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妊娠を希望してホルモン療法を中断した乳がん患者の短期再発率

患者の多くは妊娠可能で60%以上が出産

【サンアントニオ】妊娠を希望してホルモン療法を一時休止した乳がん患者の短期的な乳がん再発率は、妊娠のために治療を休止しなかった女性と同程度であり、多くが妊娠して健康な赤ちゃんを出産したことが、サンアントニオ乳がんシンポジウム(2022年12月6日〜10日開催)で発表されたPOSITIVE試験の結果により明らかになった。

乳がんが最も多く診断されるのは中高年の女性だが、米国では、毎年新たに診断される患者の約5%が40歳以下である。「若い患者には生殖能力などの特有の懸念事項がある」と、本研究の筆頭著者でダナファーバーがん研究所腫瘍内科副部長およびハーバード大学医学部内科教授のAnn Partridge医師、公衆衛生学修士は述べる。

「40歳以下で乳がんと診断された患者の40〜60%は、将来の生殖能力について心配します。母親になる決意をする前に罹患した場合は特にそうです 」。

国際乳がん研究グループ(International Breast Cancer Study Group)を代表してこの国際研究の責任者を務める共著者のOlivia Pagani医師は、若年乳がん患者の約5〜10%しか妊娠に前向きではないと述べた。がん罹患後の妊娠が可能かつ安全であることを示した後ろ向き試験がある一方で、多くの女性が乳がん治療によって妊娠が困難になること、または妊娠によってがんが悪化することを心配している、と、Pagani医師(Swiss Group for Clinical Cancer Research、ジュネーブ大学およびルガーノ大学、およびEuropean School of Oncology のメンバー)は説明する。

ホルモン受容体(HR)陽性乳がん早期の若い女性は、卵巣機能抑制剤、アロマターゼ阻害剤、選択的エストロゲン受容体モジュレーターなどの内分泌療法で治療されることが多い。研究者らは、妊娠を目指して内分泌療法を休止することの影響を調べるため、単群のPOSITIVE試験(Pregnancy Outcome and Safety of Interrupting Therapy for Women with Endocrine Responsive Breast Cancer)を設計した。2014年12月から2019年12月にかけて、妊娠を希望する42歳以下の女性518人が試験に登録し、約2年間ホルモン療法を休止して妊娠を目指すことを選択した。患者は、治療を休止する前に、18カ月から30カ月の術後ホルモン療法を受けていた。

本試験には、20カ国116施設から患者が登録し、23%が北米、61%が欧州、16%がアジア太平洋および中東からだった。データ安全性モニタリング委員会により、3回の安全性中間解析が行われた。平均追跡期間である約3年の間に46人以上に乳がん再発が見られた場合、試験は中断されることになっていたが、その閾値には達しなかった。

追跡期間中央値41カ月の時点で、44人の乳がんが再発した。3年再発率は8.9%で、閉経前女性に対する術後ホルモン療法を検討したSOFT/TEXT試験の外部対照群における9.2%とほぼ同じであった。

妊娠状況を追跡調査した497人の女性のうち、368人(74%)が少なくとも1回妊娠し、317人(63.8%)が少なくとも1回生児を出産し、計365人が出生した。これらの妊娠率と出産率は、一般人と同等かそれ以上であった、とPagani医師は述べた。

試験参加者は、妊娠を試みた後または妊娠に成功した後、ホルモン療法を再開することが強く推奨された。現在までに、76.3%が治療を再開している。

Partridge医師とPagani医師は、本試験は、子どもを持ちたいと願う若い乳がん患者にとって心強い指針となると述べた。そして、このような決断はすべて、医療の専門家とよく相談しながら行うべきである、と指摘した。

「POSITIVE試験は、妊娠を希望しそのためにホルモン療法を中断している、若年の早期HR陽性乳がん患者を支える重要なデータを提供します」と、Alliance for Clinical Trials in Oncologyを代表して北米で本試験を主導したPartridge医師は述べた。

「乳がん後の妊娠は非常に個人的な決断であり、理想的には、妊娠に対する願望だけでなく、基本的な生殖能力、以前および現在の治療、生殖能力をどこまで温存するかの戦略、そして内在するがん再発のリスクも考慮に入れて決断する必要があります」。

研究者らは、長期にわたる再発リスクを評価するために、参加者の追跡調査を続けている。研究者らは、HR陽性乳がんは最初の診断から何年も経ってから再発する可能性があるため、これまでの追跡期間が短いことがPOSITIVE試験の限界であると指摘している。

本試験は、ETOP-IBCSGパートナーズ財団の一部門である国際乳がん研究グループ(IBCSG)と、北米のAlliance for Clinical Trials in Oncologyが、Breast International Group(BIG)と共同で出資し実施している。この研究は、以下のとおり、世界中から資金提供を受けた。IBCSG、フロンティア科学技術研究財団南ヨーロッパ、BIG against breast cancer and Baillet Latour Fund、ピンクリボン・スイス、スイスがん連盟、サンサルバトーレ財団、Rising Tide Foundation for Clinical Research、スイスがん研究グループ、東スイス臨床がん研究財団、Gateway for Cancer Research、乳がん研究財団、ロシュ・ダイアグノスティックス・インターナショナル・リミテッド、スイスがん財団、ピアジョー家族財団、Gruppo Giovani Pazienti “Anna dai Capelli Corti” 、Verein Bärgüf、シュヴァイザー フラウエンラフ、C&A、オランダがん協会、ノルウェー乳がん協会、ピンクリボン ノルウェー、ELGC K. K.I.A. K. Japan、ピンクリング・ジャパン、韓国乳がん財団、Yong Seop Leeその他の個人献金者。北米では、米国国立がん研究所、カナダがん協会、カナダ・イノベーション財団、RETHINK Breast Cancer、およびギルソン・ファミリー財団から資金提供があった。著者は利益相反がないことを宣言している。

 

監訳:尾崎由記範(呼吸器内科/University of Greenwich, Queen Elizabeth Hospital)

翻訳担当者奥山浩子

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