AYA世代の白血病サバイバーの死亡率は、診断後数十年間、一般集団より高い

年齢、性別、診断の年代が、長期生存率に影響する。

AYA世代(思春期および若年成人)の急性骨髄性白血病(AML)および急性リンパ性白血病(ALL)サバイバーは、一般集団より長期生存期間が短く、その差は診断後最大で30年間持続することが米国がん学会のCancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention誌で発表された。

「急性白血病の診断後、初発急性白血病が治癒するAYA世代の数は増えています」と、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター准教授で、AYAオンコロジープログラムの共同ディレクターおよび小児がんサバイバーシッププログラムのディレクターであるMichael Roth医師は述べる。「これらの患者さんは、がんと診断された後も50年以上の人生を送る可能性があります。したがって、最初にがんになった時、単に治すだけではなく、長期的な生存期間やQOLを考え、その後も長く健康で幸せに暮らせるようにすることが重要なのです」。

<AMLおよびALLの青年および若年成人の生存者の長期生存>(日本語表作成:Sae Hirasawa)

Roth氏らは、この患者集団の長期生存転帰を理解するため、Surveillance, Epidemiology, and End ResultsSEER)データベースを用い、ALLおよびAMLAYA5年サバイバーについて死亡パターンを解析した。「われわれは、最初の診断から5年後に分析を開始し、きわめて集中的な治療を受けている時期と、元の生活に戻りながらも初期治療の晩期副作用に対処している時期とに分けました」と、Roth氏は述べた。

著者らは、1975年から2011年までの急性リンパ性白血病(ALL)サバイバー1,938人、および急性骨髄性白血病(AML)サバイバー2,350人の情報を入手し、ALLAMLの患者群と、米国人口動態統計報告(National Vital Statistics Report)から得た米国内の集団との間の生存期間における差を評価した。

ALLサバイバーのうち、6%が黒人、29%がヒスパニック、7%がアジアまたは太平洋諸島民、58%が白人であった。AMLサバイバーのうち、9%が黒人、22%がヒスパニック、10%がアジアまたは太平洋諸島民、59%が白人であった。診断年齢の中央値は、ALL23歳、AML28歳であった。診断からの追跡期間中央値は、ALLで12.3年、AML12.7年であった。

研究者らは、AYA白血病サバイバーの10年生存率は、年齢調整した米国一般集団よりも約10%低く、その差は最長30年間の追跡調査でも持続することを見出した。「AYA世代の白血病の患者さんは、がんの治療中に多くの困難を経験しますが、がんの治療後の期間においてもさらに多くの困難を経験しているとみられます」とRoth氏は述べる。「例えば、AMLサバイバーの死亡率は治療後何十年も上昇し続けますが、これは、これらのAML患者の大半が、非常に高リスクで多くの晩期副作用を伴う幹細胞移植を受けるためと思われます」。

がん治療後の初期に最も多い死因は白血病であった。「これらの患者さんの中には、最初のがんが完治していない人もいるので、最初の診断から5年から10年の間は、死因のほとんどが疾患の進行や再発ですが、それ以降は、心血管疾患や二次がんなどの治療の晩期副作用による死亡がほとんどです」と、Roth氏は述べている。

診断時年齢の高さは長期生存率の低下と相関し、診断時年齢が1歳上がるごとに、急性リンパ性白血病(ALL)および急性骨髄性白血病(AML)サバイバーの長期生存率はそれぞれ6%および5%低下した。

患者の性別はAMLサバイバーのみ長期転帰と関連しており、男性の生存率は女性の61%であった。

AYA世代のALLサバイバーでは、アジア系や太平洋諸島系の方がヒスパニック系よりも生存期間が長かった。ヒスパニック系は、非ヒスパニック系白人より生存期間が短い傾向があり、白人サバイバーの56%であった。しかし、この差は社会経済的地位で調整しても統計的有意差には達しなかった。

「歴史的に、民族や人種マイノリティの患者さんは、質の高い医療を受ける機会が少なく、二次がんの予防や、白血病治療後に起こりうる心血管系の晩期障害の治療のために、予防医療を受けることが少ないのではないかと懸念しています」とRothは述べている。

1990年代と2000年代に診断された人の生存期間は、1980年代に診断された人の2倍以上であり、診断された年代がより後になると長期生存率が向上することが判明した。これは、治療の進歩により、毒性が低く抑えられかつ治癒率が向上したこと、および支持療法が改善されたことによると考えられる。

しかし、2000年代に診断された患者の長期生存率は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)ともに1990年代と比較してそれ以上の改善はみられなかった。「2010年から2020年に診断された患者さんでは、より新しい免疫療法や標的薬がより高い頻度で使用されているため、今後20年間で治癒率が大幅に進歩する可能性があると考えています」。

「最近の新しい治療法により、治癒率のいっそうの持続が期待できる一方で、晩期副作用の発生の数や強さが減少するかどうかはわかりません」とRothは付け加えた。

「レジストリ研究は、非常に大規模な集団の傾向や転帰を明らかにするのに適していますが、いくつかの限界があります」とRoth氏は言う。「AYA世代の白血病サバイバーでは、生存期間が短いことが確認され、一般的な死因に関する情報は得られていますが、診断時から治療後の期間、そして死亡時までの健康状態の詳細についてはわかっていません。そして、このことこそが次のステップの始まりとなるのです。なぜこのような患者さんが亡くなってしまうのか、そしてそのカーブを変えるための早期の介入として何ができるのかを理解するために、このギャップを埋める必要があるのです」。

本研究では、症例数が多いにもかかわらず、人種的・民族的マイノリティの割合が比較的少ないため、これらのマイノリティ集団に影響する、長期生存における格差を検出することに限界がある可能性がある。また、社会経済的な状況による生存率の差も把握することができなかった。

翻訳担当者 (ポストエディット) 平沢 沙枝

監修 吉原 哲、血液内科・細胞治療((兵庫医科大学)

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