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HER2陽性転移性乳がんにエンハーツ(T-DXd)はT-DM1よりも全生存期間を延長

【サンアントニオ乳がん学会(SABCS2022)】

トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、販売名:エンハーツ)による二次治療は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1、販売名:カドサイラ)と比較して、HER2陽性転移性乳がん患者の全生存期間を有意に延長したとのDESTINY-Breast03第3相臨床試験の最新結果が、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS、2022年12月6~10日)で発表された。

「HER2陽性転移性乳がん患者のほとんどが、一次治療で病状が進行し二次治療への移行が必要となります」と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校デヴィッド・ゲフィン医学部およびジョンソン総合がんセンターの教授であるSara Hurvitz医師は述べる。

抗体薬物複合体であるT-DXdとT-DM1は、本患者集団に対する二次治療薬として承認されている。どちらの治療薬もトラスツズマブを用い、HER2発現細胞を見つけ出し細胞傷害性薬剤を送り込む。T-DXdの場合、細胞傷害性薬剤ペイロードがトポイソメラーゼ(DNAの代謝に関わる酵素)を阻害することにより細胞死を誘導する。T-DM1に結合された薬剤は、微小管重合を阻害し細胞を死滅させる。

DESTINY-Breast03試験では、一次治療中または治療後に進行したHER2陽性転移性乳がん患者を対象に、T-DXdとT-DM1の有効性と安全性を比較した。以前発表された試験の中間結果で、T-DXdで治療された患者は、T-DM1で治療された患者と比べ無増悪生存期間(PFS)が有意に長いことが示されている。これらの結果から、本患者集団に対する二次治療薬としてT-DXdが承認された。しかしながら、最初の中間解析時点では、全生存期間のデータに達していなかった。

「PFSが長いことは重要ですが、有効性を評価するうえでゴールドスタンダードとされるのは全生存期間です」と、Hurvitz医師は述べる。

Hurvitz医師はプレゼンテーションで、これまでに報告されていない本試験の全生存期間のデータと最新のPFSおよび安全性に関するデータを発表した。試験に登録された524人の患者のうち、261人がT-DXd、263人がT-DM1治療を受けた。追跡期間の中央値は、T-DXd群で28.4カ月、T-DM1群で26.5カ月であった。

最新のデータによると、T-DXdで治療された患者は、T-DM1で治療された患者よりも死亡リスクが36%低く、統計学的に有意な改善がみられた。さらに、T-DXdで治療された患者の全生存率は有意に高く、12カ月後にT-DM1群の患者の86%が生存していたのに対しT-DXd群の患者は94.1%が生存していた。24カ月後の全生存率は、T-DXd群では77.4%、T-DM1群では69.9%であった。

最新のPFSに関するデータも引き続きT-DXdを支持しており、Hurvitz医師は初めて中央値を報告した。T-DXdで治療された患者のPFS中央値は28.8カ月で、T-DM1で治療された患者では6.8カ月であった。客観的奏効率は、T-DXd治療を受けた患者で78.5%、T-DM1治療を受けた患者で35%であった。さらに、T-DXd群の患者の21.1%が完全奏効したのに対し、T-DM1群では9.5%であった。

グレード3以上の治療関連有害事象は、T-DXd群の患者の56.4%、T-DM1群の患者の51.7%に発現した。薬剤に関連した間質性肺疾患または肺炎は、T-DXd群の患者の15.2%、T-DM1群の患者の3.1%に発現した。Hurvitz医師は、間質性肺疾患と肺炎の新規症例の重症度は軽度または中等度であったと述べた。

「今回の解析結果は、前治療で進行したHER2陽性転移性乳がん患者におけるT-DXdによる顕著な全生存期間の延長と継続的なPFSの改善を示し、T-DM1よりもT-DXdを二次治療に用いることをさらに後押ししています」と、Hurvitz医師は述べる。また、「今回の全生存期間の解析により、T-DXdのPFS改善効果が統計学的に有意な全生存期間の延長につながり、患者にとって大変有益となることが確認されました。

さらに、T-DXdは管理可能で忍容性のある安全性プロファイルを示し続けており、治療関連の有害事象の発生率は治療群間で同程度でした」と、Hurvitz医師は付け加えた。

今後のDESTINY-Breast03の解析では、脳に転移のある患者におけるT-DXdの有効性を調査し、反応の予測マーカーを探索するであろうとHurvitz医師は述べる。現在進行中の研究ではHER2陽性転移性乳がん患者に対する一次治療としてのT-DXdの有効性と安全性を調査している。

本研究の制限のひとつとして、北米およびヨーロッパの患者と比較しアジアの患者が不均衡に登録されていることがあげられる。その他の制限は、この分析時点で全生存期間の中央値に達していないことである。

この試験は、第一三共社およびアストラゼネカ社の支援を受けている。Hurvitz医師は、Ideal Implantの株主と結婚しており、第一三共から謝礼金を受けている。Hurvitz医師の所属する団体は以下の各社から資金提供を受けた。Ambrx、アムジェン、アストラゼネカ、Arvinas、バイエル、第一三共、CytomX Therapeutics、Dantari、Dignitana、G1セラピューティクス、ジェネンテック/ロシュ、ギリアド・サイエンシズ、グラクソ・スミスクライン(GSK)、Immunomedics、イーライリリー・アンド・カンパニー、マクロジェニクス、ノバルティス、ファイザー、OBI Pharma、Phoenix Molecular Designs、Orinoco Pharmaceuticals、Pieris Pharmaceuticals、プーマ・バイオテクノロジー、Radius Health、Samumed、サノフィ、シアトルジェネティクス、ザイムワークス。



監訳:下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター乳腺腫瘍内科)

翻訳担当者武藤希

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