、化学療法のみの患者で3.6カ月であった。生存期間の中央値は、アービタックスを投与した患者で9.5カ月、化学療法のみの患者で5.5カ月であった。37の検体において、KRAS変異はみとめられなかった。

コメント:アービタックスは、食道扁平上皮癌の治療において効果を有すると考えられる。

参考文献:[1] Lorenzen S, Schuster T, Porschen R, et al. Cetuximab plus cisplatin-5-fluorouracil versus cisplatin-5-fluorouracil alone in first-line metastatic squamous cell carcinoma of the esophagus: a randomized phase II study of the Arbeitsgeminschaft Internistische Onkologie. Annals of Oncology. 2009; 20:1667-1673.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 近江屋 芽衣子

監修 北村 裕太(農学/医学生)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

食道がんに関連する記事

二重特異性免疫チェックポイント阻害薬カドニリマブはPD-L1発現に関係なく胃がん生存率を改善の画像

二重特異性免疫チェックポイント阻害薬カドニリマブはPD-L1発現に関係なく胃がん生存率を改善

PD-1/CTLA-4二重特異性抗体cadonilimab(カドニリマブ)と化学療法の併用は、PD-L1低値腫瘍患者を含む、未治療のHER2陰性局所進行または転移性胃/胃食道接合部がん...
進行胃/胃食道接合部腺がんにフルキンチニブ+パクリタキセル併用療法の画像

進行胃/胃食道接合部腺がんにフルキンチニブ+パクリタキセル併用療法

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「FRUTIGA試験において、fruquintinib[フルキンチニブ]とパクリタキセルの併用は、進行した胃/胃食道接合部腺がん...
食道がんに免疫療法薬チラゴルマブ+アテゾリズマブ併用療法の画像

食道がんに免疫療法薬チラゴルマブ+アテゾリズマブ併用療法

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「世界中の食道がんの多くは食道扁平上皮がんです。この第3相試験は、新しいチェックポイント阻害薬であるtiragolumab[チラ...
進行した胃・食道がんに2種の免疫チェックポイント(PD-1、TIGIT)阻害薬併用が有望の画像

進行した胃・食道がんに2種の免疫チェックポイント(PD-1、TIGIT)阻害薬併用が有望

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「PD-1阻害薬+化学療法の併用は、胃・食道がんに対する標準的な一次治療です。進行した胃・食道がんには新たな治療法の開発が必要で...