FDAが大腸がんにツカチニブ+トラスツズマブ併用療法を迅速承認

2023年1月19日、米国食品医薬品局(FDA)は、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカンベースの化学療法後に進行したRAS遺伝子野生型かつHER2陽性の切除不能または転移性の大腸がんに対し、ツカチニブ[tucatinib](販売名:TUKYSA、Seagen Inc.社)とトラスツズマブの併用療法を迅速承認した。

有効性は、非盲検多施設共同試験であるMOUNTAINEER試験(NCT03043313)の患者84人において評価された。患者は、HER2陽性、RAS遺伝子野生型、切除不能または転移性の大腸がんを有し、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、イリノテカンおよび抗血管内皮増殖因子(VEGF)モノクローナル抗体(mAb)による治療歴があることが条件とされた。ミスマッチ修復機能欠損(dMMR)タンパク質、または高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)の腫瘍を有する患者は、抗プログラム細胞死タンパク質-1 mAbの投与も受けていることが条件とされた。HER2標的療法による治療歴のある患者は除外された。

患者には、ツカチニブ300 mgを1日2回経口投与し、トラスツズマブ(または米国以外で承認されたトラスツズマブ製剤)を第1サイクルの1日目に負荷用量として8 mg/kgを静脈内投与、その後の21日間の各サイクルの1日目にトラスツズマブ6 mg/kgの維持用量を投与した。患者は、病勢進行または許容できない毒性が現れるまで治療を継続した。

有効性主要評価項目は、盲検下独立中央判定(RECIST第 1.1版)による奏効率(ORR)と奏効期間(DOR)であった。ORRは38%(95%CI:28、49)、DORの中央値は12.4カ月(95%CI:8.5、20.5)であった。

最も多くみられた(20%以上)有害事象は、下痢、疲労、発疹、嘔気、腹痛、輸液関連反応、発熱であった。最も多くみられた臨床検査値異常(20%以上)は、クレアチニン増加、血糖増加、ALT増加、貧血、AST増加、ビリルビン増加、アルカリフォスファターゼ増加、リンパ球減少、アルブミン減少、白血球減少およびナトリウム減少であった。

ツカチニブの推奨用量は、トラスツズマブとの併用で300 mg 1日2回経口投与であり、疾患進行または許容できない毒性が認められるまで継続する。

Tukysaの全処方情報はこちらを参照。



監訳 中村 能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院)

翻訳担当者 星野 恭子

原文を見る

原文掲載日 2023/01/19


大腸がんに関連する記事

【AACR2025】BRAF阻害薬配合の塗り薬が、大腸がんのEGFR阻害薬治療によるざ瘡様皮疹に効果の画像

【AACR2025】BRAF阻害薬配合の塗り薬が、大腸がんのEGFR阻害薬治療によるざ瘡様皮疹に効果

大腸がん患者に生じたざ瘡様皮疹(ざそうようひしん)に対し、試験中の外用BRAF阻害薬LUT014ジェルを使用したところ、プラセボジェルを使用した場合と比較して皮疹の改善がより多くみられ...
【AACR2025】リキッドバイオプシー検査で、切除可能大腸がんの再発を画像診断前に検出の画像

【AACR2025】リキッドバイオプシー検査で、切除可能大腸がんの再発を画像診断前に検出

循環腫瘍DNA(ctDNA)ベースの超高感度リキッドバイオプシー検査により、大腸がん患者において、画像診断前に再発の徴候が検出され、手術後1カ月以内に予後値が示された。このVICTOR...
若年層のがん罹患率増加の理由を追究の画像

若年層のがん罹患率増加の理由を追究

もしかしたら、ディズニーワールドにいた時にそれはすでにあったのかもしれない。冬の終わりの朝、ビジネススーツ姿のテディベアを前面にあしらったスウェット・パーカーとジーンズという服装でオフ...
FDA承認により、一部の進行大腸がんの初回治療が変わる可能性の画像

FDA承認により、一部の進行大腸がんの初回治療が変わる可能性

米国食品医薬品局(FDA)は、一部の進行大腸がん患者に対する初回治療として、2種類の免疫療法薬の併用を承認した。この承認は、腫瘍がMSI-HまたはdMMRに分類される患者に対するニボル...