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患者ナビゲーションはメディケア公的保険加入がん患者の医療費を削減する

ASCOの見解

「患者ナビゲーターは、がん患者のケアに関連するさまざまな組織的課題やその他の課題を解決するために、重要な役割を担っています。今回、オンラインでのナビゲーションプログラムの利用により、ナビゲーターは膨大な量の社会的サービスを提供するだけでなく、患者の総医療費を大幅に節約できることを、これまでの研究よりも大規模に証明することができました」と、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の最高医学責任者兼副会長であるJulie R. Gralow医師(FACP:米国内科学会フェロー、FASCO:ASCOフェロー)は述べている。

(バージニア州アレクサンドリア) がんナビゲーションプログラムが州規模のメディケアアドバンテージ健康保険と連携して展開された場合、幅広い診療形態において総医療費を削減できることが、2022年ASCO Quality Care Symposium(良質医療シンポジウム)で発表される調査結果により明らかになった。

【試験要旨】 

目的:州全体の大規模医療保険に加入しているがん患者の医療費に対する患者ナビゲーションの効果

対象者:ニュージャージー州のメディケアアドバンテージプラン(Medicare Advantage)に登録された患者444人

結果:患者1人あたりの総医療費は、ナビゲーションを利用した患者では、利用しなかった患者と比較して、1か月あたり429ドル減少した。

結論:複雑な医療システムの中で、ナビゲーションシステムを活用して患者が適切ながんケアに導かれることにより、治療費を大幅に削減することができる。

患者ナビゲーションサービスを利用した場合、利用しない場合と比較して医療保険加入者1人当たり1カ月につき429ドルの削減が見られた。

「がんに対する新しい、より効果的な治療法は、常に導入されています。このような治療法の進歩にもかかわらず、ケアに対する連携がうまくいかないことも多く、最良のケアを選択するための教育は不足し、ケアにたどり着くまでの道のりは必ずしも容易ではありません。私たちには、全人的なケア(whole person care)に不可欠な基本的な要素のいくつかが足りていないのです。患者ナビゲーションはこれらのギャップを埋めることができます。この研究は、がんナビゲーションを拡大してより多くの人々を支援する方法の道筋を示すのに役立つと思います」と、ペンシルバニア大学の医学および医療倫理・医療政策の助教であるRavi B. Parikh医師(MPP、FACP)は述べている。

試験について

低所得のがん患者が利用できる限られたリソースに関する全国調査(1989年)に基づき、1990年にニューヨーク市ハーレム地区で、複雑な医療制度の中で患者を支援する、全米初の患者ナビゲーションプログラムが実施された1。30年以上にわたる活用と拡大の中で、がん患者のための患者ナビゲーションプログラムは、種々の医療環境における総医療費を削減するとともに、患者経験を改善し、入院を回避し、生存率を向上させることで価値を高めることが示されてきた。しかし、これらの患者ナビゲーションプログラムを広く普及させることは非常に困難であった。この研究では、ニュージャージー州全体を対象とする大規模なメディケアアドバンテージ医療保険と提携して展開された、がん患者のための独立した患者ナビゲーションプログラムについて検討した。

この研究では、まずニュージャージー州の地域の診療所や病院における4,000人以上のがん患者からの請求データを調査した。同州には、地域の小規模な診療所から大規模な大学医療センターまで、さまざまな医療環境がある。がん患者の約16%がナビゲーションの支援を受けていた。統計解析のために、研究者らは最終的に、患者ナビゲーションを受けた222人のがん患者と、ナビゲーションの支援を受けなかった222人のがん患者を比較した。  

ナビゲーションプログラムは、テクノロジーを駆使したオンラインのがんナビゲーションサービスで、一般の医療従事者と看護師の両方がスタッフとして参加した。ナビゲーションチームは、医療ケアの調整をオンラインで(ビデオまたは電話で)実施し、各患者と月に平均2.6回対話した。ナビゲーターは、ケアを妨げるあらゆる障壁に対処するとともに、ケア方針に関する話し合いを促進し、事前および事後の症状評価を実施した。患者の治療に対して問題のある副反応が生じた場合は、その日のうちに患者の腫瘍科チームに通知した。この研究の主要評価項目は、総医療費に注目したもので、メディケアパートDの薬剤費は除外されている。

研究者らは2021年3月から2022年6月までの医療記録と保険の支払い記録を調べ、ナビゲーターがいる患者といない患者の加入者1人あたりの毎月の総医療費を比較した。

主な知見

平均総医療費は、ナビゲーターの支援を受けた群は、受けなかった群と比較して、加入者1人当たり1カ月429ドル以上減少した。別の分析では、ナビゲーションの支援を受けた群におけるコスト削減は、加入者1人当たり1カ月につき209ドルから708ドルが妥当な範囲であることが示唆された。コスト削減の最大の効果は入院患者治療関連で、先行研究ならびにこのプログラムの介入の多くが急性期医療の使用を減らすことに重点を置いていたという事実から、予想されていた結果であった。

次のステップ

この研究では、ナビゲーションの多くの側面を一度に調べたため、研究者らは今後、ナビゲーションが具体的にどのようにして患者に利益をもたらすのかについて、重点的に調べたいと考えている。研究者らは、ナビゲーションが有益であったのは、医師が通常提供するよりも頻繁に症状についてのコミュニケーションをとったからなのか、それともナビゲーターが患者に地域密着型の住居支援や経済的支援を紹介することができたためなのかを明らかにしたいと考えている。また、研究者らは、患者や腫瘍医が、診療所外の第三者によって行われる症状管理をどのように受け止めているかについても、理解を深めたいと考えている。

資金 この研究は外部からの資金援助を受けていない。

日本語監訳:橋本 仁(獣医学)

翻訳担当者青葉かお里

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原文掲載日

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