2009/04/07号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2009/04/07号◆癌研究ハイライト

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2009/04/07号◆癌研究ハイライト

同号原文

NCI Cancer Bulletin2009年4月07日号(Volume 6 / Number 7)

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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ハイライト

・卵巣癌検診により多くの不要な手術が行われている
・結腸癌の人種間格差はp53遺伝子に関連する
・多発性肺腫瘍は単一細胞に由来する
・アルコール誘発性紅潮は食道癌リスクの警告

卵巣癌検診により多くの不要な手術が行われている

前立腺癌・肺癌・結腸直腸癌・卵巣癌(PLCO)スクリーニング(検診)の新しい結果によると、卵巣癌検診の結果、不要な手術が実施され、早期に疾患を発見できないことが多かった。NCIが実施した臨床試験で、経腟超音波検査またはCA-125(卵巣癌の腫瘍マーカー)血液検査を用いて卵巣癌の徴候を毎年検診を受けていた女性3万4000人について解析した。

検診で陽性となった者の多くが癌ではないことが明らかになった。これらの検査で卵巣癌の徴候が陽性であった女性100人のうち実際に癌であったのはわずか1.6人であると、研究者は推定している。検診プログラムの他の測定では、全4回の検査すべてで癌と判定された件数に対して手術実施数に対する比は19.5:1であった。

55~74歳の女性のグループでは、検診により卵巣摘出術実施率が事実上2倍になった。不要な手術のほとんどが経腟超音波検査を用いたスクリーニング検査によるものであったが、この方法でごく初期の癌が検出されることもあった。しかし、全体として試験で発見された卵巣癌の70%が治療の選択肢が限られる後期(ステージ3以降)の癌であった。

米国予防医療専門委員会(USPSTF)の最新ガイドラインではCA-125および経腟超音波検査による卵巣癌検査を推奨していないが、上記の結果はこれに一致するものであると、Obstetrics & Gynecology誌4月号で研究者らは結論づけた。検診プログラムにより命を救えるかという疑問については、検診を受けていない女性を対象にした試験結果を含めて今後検討される。

「今以上に感度が高く、特異的な検査が必要である。それによって癌を早期に発見でき、より確実な手がかりとなる生物学的マーカーを得られるであろう」と、アラバマ大学バーミンガム校総合がんセンター責任者でありこの試験の責任医師であるDr. Edward Partridge氏は述べた。簡潔なビデオ)でこの所見について考察している。

大腸癌の人種間格差はp53遺伝子に関連する

米国の民族および人種のなかで、アフリカ系アメリカ人は大腸癌の発症率および死亡率が最も高い。この差を説明するために、食事、飲酒、社会経済的要因、身体活動性の違いについて調査した。遺伝的・生物学的な違いも関与している可能性があるため、腫瘍の悪性度および臨床転帰を予測するマーカーを探している研究者もいる。

P53遺伝子は、正常な場合は腫瘍を抑制する働きがあるが、癌細胞では変異を起こしていることが多い。新しい試験では、p53遺伝子が前述のようなマーカーになる可能性を示唆している。Pro72(p53遺伝子の72番目のアミノ酸をコードする配列に遺伝子多型がみられ、Pro72ではプロリンをコードする)と呼ばれる遺伝子型が白人に比べてアフリカ系アメリカ人に多かった。また他の遺伝子型に比較してPro72は、p53の変異数の増加、腫瘍の高い進行度、短い生存期間との関連性が大きかった。

「この結果が確認されれば、Pro72が予後マーカーとなり、いずれp53遺伝子のこの遺伝子型を有す人々に対してテーラーメード治療ができるようになるだろう」と、アラバマ大学バーミングハム校のDr. Upender Manne氏らはClinical Cancer Research誌4月1日号で述べた。

試験にはアフリカ系アメリカ人137人、白人236人が参加した。両グループともp53に変異がある割合は同程度であったが、2つの遺伝子のうち両方ともPro72変異型を有していたのは白人7%に対しアフリカ系アメリカ人では17%であった。この変異を有するアフリカ系アメリカ人では結腸直腸癌による死亡率が2倍以上に上昇した。白人では変異の存在が結腸直腸癌による死亡率に影響を及ぼすことはなかった。

