イレッサ 初回治療が、EGFR変異陽性で全身状態不良な進行NSCLC患者に有益

キャンサーコンサルタンツ
2009年3月

イレッサ(ゲフィチニブ)による初回治療は、上皮増殖因子受容体(EGFR)突然変異を有し、全身状態(活動度:PS)がきわめて不良な進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対し有益であることが、日本の研究者らにより報告された。本研究の詳細は、Journal of Clinical Oncology誌2009年3月20日号に掲載されている。[1]

イレッサの経口投与は、プラチナ製剤およびタキサン系薬剤を含む治療が無効となった進行NSCLC患者に対する単剤療法として、米国において承認されている。イレッサは、選択的EGFRチロシンキナーゼ阻害薬である。上皮増殖因子受容体は、NSCLCを含むヒトの固形腫瘍の多くに発現、過剰発現し、ときに調節不能な状態となっている。この受容体が活性化すると、アポトーシスを阻害し、細胞増殖、細胞接着、浸潤能、運動能を増大させることにより、腫瘍増殖を促進すると考えられている。肺腺癌や気管支肺胞上皮癌に奏効する場合が多く、非喫煙者や女性でより奏効の可能性が高い。さらに、EGFRの特異的突然変異を有する患者において奏効する可能性がより高い。

今回の研究では、PSスコア不良(PS3~4の患者22人を含む)の進行NSCLC患者30人が登録された。患者の年齢は20~74歳で、EGFR突然変異を有していた。患者はイレッサ250ミリグラムを1日1回経口投与され、癌の進行または耐えられない毒性が発現するまで治療を継続した。(重度の毒性が認められた場合、2日に1回の投与も可能とされた。)

結果は、全奏効率66%、病勢コントロール率90%であった。さらに79%においてPSスコアの改善がみとめられ、治療開始時のPSスコア3~4であった22人中、68%の患者は、PS 0~1に改善した。無増悪生存期間中央値は6.5カ月、生存期間中央値は17.8カ月、1年生存率は63%であった。治療に関連した死亡はみとめられなかった。

研究者らは、以下のように結論した。「本研究は、PSスコアがきわめて不良なEGFR突然変異陽性患者において、イレッサによる初回治療が有益であることを示した初めての報告である。推定余命の短いこのような患者に対して、支持療法以外の標準治療は存在しないため、バイオマーカーとしてEGFR突然変異の検査を行うことが、本患者集団において推奨される」。

コメント:イレッサは、EGFR突然変異陽性、かつPS不良なNSCLC患者に対する初回治療として妥当な選択肢であると考えられる。

参考文献:[1] Inoue A, Kobayashi K, Usui K, et al. First-line gefitinib for patients with advanced non-small cell lung cancer harboring epidermal growth factor receptor mutations without indication for chemotherapy. Journal of Clinical Oncology. 2009; 27: 1394-1400.


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翻訳担当者 近江屋 芽衣子

監修 久保田 馨(胸部腫瘍医/国立がんセンター中央病院)

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