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世界中で免疫療法をより安価に受けられるようになる可能性

免疫療法薬であるニボルマブ(商品名:オプジーボ)の超低用量投与が、進行頭頸部がん患者の生存期間を延長させることが、インドで行われた研究により明らかになった。また、この投与量は欧米で一般的に使用されている量の6%であるため、より安価に治療を行える可能性がある。

研究チームは、頭頸部がんの標準治療にニボルマブの超低用量投与を追加した臨床試験をインドで実施した。この併用療法により、1年後に生存している患者の割合が、標準治療単独療法に比べ2倍以上増加したことが、10月20日のJournal of Clinical Oncology誌で発表された。

本研究の結果は、頭頸部がんの要因や治療法がインドとは異なる米国での治療に、限定的な影響を与えるかもしれないと、本研究に関与していないCharalampos Floudas医師(NCIがん研究センター、頭頸部腫瘍専門医)は警告している。

しかし、特に低・中所得国の多くのがん患者に、高価な免疫療法薬による治療機会を与えられる可能性があり、本結果はより大きな意味を持つと複数の研究者は述べている。

本試験で使用されたニボルマブの超低用量は、「治療費は、フル用量(欧米で承認されている用量)の免疫療法レジメンの5%から9%に減少する」と、本試験のリーダーであるKumar Prabhash医師らは記している。

スローンケタリング記念がんセンターのAaron Mitchell医師とテルアビブ大学のDaniel Goldstein医師は、「この治療法は、米国と欧州で承認されているニボルマブ投与量のごく一部を使用することにより、免疫療法の経済的コストを劇的に削減し、低・中所得国での治療アクセス向上と患者予後の改善が期待できる」と論じている。

NCIグローバルヘルスセンターのディレクターであるSatish Gopal医師は、この研究に参加していないが、毎年世界で起こる約1000万人のがん死亡の70%近くが低・中所得国で起こっていると指摘した。

「本研究は興味深いものであり、これらの国々でがん研究やがんの臨床試験を行うことの価値を示している」とGopal博士は述べた。

本結果は、他の種類のがん患者に対してニボルマブ低用量投与の試験を行ったり、他の免疫療法の低用量投与が有効であるかどうかを検討する機会を強調していると、Mitchell医師とGoldstein医師は指摘した。

低用量ニボルマブによる治療成績

この第3相臨床試験は、診断時に転移が確認された、あるいは治療後に再発した進行頭頸部がん患者151人を対象とした。

参加者全員を、標準治療に低用量ニボルマブを併用する群(免疫療法群)と併用しない群(標準治療群)に無作為に割り付けた。インドでは、進行頭頸部がんに対する標準治療として、メトトレキサート、エルロチニブ(タルセバ)、セレコキシブの低用量投与が頻繁に行われている。

免疫療法群の患者には、ニボルマブ20mgを3週間ごとに点滴で投与した。米国では、通常、240mgを2週間ごとに投与している。

1年後、免疫療法群の43%、標準治療群の16%が生存していた。生存期間中央値は、免疫療法群の患者では10カ月、標準治療群の患者では7カ月であった。

「これらの患者に対して、FDAが承認した用量の6%のニボルマブによる生存期間延長の利益は、大きな注目に値する」とGopal医師は述べている。

免疫療法群の59%、標準治療群の45%で、腫瘍の縮小または増殖が止まったことが確認された。

腫瘍の縮小または安定が認められた患者において、その期間が標準治療群で約3カ月であるのに対し、免疫療法群では約9カ月と、より長くがんをコントロールすることができていた。

ニボルマブの低用量とフル用量は直接比較されていないが、低用量の生存ベネフィットはフル用量の研究で見られたものと同様であると、論説委員らは指摘した。

米国における頭頸部がん

Floudas医師は、臨床試験参加者の約90%が口の中の頭頸部がん(口腔がん)であり、これはタバコやbetel quid(インドや台湾などのアジア地域で噛みタバコのように使用される嗜好品)を含む無煙タバコの使用と関係があると指摘した。

しかし、米国では、タバコに関連する口腔がんは確実に減少し、喉の奥にできる頭頸部がん(中咽頭がん)が増加しておりHPV感染が関係していると、彼は述べている。

Floudas博士は、タバコ関連の口腔腫瘍はHPV関連の中咽頭腫瘍よりも変異が多い傾向があり、免疫療法は変異の多い腫瘍によく効くことが多いと指摘した。

また、臨床試験で使用された標準治療法は、米国では使用されていないと加えた。

つまり、この1件の研究に基づいて、低用量ニボルマブがHPVに関連する中咽頭がんに同じように作用するかどうかを論じることはできないとFloudas医師は述べた。

治療費と時間を節約し、命を救う

「われわれは、長年の研究投資によって、免疫療法のような真に重要な新しい治療法を生み出すことができ、本当に幸運であった」と、Gopal医師は述べている。

しかし、新しい治療法やツールは「かなり高価な場合が多く、米国のような高所得国であっても、がん治療費の高騰にどう対処するか、われわれが正に取り組んでいることだ」とも付け加えた。

最新の治療法を利用する手段を持たない世界中の多くの人々は、「一般的に、効果の低い選択肢で済ませたり、治療を完全に見合わせたり、がん治療を受けようとして経済的に破綻したりしている」と、Gopal医師は説明する。

また、臨床試験では新しいがん治療法を複数回に分けて試すことが多いが、目標は患者が耐えられる最高用量をみつけることである。「薬剤をより多く投与できれば、より効果的である可能性が高いと考えられるからだ」と、彼は指摘した。

しかし、がん治療の効果を損なうことなく、がん治療の量、回数、期間を減らす方法を模索している研究者や医師が増えている。

研究者らは、投与量削減によってコストが下がるだけでなく、副作用が減り、患者や医師の時間的負担が減ることにつながることを期待していると、Gopal医師は述べる。

Mitchell医師とGoldstein医師は、今回の研究により、頭頸部がんだけでなく、他のがんに対しても、より低用量の免疫療法が有効である可能性が出てきたと指摘した。同様の考え方は、他の種類のがん治療にも適用できるかもしれないとも述べている。

「低用量と低コストを実現すれば、多くのがん死亡を防ぐことができるだろう」と、彼らは記している。

がん研究のグローバルな視点

低用量ニボルマブの研究は、低・中所得国が取り組むのに最適な研究課題の一例としてもすばらしいと、Gopal医師は述べている。

「必要は発明の母であり、非常に難しい問題を解決することを強いられると、創造性、創意工夫、イノベーションにつながることが多い」とも述べている。

「低・中所得国が用量低減の研究をリードする可能性があると思われる。なぜなら、新しい治療法を利用できるようにするためには、彼らがこのような研究をしなければならないからだ」と、Gopal医師は説明した。

「中・低所得国の研究者や機関と密接に協力することで、米国でも応用できるような知見が得られると思う」とも述べている。

 

監訳:小宮武文(腫瘍内科/Parkview Cancer Institute)

翻訳担当者河合加奈

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