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ホルモン受容体陽性/HER2陰性乳がんにカミゼストラントはフルベストラントより有効

サンアントニオ乳がん学会2022

次世代の選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるカミゼスラントは、フルベストラント(販売名:ファスロデックス)と比較して、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がん患者の無増悪生存期間を改善することが、サンアントニオ乳がんシンポジウム(2022年12月6~10日)で発表された第2相SERENA-2試験の結果により明らかになった。

ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんは、腫瘍の増殖を促すエストロゲン受容体(ER)の活性を阻害する薬剤で治療されることが多い。一般的な治療としては、乳房組織のERを阻害する選択的ERモジュレーター(SERM)、エストロゲンの産生を阻害するアロマターゼ阻害剤、ERに拮抗し不安定にしてこれを阻害・分解する選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)がある。

しかし、ほとんどの腫瘍は、最終的には現行のホルモン療法に対する耐性を獲得し、ER遺伝子であるESR1が変異する。フルベストラントなどのSERDは、このような場合にERの活性を阻害することができる。

本研究を発表したバルセロナ(スペイン)のバルデブロン大学病院腫瘍内科およびバルデブロン腫瘍学研究所乳がんグループの指導医であるMafalda Oliveira医学博士は、「ESR1が変異した腫瘍はERが構成的に活性化し予後が悪くなるので、新しい治療オプションが必要です」と述べる。「次世代の経口SERDは、構成的に活性化されたERによる、腫瘍のESR1変異において特に重要な役割をする増殖シグナルを遮断する可能性があります」。

フルベストラントは、現在、乳がん治療薬として米国食品医薬品局(FDA)から承認されている唯一の選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)で、医師の診察室で注射によって投与しなければならないため、研究者は、より新しく、投与しやすく、かつ有効なSERDを開発しようと取り組んでいる。例えば、カミゼストラントは、毎日錠剤として服用する。

Oliveira医学博士らは第2相SERENA-2試験を実施し、ER陽性乳がんに対してカミゼストラントとフルベストラントのどちらがより有効かを検討した。ホルモン療法の前治療が1種類以下かつ化学療法の前治療が1種類以下の患者を、フルベストラント、または1日あたり75mg、150mg、もしくは300mgのいずれかのカミゼストラントを投与する群に無作為に割り付けた。300mg群は、毒性に関する懸念がなかったものの、戦略的な理由により早期に中止された。

カミゼストラント75mg群、同150mg群、フルベストラント群にはそれぞれ74人、73人、73人の患者が参加した。全体として、カミゼストラントはフルベストラントと比較して疾患の進行または死亡のリスクを75mg群で42%、150mg群で33%、有意に減少させた。カミゼストラントを75mgまたは150mg投与された群の無増悪生存期間(PFS)の中央値はそれぞれ7.2カ月、7.7カ月だったのに対し、フルベストラント群では3.7カ月だった。

ESR1遺伝子変異を有する患者において、カミゼストラント75mg群では67%(PFS中央値6.3カ月 vs. 2.2カ月)、同150mg群では45%(PFS中央値9.2カ月 vs. 2.2カ月)、疾患進行または死亡リスクが減少した。ESR1変異が検出されない患者においても、疾患進行または死亡のリスクの減少がみとめられた(75mg群で22%、150mg群で24%減少)。

カミゼストラントは、他の高リスク患者グループにおいてもフルベストラントより効果が高いことを示した。肺転移や肝転移がある患者では、フルベストラントと比較して疾患進行または死亡のリスクが75mg投与で57%、150mg投与で45%減少した。CDK4/6阻害剤による治療歴のある患者では、疾患進行または死亡のリスクが75mg投与で51%、150mg投与で32%減少した。

グレード3以上の有害事象は、75mg/日投与群で12.2%、150mg/日投与群で21.9%、フルベストラント群で13.7%の患者に発生した。

Oliveira医学博士らは、以上のデータを2件の第3相臨床試験(2件ともCDK4/6阻害剤を併用)で追跡している。1つは初回治療におけるカミゼスラントとアロマターゼ阻害剤の効果を比較する試験、もう1つは循環腫瘍DNAにESR1変異が検出された場合に治療を進めてカミゼスラントを使用することの有効性を検討する試験である。

「本試験の結果は、ホルモン受容体陽性乳がんへのカミゼストラントの使用を支持するものです」とOliveira医学博士は述べる。「注目に値する結果であり、これにより乳がんのための経口SERDの開発に再び火がつくかもしれません」。

この研究の限界は、第2相試験ではよく見られるが、サンプルサイズが比較的小さいことである。

この研究は、アストラゼネカ社から資金提供を受けた。Oliveira医学博士は、アストラゼネカ、ガーダントヘルス、ロシュ、MSD、ファイザー、シーゲン、iTeos Therapeutics、エーザイ、ノバルティス、Relay Therapeutics、およびギリアドの各社から個人的に資金提供を受けた。

 

監訳:小坂泰二郎(乳腺外科・化学療法/医療社会法人石川記念会 HITO病院)

翻訳担当者奥山浩子

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