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T-DM1治療歴ある患者において、T-DXd(エンハーツ)は化学療法レジメンより優れる

サンアントニオ乳がん学会(SABCS2022)

トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1、販売名:カドサイラ)による治療を受けたHER2陽性、転移性乳がん患者の三次治療において、カペシタビンを含むレジメンと比較して、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、販売名:エンハーツ)は高い奏効率と長い生存期間をもたらすとのDESTINY- Breast02第3相試験の結果が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(2022年12月6~10日)で発表された

T-DXdは、HER2標的抗体トラスツズマブを用いてHER2発現細胞を選択し、細胞傷害性ペイロードを届ける抗体薬物複合体である。T-DXdは、第2相単群試験DESTINY-Breast01において、同じくHER2標的抗体薬物複合体であるT-DM1治療を受けたHER2陽性、転移性乳がんの三次治療として臨床効果を示した。これらの結果により、T-DXdは、2種類以上のHER2標的治療薬で治療を受けた転移性または切除不能乳がんに対する三次治療として2019年に迅速承認された。

「DESTINY-Breast01はT-DXdをこの集団に対する新しい治療法として確立しましたが、規模が小さく、単一群の第2相試験でした」と、イェールがんセンターの臨床研究担当副所長兼臨床研究主任のIan Krop医学博士は述べる。「DESTINY-Breast02試験は、DESTINY-Breast01試験の確認試験として設計され、T-DM1による治療歴のある患者においてT-DXdと医師選択治療(TPC)を比較評価しました」。

「本研究では、この患者集団におけるT-DXdの良好なリスク対効果を確認したのみならず、抗体薬物複合体T-DM1ですでにがんが進行した患者において、別の抗体薬物複合体T-DXdの効果を評価したことが重要です」とKrop医学博士は指摘する。「これは、この重要な問題を問うはじめてのランダム化試験です」。

DESTINY-Breast02試験には、T-DM1治療中または治療後に転移性乳がんが進行した患者608人が登録した。患者はT-DXdまたはTPC(カペシタビンとトラスツズマブまたはラパチニブの併用療法)のいずれかを受けるように2対1に無作為に割り当てられた。

T-DXdを投与された患者のうち、69.7%が客観的奏効を示したのに対し、TPCを投与された患者では29.2%であった。また、T-DXd治療を受けた患者は、TPC治療を受けた患者よりも64%病勢進行が少なく、無増悪生存期間中央値はT-DXd群で17.8カ月、TPC群で6.9カ月であった。また、全生存期間もT-DXd群では39.2カ月、TPC群では26.5カ月と、T-DXdで有意に延長した。

T-DXdを投与された患者における有害事象は先行研究と一致している、とKrop医学博士は指摘する。T-DXdに関連する間質性肺疾患は、この治療を受けた患者の10.4%に認められ、そのほとんどはグレード1または2だったが、2例のグレード5の間質性肺疾患が報告されている。

「DESTINY-Breast02の結果は、DESTINY-Breast01の知見を裏付けるものであり、T-DM1で前治療を受けたHER2陽性の転移性乳がんにおけるT-DXdの高い有効性を実証しました」と、Krop医学博士は述べる。「さらに、これらの知見を発展させ、この患者集団においてT-DXdが高い効果を持つだけでなく、従来の化学療法レジメンよりも優れていることを実証しています」。

Krop医学博士によれば、フォローアップ解析により本試験の患者報告アウトカムを評価でき、さらに試験を重ねて、中枢神経系への転移を有する患者における本治療の有害事象、有効性および安全性を検討することが可能である。現在進行中の試験では、HER2陽性の転移性乳がんおよび早期乳がんの一次治療としてのT-DXdの評価も行われている。

本試験の制限事項として、対照群がカペシタビンベースの治療に限定されていたため、T-DXdを他の化学療法剤を含む治療レジメンと直接比較することができなかったことがある。さらに、中枢神経系への進行性転移を有する患者は本試験の対象外であったことも制限のひとつである。

DESTINY-Breast02 試験は、第一三共がアストラゼネカと共同で企画し、資金を提供した。Krop医学博士は、アストラゼネカ、第一三共、Genentech/Roche、Macrogenics、およびファイザーから所属機関に資金提供を受け、アストラゼネカ、Bristol Myers Squibb、第一三共、Genentech/Roche、MacroGenics、Seattle Genetics、および大鵬薬品から顧問料を受け取り、アストラゼネカから謝礼金を受け取っている。Krop医学博士は、メルクとノバルティスのデータ安全性監視委員会または諮問委員会に参加しており、彼の配偶者はPureTech Healthの指導的地位にあり株式を所有している。

 

監訳:辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター) 

翻訳担当者奥山浩子

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