「Pro72変異型を受け継いでいる結腸直腸癌(大腸癌)患者集団で、p53タンパク質が壊れやすいことが人種間格差をおこす原因かもしれない」と、研究者らは結論づけた。

多発性肺腫瘍は単一細胞に由来する

一部の肺癌患者で、顕微鏡的に類似する複数の腫瘍が肺の数ヵ所で同時に、あるいは異なる時期に(連続して)発生することがある。これらの多発性腫瘍は単一の悪性細胞に由来するのか、または肺組織に対する様々な発癌作用(たばこの煙など)により別々に発生するのかは明らかになっていない。

インディアナ大学の研究者らが主導した新しい試験結果がJournal of the National Cancer Institute誌4月7日号電子版に公表された。ここでは、これらの癌のほとんどが単一細胞に由来し、そのため進行癌に分類されることを示唆する遺伝的証拠を提示している。

研究者らは多発性肺癌患者30人(女性23人男性7人)の計70の別々の腫瘍のホルマリン固定パラフィン包埋組織標本を収集し、異なる3種類の遺伝的変化―いくつかの染色体上の遺伝物質の欠失、TP53と呼ばれる遺伝子変異、女性の標本のX染色体上のエピジェネティックな変化(※遺伝子の塩基配列以外の修飾などにより生じる変化)―について分析した。

30人中26人の多発性腫瘍間で、完全に一致した、あるいは同一の遺伝物質の欠失が認められた。TP53変異の調査が可能であった18人中10人に変異が同定でき、そのうちの8人においては多発性腫瘍間で同一の変異が示された。エピジェネティック分析ができた女性19人中15人で多発性腫瘍間の変化パターンが一致した。

3種類の分析結果を合わせると、「30人中23人(77%)で同一の遺伝的変化を示し、これらの離れた腫瘍が別々の原発性肺腫瘍ではなく、単一クローンに由来すると考えられる。この所見は多発性肺癌を別個の原発性癌ではなく進行癌とする現在の分類法、および進行癌患者向けの治療方法を支持する」と、著者らは結論づけた。

アルコール誘発性紅潮は食道癌リスクの警告

「アジア人の紅潮」は、アルコールを効率よく代謝できない日本人、中国人、朝鮮人に多くみられる。これはアルコール飲料に対する反応であり、アセトアルデヒドの生成による。これは食道癌のリスクとも密接に関連しており、飲酒後紅潮する人はしない人に比べて疾患の発生リスクが著しく高い。

PLoS Medicine誌3月号で、国立アルコール乱用アルコール依存症研究所のDr. Philip Brooks氏、およびデューク大学と国立病院機構久里浜アルコ-ル症センターの共同研究者は「紅潮は容易にみわけられる上、癌リスクと密接に関連しているため、一次医療現場での通常の癌スクリーニング検査にすべきだ」と述べている。

研究者らは、東アジア人の36%、全世界の約5億4000万人の人々において、エタノールの代謝産物アセトアルデヒドを酢酸に分解する酵素であるアルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)の遺伝子欠損があることに注目し、アセトアルデヒドは発癌性が強いと説明した。

2本の染色体上のALDH2遺伝子の両方に欠損のある人は通常その作用が強すぎるため多くのアルコールを飲むことはできない。しかし片方の遺伝子のみに欠損のある人は耐性ができ、このような人では気道および上部消化管に癌が発生するリスクが約12倍高いことがプロスペクティブ試験で示されている。さらに、特に喫煙者では唾液中にアセトアルデヒドが残存するため、癌のリスクが一層高い。

これらの人々の間でのリスク増加を示す社会的傾向を指摘して著者らは、「医師はALDH2欠損者の飲酒による食道癌のリスクに注意する必要があり、東アジア出身者ではALDH2欠損か否かは単にアルコールにより紅潮したことがあるかを尋ねるだけでわかる」と述べた。

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榎 真由 訳

小宮 武文(胸部内科医/NCI研究員・ハワード大学病院)監修

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