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一部の早期乳がんで放射線治療の期間短縮は有効かつ安全

一部の早期乳がん患者にとって、期間を短縮した放射線治療は、より長期の標準的な放射線治療と同程度に安全かつ有効であることが、新たな臨床試験の結果から示されている。

第3相臨床試験では、腫瘍を切除する手術(ランペクトミー)を受け、手術部位で再発リスクが比較的高い早期乳がんの女性を組み入れた。これらの女性は、毎日の放射線治療に必要とする期間を、約4~6週間から約3週間に安全に短縮することができたことが試験によって明らかになった。

このように治療期間が短くなることで、放射線治療の患者負担が少なくなると専門家は述べた。

高リスクの早期乳がん患者の場合、推奨される治療法として、腫瘍が存在していた乳房の箇所に4~8日間追加で放射線照射を行うことがある。従来は、3~5週間の放射線照射後に、「追加照射」(乳房内のがんの再発リスクを減少させる役割がある)を、平日のみ連日で乳房全体に照射していた。

しかし、この試験で、3週間の全乳房照射期間に追加照射を行うことは、2つの治療を順次に行うのと同じくらい安全かつ有効であることを見出した。

「(ランペクトミー後)5年と7年の時点での再発率は極めて低く、2つの治療法の間に差異は認められなかった」と、ミシガン州ポンティアックにあるGenesisCareの研究主任であるFrank Vicini医学は述べた。Vicini医師は、10月24日にテキサス州サンアントニオで開催された米国放射線腫瘍学会(ASTRO)年次総会で、NCIから資金提供を受けた試験の結果を発表した。

Vicini医師はこの学会で、 「同じくらい重要なことだ」 と述べ、副作用の点でも、治療した乳房の外観と感触の点でも、2つの治療法に違いはなかった。また、重篤な副作用の全体的な発生率は両群とも極めて低かった。

乳がんの放射線治療を毎日受けるには、仕事を休む必要があることが多い。また、患者は治療センターまで長距離を移動する場合もあるだろう。さらには、交通手段、保育、高齢者ケアの手配をしなければならない場合もある。

「より少ない日数の放射線治療で同等の結果を得ることができれば、乳がんに必要な治療を受けやすくなります。これは非常に重要です」と、NCI放射線腫瘍部門のKilian Salerno医師は述べた。Kilian Salerno医師は本試験には参加をしていない。「この短期間の治療では、仕事や家族と離れている時間が少なく済み、治療のための移動日数も少なく済み、経済的な困難も少ない」。

再発リスクの高い患者への放射線照射の不確実性

早期乳がんの診断後、同じ乳房にがんが再発する可能性を減らすために、ランペクトミー後の放射線療法が行われる。乳房の放射線療法には、全乳房照射および部分照射など複数の選択肢があり、どの治療が最も適切かは、患者と放射線腫瘍医が話し合って決定するとSalerno医師は述べている。

全乳房照射については、わずかに高線量で3週間照射する治療が、従来の5~6週間にわたる全乳房照射と同様に安全かつ有効であることが過去の試験で示されている。

しかし、ミシガン大学のLori Pierce医師によると、10年前にこの試験が開始された時には、より短くより強い、この放射線療法(寡分割放射線療法)は、米国ではまだ広く採用されていなかった。この試験には関与していないが、Pierce医師は、ASTROの学会でこの試験結果について専門家としてコメントを述べた。

このように採用が遅れた理由の1つは、再発リスクが高い患者への放射線の 「追加照射を組み込むかどうか、またどのように組み込むかが不明確であった」 とPierce医師は述べた。

追加照射の順次照射と同時照射の比較試験

この試験には、ランペクトミーを受け、同じ乳房に再発するリスクが高い早期乳がんの女性2,262人が参加した。再発の危険因子としては、腫瘍の悪性度が高いこと、50歳未満であること、腋窩リンパ節にがんが存在すること、ホルモン受容体陰性乳がんであることなどが挙げられた。

さらに、参加者の60%が放射線療法の前に化学療法を受けており、これは患者の再発リスクが高い可能性を示すもう1つの徴候である、とVicini医師は述べた。

NRG Oncology/RTOG 1005として知られるこの試験は、NCIの資金提供を受けたNRG Oncology臨床試験グループによって実施された。

参加者の半数は、従来の全乳房照射を週5日、3~5週間行い、その後6~7日かけて追加照射 (順次追加照射)を行う群に無作為に割り付けられた。残りの半数は、週5日の寡分割全乳房照射を3週間受けた(同時追加照射と呼ばれる)。参加者は中央値で7.4年間追跡された。

5年後と7年後のがん再発率は、順次追加照射を受けた女性と同時追加照射を受けた女性で非常に類似していた。重度の副作用があった人の割合もほぼ同じであった。放射線療法の副作用には、疲労、脱毛、心臓を含む周辺臓器への影響などがある。

 放射線療法によって、治療した乳房の外観や感触に変化が生じることもある。重要なのは、患者自身と担当医師との両方によって判断されるこれらの効果も、順次追加照射と同時追加照射との間で差異がみとめられなかったことである、とPierce医師は述べた。

より短期間の放射線治療が広範な使用に対応

この試験は、大規模な医療センターと小規模な地域がんセンターで実施され、各センターでの放射線治療手順の慎重な品質管理が要求されたため、「この結果は、同時追加照射の使用が多くのクリニックで実施できることを示しています」とSalerno医師は述べた。「われわれは、適切とみなされた患者に対して同時追加照射を行うことを推進することができるでしょう」。

また、Salerno医師は、すべての早期乳がん患者に追加照射が必要なわけではなく、「追加照射を取り入れるかどうかは、一人ひとりが治療チームと話し合うこと 」とも強調した。

UKやドイツでの試験など、現在進行中の他の大規模臨床試験でもこの問題が検討されており、 「この(アプローチ)に取り組むデータはさらに増えるでしょう」 とSalerno医師は述べた。

放射線腫瘍医は、治療の全体的な効果を低下させずに治療時間をさらに短縮する方法を研究するなど、乳がんやその他のがんに対する放射線療法を改良し続けている、とSalerno医師は述べた。

「NRG Oncology/RTOG 1005試験のおかげで、乳がんの治療法を個別化し、患者の実益性を最大限に高めることができる」とPierce医師は締めくくった。

 

監訳:松本 恒(放射線診断/仙台星陵クリニック)

翻訳担当者三宅久美子

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