ダナファーバー、乳がん、腎がん他重要な試験結果をESMO2022で発表

ダナファーバーがん研究所が主導する試験が抗がん剤併用療法の有望な結果を示したことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会2022(仏パリ)で初めて報告される。試験の成果は2022年9月9~13日に学会会場およびオンラインで発表される。

ダナファーバーがん研究所ランク泌尿生殖器がんセンター所長Toni Choueiri医師は、未治療進行腎がん患者に対する3剤(カボザンチニブ、ニボルマブ、イピリムマブ)併用療法の第3相試験の結果を発表する(LBA8)。COSMIC-313試験の最初の結果は、2022年9月12日(月)10:30am ET(米東部標準時間)(16:30 CEST(中央ヨーロッパ夏時間))から開催される会長シンポジウムで発表され、ESMO PRプログラムの中で紹介される。会長セッションでは、臨床診療を大幅に変更するような最新の試験について研究著者らが口頭で発表する。プレスリリース全文日本語訳はこちら

ダナファーバーがん研究所のSara Tolaney医師、公衆衛生学修士が主導する、HR+、HER2+進行乳がん患者を対象に併用療法を検討する極めて重要な乳がん試験(LBA18)が、最新抄録としてミニ口頭セッション、乳がん(転移性)で9月10日(土)に発表される。アベマシクリブ+トラスツズマブ±フルベストラントとトラスツズマブ+標準療法との全生存を比較評価する第2相monarcHER試験のデータが発表される。

さらに今年のESMO PRプログラムでは、ダナファーバーの研究チームが実施したPATHFINDER 試験(903O)の結果も紹介される。PATHFINDERでは、簡単な血液検査で、がんの有無が不明の50歳以上の人にがんの徴候を発見できるかどうかを調べた。この結果は、がんの早期発見のための検査を開発する手がかりとなる可能性がある。PATHFINDER試験の結果は、口頭発表(Proffered Paper)セッションの基礎科学およびトランスレーショナル・リサーチで9月11日(日)に発表される。

その他にも、脳腫瘍、腎がん、口腔がんなど多くのがん腫における新しい治療法や診断法の進展など、ダナファーバーによる重要な研究を報告する。主な試験は以下のとおり:

◆ 膠芽腫に対する治療が無増悪生存期間を延長し全生存を改善

膠芽腫は、悪性度および致死率が高く治療抵抗性の悪性脳腫瘍で、治療の選択肢が少ない。ダナファーバーがん研究所神経腫瘍学センター所長のPatrick Wen医師が主導したこの第2相試験では、paxalisib [パクサリシブ]が、食後、空腹時に関係なく、腫瘍組織に生物学的効果を発揮することがわかった。この試験は、初発のMGMTプロモータ非メチル化膠芽腫患者を対象とした。その結果、paxalisibは、最大耐用量で無増悪生存期間中央値を延長し(8.4カ月 [RANO]、 8.6カ月 [mRANO])、全生存期間中央値を改善した(15.7カ月)。

演題/抄録:初発MGMTプロモータ非メチル化膠芽腫患者に対するpaxalisibの薬物動態学および薬力学:第2相試験最終結果(抄録番号 280O

筆頭著者:Patrick Wen医師 口頭発表セッション:中枢神経系腫瘍、2022年9月9日(金)

◆ 高リスク口腔前がん病変に有効な免疫療法

口腔増殖性白板症は、多巣性病変を特徴とし、口腔扁平上皮がんに進行するリスクの高い、高悪性度の前癌病変である。現在のところ、口腔がんへの進行を予防する有効な治療薬はない。ダナファーバーがん研究所唾液腺・希少頭頸部がんセンター所長Glenn Hanna医師が発表するこの第2相試験では、ニボルマブで治療した高リスク口腔白板症患者の37%に増殖性白板症の軽減が認められ、無がん全生存が良好であることがわかった。これは、高リスク口腔前がん病変に対する予防免疫療法の有効性を初めて確認した試験である。

