2009/05/19号◆スポットライト「注目される比較有効性試験とその賛否」 | 海外がん医療情報リファレンス

2009/05/19号◆スポットライト「注目される比較有効性試験とその賛否」

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2009/05/19号◆スポットライト「注目される比較有効性試験とその賛否」

同号原文 

NCI Cancer Bulletin2009年05月19日号(Volume 6 / Number 10)

 

日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中~

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スポットライト

注目される比較有効性試験とその賛否

「パラシュートなしで飛行機から飛びおりるのが愚かなことだと証明するランダム化臨床試験など行われない」というジョークがある。しかしながら、ランダム化臨床試験は、臨床医にとって、たとえば進行した大腸癌の治療や高血圧の管理などの医療ケアを決定する上で患者との話し合いに非常に重要なものである。

残念なことに、米国で提供されている治療や医療ケアの多く(一部の評価によると、すべての医療ケアのうち半数近く)は、その有効性を支持するエビデンスの大きな蓄積があるわけではないと、多くの医療専門家は強調する。彼らによると、その結果は、不均衡であったり、地域性にて大きく異なる、または、高額な治療となるなどといった質の低い医療の場合もあるという。

こうしたジレンマに対する一つの改善方法が、中でも医学研究所(IOM)によって推奨された比較有効性研究(CER)である。議論もあるが、興味深いことに、最近発効されたAmerican Recovery and Reinvestment Act(ARRA:全米復興再投資法)において得られた11億円(約3分の1はNIHに配分された)がCERに注ぎ込まれた。(下表参照)

活発になるCER活動
ARRAよりCERに割り当てられた11億ドルは3ヵ所に分割された:•米国医療研究・品質調査機構(AHRQ)に3億ドル
•米国衛生研究所(NIH)に4億ドル
•その他の米国保健社会福祉省(HHS)の管轄機関に4億ドル

Brown氏によると、NCIによるCER助成については、来月以降に発表される。 ARRA法案への応募条件として、IOMは、HHSが優先的にCER助成を行う分野に関する報告書および推薦状を作成するよう求めている。IOMの報告書の締め切りは6月30日である。

実際に、ちょうど先週、Friends of Cancer Research(フレンズ・オブ・キャンサー・リサーチ)によって、癌研究における指導者会議が招集され、米国におけるCERの「新たなパラダイム」を求めた報告書を発表し、どのように、なぜそれが行われるべきかといった症例研究としての癌医療を提案している。

一方、NIHの研究所は、ARRAが提供するCER助成への応募が殺到していることを報告している。NCI癌制御・人口学部門の医療サービス・経済学支部長であるDr. Martin Brown氏によると、NCIはまた、CERのためのインフラ整備の強化を予定しており、「このことは、この分野を大幅に前進させるものとなる」という。

CER(比較有効性研究)とは何か?

CERとは、主に、特定の患者グループにおける一定の状態を治療または管理するためのさまざまな選択肢の影響を評価するものと定義されている。理由として、臨床試験およびその他の試験は適切なケアを評価するのに役立つ反面、すべての試験には制限(マイナス面)があると多くの研究者らは認めているためである。

Brown氏は次のように述べる。「医療には多様なアプローチがあり、まさにたくさんのことを行っています。そして、しばしばどれが最善であるのかわからないといったことに遭遇します」例えば、進行癌患者のケアでは、こうした患者に「あらゆる治療や戦略がとられますが、われわれは、行われているケアに対して適切な舵取りを持っていません。」

シアトルにあるGroup Health Center for Health Studies(健康に関する試験のための集団医療センター)の Dr. Diana Buist氏は、理想的には、比較有効性試験に、「実世界」のデータを調整して組み入れ入れることだという。というのも、ほとんどの臨床試験はしっかり管理され、均一な患者集団であるため、地域社会で治療を受けている大勢の患者を代表するものではないことが往々にしてある所以である。

NCI支援の乳癌サーベイランス・コンソーシアム試験のもとでは、Buist氏と共同研究者らは、地域のクリニックによる臨床試験を含めて、乳癌検診や診断に用いられる画像検査の比較有効性試験を行っている。「実地臨床における臨床試験は、多種多様な医療行為が存在するー患者、提供者、設備/診療所レベルにおいてーこれらが、画像の結果に影響を与える。私たちは、多様性を減少させ、検診方法を最適にする地域医療における最も効率のよい乳癌検診を提供する方法を試みつつあります」と、同氏は言う。

通常の臨床試験とは異なり、比較有効性試験は、必ずしも二つの治療、医療手技に対してクリアな優劣の線引きを目的としているわけではないと、マサチューセッツ総合病院、臨床・経済学レビュー研究所の(ICER)Dr. Steven Pearson氏は述べる。むしろ、これらの試験では有効性の全体像を見る場合も多い。

たとえば昨年、ICERは、標準的な光学的大腸内視鏡とCT大腸画像(CTコロノグラフィーあるいは”仮想“大腸内視鏡)の比較有効性試験の結果を発表したが、この評価は、一定サイズのポリープを検出するという、大腸内視鏡の臨床試験における「有用性」の最終評価項目だけを目的としたものではなかった。この試験では、ポリープの検出に加え、むしろ死亡率、患者嗜好、検査料金および手技のリスクなどの各要因に関するデータが調査された。この最終報告は異なったシナリオによってCT大腸画像を格付けした。つまり、CT大腸画像検査に対するいくつかのあり得る保険償還レートによって、全く検診をしないグループおよび標準内視鏡検査のグループに対する比較が行われたのである。

有効性を評価するため、こうしたより発展的なアプローチがどうしても必要だとPearson氏は言う。「毎年、18,000件の臨床試験が行われ、それでもまだ確固たるエビデンスは十分得られないのです。」

全員を納得させることはできない

CERを支持する人々は多いが、医療制度の別の方面からは懸念も持ち上がっている。例えば、先月行われたホワイトハウスによる医療改正会議で、ファイザー社CEOであるJeffrey Kindler氏が、比較有効性試験の結果がそのまま保険補償内容の決定に反映されるのかどうかを問うた。

一部ではあるが、医療保険会社およびその加入者がCERを補償内容の決定に用いていることをハーバード大学医学部医療政策課主任で、メディケア(高齢者向け公的医療保険)、ブルークロス、ブルーシールドの医療保障諮問委員会のメンバーであるDr. Barbara McNeil氏は説明した。

一部の腫瘍医も懸念を抱いている。「われわれは、より多くのデータを歓迎し、常に患者を治療するよりよい方法を模索しています」と、Community Oncology Alliance代表であり、モンタナ州で開業する腫瘍医のDr. Patrick Cobb氏は述べるが、CERの結果が患者の治療選択肢を狭めてしまうのではないかとも危惧している。「ある治療が、ほかの患者ではそうでなくても、その患者に対して、よりよい治療である場合があります。」

一方、Brown氏の意見とは反対に、CERが(テーラーメイドでなく)“規定サイズ”の医療に繋がるのではないかというのは誤った概念である。「様々な方向から不均一性の問題を見ていくことを排除するといった性質は本来CERにはない。研究責任者や助成金授与者らはこうした問題に関して専門家に報告しており、それは、NIHがCERに関与していくことの妥当性を認める十分な理由となるであろう。

—Carmen Phillips

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野中 希 訳

古瀬 清行(胸部内科医/JMTO:日本・多国間臨床試験機構 顧問)監修

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