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男性ホルモンが、がん免疫療法の新たなターゲットに

膀胱がんや肝臓がんなどの非生殖器に由来するがんは、性別によって罹患率、進行度、治療効果、生存率に著しい差があることが分かっている。ほとんどの場合、男性患者の方が予後も治療成績も不良である。この現象は何十年もの間、科学界で謎とされてきた。

本日、非生殖器由来のがんにおける男性と女性の腫瘍内免疫反応の差異を検討する研究がScience Immunology誌に掲載された。この研究は、オハイオ州立大学総合がんセンターアーサー・G・ジェームズがん病院およびリチャード・J・ソロブ研究所(OSUCCC – James)のPelotonia Institute for Immuno-Oncology(PIIO) の研究者らが主導した。

この研究の焦点は、悪性腫瘍に対するT細胞免疫反応で、これは予後の鍵を握る決定因子であり、近年のがん免疫療法の再興に貢献した重要なターゲットである。本研究では、CD8+T細胞(適応免疫を司り、抗腫瘍反応に重要な役割を果たす、がんの「キラー」細胞とも呼ばれる細胞群)の調節を介して、男性ホルモンががん関連の性差の一因となることを説明する画期的な発見が報告された。

本研究の統括著者であるZihai Li博士(がん免疫学者、腫瘍内科医、OSUCCC-JamesのPIIO創設ディレクター)は、「今回の研究結果は、がんにおいて、アンドロゲンがCD8+T細胞の機能不全を促進することを明らかにし、健康と疾病における性差に対応する治療の開発を、より広範に示唆するものです」と述べる。

アンドロゲンは、男性に多く存在する性ホルモンである。今回の研究により、ヒトの患者やマウスなど男性(雄)のがんから得たCD8+ T細胞は、抗腫瘍免疫機能が弱まっている(「疲弊した」T細胞とも呼ばれる)傾向が高いことがわかった。アンドロゲンシグナル伝達は、CD8+T細胞機能の主要制御因子であるTCF1の発現の調節によって、前駆的な疲弊CD8+T細胞の表現型を促進する。

「アンドロゲンによるCD8+T細胞の機能不全の促進は、腫瘍の成長を早め、予後を悪化させます。このシグナル伝達経路を標的とすることが、現在のがん免疫療法を改善する重要な鍵となります」と、オハイオ州立大学医学部の教授でもあるLi氏は語る。

この研究は、オハイオ州立大学ペロトニア免疫腫瘍学研究所で行われている独自の共同研究によって可能となった。

2019年に設立されたPIIOは、予防から治療、サバイバーシップと、あらゆるレベルにおいて、身体の免疫システムを利用し、がんと戦うことに焦点を当てた包括的なbench-to-bedside研究(訳注:基礎研究で得られた知見を臨床研究に応用)を主導する。PIIOは、システム免疫腫瘍学やトランスレーショナル免疫腫瘍学を中心とし、免疫モニタリング、免疫探索、および免疫情報学もバックアップする。

PIIOは、OSUCCC-JamesとPelotoniaによる1億200万ドルの寄付誓約によって設立された。2008年に設立されたPelotoniaは、革新的ながん研究に対する資金提供を目的に設立され、がん研究のために2億3600万ドル以上の資金を集めている。

米国国立衛生研究所、前立腺がん財団、カナダ保健研究所、ホリングスがんセンターから追加の資金援助を得た。

その他の研究著者は以下のとおり。

Hyunwoo Kwon, Johanna Schafer, No-Joon Song, Satoski Kaneko, Anqi Li, Tong Xiao, Anjun Ma, Carter Allen, Komal Das, Lei Zhou, Brian Riesenberg, Yuzhou Chang, Payton Weltge, Maria Velegraki, David Oh, Lawrence Fong, Qin Ma and Debasish Sundi

また、共著者は以下のとおり。

Drs. Xue Li (Cedars-Sinai Medical Center) and Dongjun Chung (OSUCCC – James)

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日本語訳監修:高山吉永(分子生物学/北里大学医学部 分子遺伝学)

翻訳担当者平沢沙枝

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