演題/抄録:高リスク口腔白板症に対するニボルマブの第2相試験(抄録番号 650O

発表者:Glenn Hanna医師 口頭発表セッション:頭頸部がん、2022年9月12日(月)

◆ 併用療法が未治療進行腎がんに対して有望な抗腫瘍効果を示す

進行腎細胞がん(腎がん)患者では、血管内皮増殖因子チロシンキナーゼ阻害薬(VEGF-TKI)は転帰を改善してきたが、ほとんどの患者が最終的に病勢進行する。ダナファーバーがん研究所のToni Choueiri医師が主導するこの非盲検第2相試験では、VEGF-TKIのカボザンチニブとHIF-2α阻害薬belzutifan [ベルズティファン]の併用療法について検証した。belzutifanは、複数の治療歴がある進行腎がんに対して抗腫瘍効果と良好な安全性を示している。この試験に参加した患者は進行淡明細胞型腎細胞がんと診断され、未治療であった。ESMOで発表される解析結果は、LITESPARK-003試験のコホート1から得られた最初のデータである。中央値が14カ月間の追跡調査後に中間解析を行ったところ、この併用療法で有望な抗腫瘍活性が認められた。全奏効率(ORR)は57%で、この併用療法の安全性は管理可能であった。

演題/抄録:進行腎細胞がん(RCC)に対する1次治療としてのbelzutifan+カボザンチニブの第2相試験:LITESPARK-003コホート1(抄録番号 1447O)

筆頭著者:Toni Choueiri医師 口頭発表セッション:泌尿生殖器がん(非前立腺)、2022年9月12日(月)

ミニ口頭セッションで発表されるダナファーバーの研究は以下のとおり:

◆ 第3相TROPiCS-02試験における、ホルモン受容体陽性/ヒト上皮成長因子受容体2陰性(HR+/HER2–)転移性乳がん(MBC))に対する、HER2の免疫組織化学的(IHC)状態による、Sacituzumab govitecan [サシツズマブ ゴビテカン]の有効性(抄録番号214MO

筆頭著者:Sara Tolaney医師 ミニ口頭抄録セッション:乳がん(転移性)、2022年9月10日(土)

◆ AMEERA-3、内分泌療法抵抗性ER+/HER2−進行乳がん患者に対するamcenestrant [アムセネストラント]と医師の選択による内分泌療法を比較する第2相試験(抄録番号212MO

発表者:Sara Tolaney医師 ミニ口頭抄録セッション:乳がん(転移性)、2022年9月10日(土)9:15am ET (15:15 CEST)

◆ 進行固形がん患者に対する二機能性EGFR/TGFβ融合タンパク質BCA101単剤とペムブロリズマブ併用を比較する第1相試験(抄録番号731MO

発表者:Glenn Hanna医師 ミニ口頭抄録セッション:試験用免疫療法、2022年9月10日(土)

◆ CLEAR試験における進行腎細胞がん(aRCC)患者に対するレンバチニブ+ペムブロリズマブとスニチニブとの有効性比較結果の更新(抄録番号 1449MO

筆頭著者:Toni Choueiri医師 ミニ口頭抄録セッション:泌尿生殖器がん(非前立腺)2022年9月11日(日)

◆ In-situ免疫マーカーが転移性淡明細胞型腎細胞がんの一次治療におけるニボルマブ±イピリムマブの有効性を予測:BIONIKKランダム化試験の主要な補助的解析(抄録番号1451MO

発表者:Maxime Meylan博士 ミニ口頭抄録セッション:泌尿生殖器がん(非前立腺)2022年9月12日(月)

日本語記事監訳:高濱 隆幸(腫瘍内科・呼吸器内科/近畿大学病院 ゲノム医療センター)

翻訳担当者 粟木 瑞穂

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原文掲載日 

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