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化学療法で完全奏効の乳がん患者では手術不要の可能性

MDアンダーソンがんセンターが開発した生検プロトコルで再発リスクの低い患者を特定

術前化学療法で病理学的完全奏効(pCR)を得た早期乳がん患者は、再発の可能性が低く、手術を省略して標準的な放射線治療を受けられる可能性があることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの新たな研究によって示された。

本日、Lancet Oncology誌に発表された第2相試験の結果は、手術を行わずに化学療法と放射線治療を行い、完全奏効となった患者の乳がん再発の可能性を評価したものである。追跡調査した31人の患者はいずれも化学療法で完全奏効し、追跡期間中央値26.4カ月以降、乳腺腫瘍の再発は認められなかった。

「乳房温存療法の究極の形は、浸潤性疾患に対する乳房手術を完全に省略することです」と、臨床試験責任医師であるHenry Kuerer医学博士(乳腺外科腫瘍学教授)は述べた。「今回の研究により、新しい薬剤が一部の症例でがんを完全に根絶できることを示す証拠が増え、また、初期の結果で、一部の乳がん患者において支障なく手術を省略できることが示されました」。

本試験は、化学療法が良好に奏効した早期乳がん患者の手術省略に関する最初の進歩的な前向き研究である。高い奏効率は、最新の乳房画像ガイド下の吸引式組織生検(VACB)により示される。この結果は、化学療法後に病理学的完全奏効(pCR)を達成した患者を正確に特定するためにMDアンダーソンが進展させた生検プロトコルを用いてKuerer医学博士が行った、以前の研究に基づいている。これらの患者は「例外的なレスポンダー」と呼ばれ、乳がん再発のリスクが低く、乳房手術を回避する候補となる。

化学療法剤の改良により病理学的完全奏効(pCR)率は有意に向上し、トリプルネガティブまたはHER2陽性の乳がん患者も現在、症例の60%~80%がpCRを達成している。このような高い奏効率に、選択的な画像ガイド下吸引式組織生検と厳密な組織学的処理を組み合わせることで、どの患者が手術を必要としないかを判断する医師の能力が向上している。

この多施設共同試験には、40歳以上の早期トリプルネガティブまたはHER2陽性乳がんで、標準化学療法後の画像診断で残存乳房病変が2cm未満と判断された女性50人が参加した。参加者は、画像ガイド下吸引式組織生検を一回受けた。生検で病変が確認されなかった場合、乳房手術は省略され、患者には標準的な全乳房放射線療法が実施された。

参加者の平均年齢は60.4歳で、21人がトリプルネガティブ乳がん、29人がHER2陽性乳がんであった。38人が白人、10人が黒人、2人がその他の民族/人種であった。吸引式組織生検により31人の患者が病理学的完全奏効(pCR)と判定された。生検に関連する重篤な有害事象および治療に関連する死亡は発生しなかった。

「当面は、標準的な乳がん手術がまだ必要です」とKuerer医学博士は述べる。「これらの結果は注目に値するものであり、かなり有望ですが、これが特定の患者に対する新しいタイプの治療のまさに始まりであることを患者が理解することが大切です。この方法が通常の乳がん治療に組み込まれるようになるには、より長い追跡調査とさらなる研究が必要でしょう」。

研究者らは、試験参加者の長期転帰を引き続き追跡調査する。また、本試験の副次的な目的として、液体生検から微少残存病変を測定し、病理学的完全奏効(pCR)と相関があるかどうかを判定している。

本研究は小規模な非ランダム化研究であるが、本アプローチの実行可能性を示している。標準治療の変更を検討する前に、より大規模なランダム化研究で治療法を直接比較する必要がある。

本研究は、米国国立がん研究所(NCI)および米国国立衛生研究所(NIH)(P30 CA016672, UL1 RR024148)、 the PH and Fay Etta Robinson Distinguished Professorship in Cancer Research と MD アンダーソンのClinical Reserch Funding Award Program の基金から資金提供を受けている。Kuerer医学博士は、Merck & Co社から顧問料を受け取り、NEJM Group社の編集者を務め、McGraw-Hill Professional社とElsevier Publishing社からロイヤリティを受けていることを報告している。

 

監訳:小坂泰二郎(乳腺外科・化学療法/医療社会法人石川記念会 HITO病院)

翻訳担当者山口みどり

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