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新型コロナウイルスワクチンは、がん免疫療法中でも安全

ある種の免疫療法薬で治療を受けているがん患者は、免疫関連の副作用のリスクを増加させることなくmRNAコロナウイルスワクチンの接種を受けられることが、新たな研究から示唆された。この結果は、以前に行われた小規模な研究の結果と一致している。

今回の研究には、スローンケタリング記念がんセンターで治療を受けた400人以上のがん患者が参加した。患者は、免疫チェックポイント阻害薬として知られる免疫療法薬の投与前または投与後に、mRNAコロナウイルスワクチン接種を受けた。

患者カルテを解析した結果、mRNAコロナウイルスワクチン接種によって、肺や大腸の炎症といった免疫関連の副作用について、種類や頻度、重症度が深刻化したというエビデンスは認められなかったことが、研究から明らかになった。

研究チームの一員であるAdam Widman医師は、「免疫チェックポイント阻害薬と新型コロナウイルスワクチンを投与しても安全です。今回の結果によって、患者だけでなく、腫瘍専門医の免疫関連の副作用に対する懸念が和らぐことを期待しています」と述べている。

特定の患者群(高齢の患者や特定のがん種の患者など)においても、免疫関連の副作用が増加する徴候はみられなかったと、Journal of the National Comprehensive Cancer Network誌の10月号で報告している。

本研究には参加していないが、米国国立がん研究所免疫腫瘍学センターの共同責任者であるJames Gulley医学博士は、「これは重要な研究です」と語った。

Gulley医師はまた、「がん患者が増え続ける中、免疫チェックポイント阻害薬は重要な治療の選択肢であるが、この研究結果によって、免疫チェックポイント阻害薬を使用する患者への新型コロナウイルスワクチン接種の安全性についの理解が深まります」とも述べた。

医療団体は、がん患者に新型コロナウイルスワクチンを推奨

がん患者は、新型コロナウイルスによる重篤な合併症のリスクが高い。承認されたSARS-CoV-2ワクチンによって、新型コロナウイルスによるがん患者の入院や死亡のリスクは低減することが明らかになっている。

米国疾病対策予防センター(CDC)やその他の医療団体は総じて、がん患者に対するmRNAコロナウイルスワクチンの接種を推奨している。

しかし、免疫チェックポイント阻害薬で治療中のがん患者の中には、免疫系へのさらなる刺激が副作用を助長するのではないかという懸念から、ワクチン接種に消極的な人もいる。

Widman医師は、「スローンケタリング記念がんセンターの一部の医師と患者は、新型コロナウイルスワクチンが免疫療法を阻害し、重篤になりうる免疫関連の有害事象を誘発するのではないかという懸念を持っていました」と語った。

「幸いなことに、そのような懸念を裏付けるエビデンスは見つかりませんでした」と彼は付け加えた。

新型コロナウイルスワクチンの安全性に対する安心感を与える

mRNAコロナウイルスワクチンの当初の研究には、がん患者が含まれていなかった。そのため、ワクチンが利用可能になったとき、免疫チェックポイント阻害薬を使用している患者を対象としたワクチンの研究がなかった。

他のワクチンについての研究では、幹細胞療法など免疫系の抑制を伴うがん治療を受けている患者は、ワクチンに対する反応が一時的に低下するおそれがあるため、数カ月間ワクチン接種を控えるべきであると示唆されていた。

副作用の面では、2019年の研究で、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けている患者において、インフルエンザワクチンによって免疫関連の副作用が増加することはないことが明らかになった。このインフルエンザワクチンの研究は、スローンケタリング記念がんセンターの主任医学疫学者であるMini Kamboj医師の主導によるものであるが、今回の新型コロナウイルスの研究も彼が主導した。

2021年に発表された2件の研究でも、新型コロナウイルスワクチンが免疫関連の副作用を助長する徴候は認められなかった。研究は、1件がイスラエルで、もう1件は米国で実施された。スローンケタリング記念がんセンターの研究は、先行研究よりも規模が大きく、ワクチン接種後の患者をより長く追跡していた。

今回の結果によって、新型コロナウイルスワクチンの安全性について、医師と患者はさらに安心感を得るはずだと、イスラエルでの研究を主導したテルアビブ大学のIdo Wolf医師は述べている。

「ワクチンは、がん患者の中でも特に高齢者や、免疫機能の低下している患者、また他の疾患を持つ患者の命を救うことができます」とWolf医師は語った。

免疫関連の副作用は、ほとんどが軽度

スローンケタリング記念がんセンターの研究に参加した408人の患者は、免疫チェックポイント阻害薬の投与前または投与後90日以内に、mRNAコロナウイルスワクチンの初回接種を受けていた。

本研究の患者は、ほとんどがPfizer社-BioNTech社のワクチンを受け、年齢の中央値は71歳であった。患者のがんの種類はさまざまであった。

患者が投与された免疫チェックポイント阻害薬には、ペムブロリズマブ(キートルーダ)、ニボルマブ(オプジーボ)、イピリムマブ(ヤーボイ)、およびこれらの薬剤の併用が含まれていた。追跡期間中(ワクチン接種から90日間)に、研究から以下のことが明らかになった。

・27人(7%)に発疹、下痢、大腸炎などの免疫関連の副作用が新たに発現した。副作用の多くは軽度であった。

・4人(1%)に重度の免疫関連の副作用が発現した。これらの副作用はいずれも消化器系のもので、大腸炎または下痢であった。

・ワクチン初回接種と免疫チェックポイント阻害薬を同日投与した28人の患者には、免疫関連の副作用はみられなかった。

・ワクチン接種前に免疫関連の副作用の既往があった54人中3人(6%)に、ワクチン接種後に免疫関連の副作用が発現した。

・ワクチン接種後に免疫チェックポイント阻害薬を開始した患者52人中9人(17%)に、免疫関連の副作用が発現した。

追跡期間中に新たに免疫チェックポイント阻害薬を開始した患者は、本研究の他の患者よりも免疫関連の副作用を発現する可能性が高いことが示された。この研究の限界として、免疫療法を受けたがワクチンは接種しなかった患者群との比較がなかったことを、研究者は指摘している。

明確なメッセージ「ワクチンは確かに安全である」

研究者によると、今回の研究で得られた、免疫チェックポイント阻害薬を投与されたワクチン接種者における免疫関連の副作用の発現率は、免疫チェックポイント阻害薬を投与されたワクチン非接種者のものと同程度とのことである。

がん患者における新型コロナウイルスワクチンの安全性に関する信頼できるエビデンスを構築することは、極めて重要であるとWolf医師は指摘し、「ワクチンの安全性に対する懸念は、理論上の憶測のみによるものが多く、エビデンスによって裏付けられてはいない」と述べている。

しかし、彼は続けて、今回の研究からのメッセージは「明確であります。ワクチンは、確かに安全であり、免疫療法を受けるがん患者に投与されるべきです」と語った。

Widman医師は、今回の結果は、ここ数カ月、スローンケタリング記念がんセンターで「非常に役立っている」とし、「医師たちはこの結果に安心し、免疫療法を受けている自身の患者にワクチン接種を勧めています」と話した。

 

監訳:廣田 裕(呼吸器外科、腫瘍学/とみます外科プライマリーケアクリニック)

翻訳担当者成宮眞由美

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