Oncotype DX®大腸癌検査で再発リスクを予測する

キャンサーコンサルタンツ
2009年5月

QUASARチームの研究者らは、Oncotype DX®大腸癌検査がステージⅡ大腸癌患者の再発リスクを正確に予測し、ひいては大腸癌の治療指針の決定に役立つ可能性があると報告した。この試験の詳細は、5月29日~6月2日にフロリダ州オーランドで開催される米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年次総会で発表される予定である。

遺伝子発現解析とは、腫瘍細胞内で活性化している遺伝子のパターンを調べることである。試験は、遺伝子発現が数種類の癌の予後や治療に対する感受性について重要な情報を提供する可能性があることを示唆している。例えば、エストロゲン受容体陽性の初期乳癌女性では、Oncotype DX®乳癌検査が癌再発および化学療法のベネフィットの可能性を予測することが明らかになっている。結果、この検査は初期乳癌の治療指針につけ加えられることになった。当該検査は、患者の癌から採取した検体中の21種類の遺伝子の活性を評価して、当該患者の再発スコアを判定する。再発スコアは0~100の範囲で、スコアが高くなるほど、再発リスクは高くなる。

この研究は現時点で、同様の検査がステージⅡの大腸癌患者に対しても重要な情報を提供する可能性があることを示している。ステージⅡの大腸癌とは、大腸壁の中に浸潤しているがリンパ節転移もしくは遠隔転移のない癌のことである。当該ステージの多くの患者は、手術単独で良好な生存率を得ており、通常の(術後)補助化学療法は現在、ステージⅡ大腸癌には推奨されていない。しかし、癌再発リスクの高いステージⅡの患者には、化学療法を検討すべきであろう。Oncotype DX大腸癌検査(Oncotype DX乳癌検査と同様の遺伝子発現検査)をおこなうことで、より正確に再発の高リスク患者を特定できる可能性がある。

本試験は、NSABP試験のうちステージⅡの大腸癌患者270人、CCF試験のうち手術単独療法の患者765人、その他手術と5-FU+ロイコボリン補助療法を行なった2つの試験のステージⅡ患者516人を対象としている。まず、それら最初の患者群を使って、再発の予測遺伝子を特定した。そして、大規模な前向き試験QUASARにより、遺伝子分析の予測能力を検証した。この4つの開発試験において、患者から761の候補遺伝子を特定した。その761遺伝子のうち再発予測の遺伝子は48、補助化学療法からのベネフィットを予測する遺伝子は66だった。そして、さらなる解析により、7つの(再発)予後遺伝子、6つの(ベネフィットの)予測遺伝子、5つの基準遺伝子(これらはどんな癌にも等しく発現するので、コントロールとして使用される)を特定した。この特定されたサブセットから、研究者らは予後スコア(RS)と予測治療スコア(TS)を別個に開発した。QUASARによる検証試験では、ステージⅡの患者1490人から採取した固定組織で遺伝子試験を実施した。RT-PCRは1490の標本のうち1436で成功した。711人の患者が手術単独療法を受け、725人が術後補助化学療法を受けた。RSは、手術単独療法を受けた患者の無再発生存期間、無病生存期間、全生存期間を正しく予測した。多変量解析によって、この結果は既知の他のリスク因子とは独立していることが証明された。著者らの解析によれば、補助化学療法にはベネフィットが認められたもののTSによるベネフィットの予測の有効性は確認できなかった。

コメント
上記の結果は、18遺伝子によるOncotype DX大腸癌検査がステージⅡ大腸癌の術後の再発リスクを予測し、標準的な危険因子以上の情報を提供することを示している。Oncotype DX乳癌検査およびOncotype DX大腸癌検査を開発したGenomic Health社は、Oncotype DX大腸癌検査を2010年初めにも実用化する予定である。

参考文献:
Kerr D, Gray P, Quirke P, et al. A quantitative multigene RT-PCR assay for prediction of recurrence in stage II colon cancer: Selection of the genes in four large studies and results of the independent, prospectively designed QUASAR validation study. Journal of Clinical Oncology 2009;27:15s, Abstract #4000.


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翻訳担当者 関谷 真美

監修 鵜川 邦夫(消化器内科)

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