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米国がん学会(AACR):非小細胞肺がんのデュルバルマブ併用術前療法

単剤療法よりも併用療法を支持する橋渡し研究の知見

アブストラクト番号:CT011

早期非小細胞肺がん(NSCLC)の術前療法において、抗PD-L1モノクローナル抗体のデュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)と他の新規薬剤との併用免疫療法はデュルバルマブ単剤よりも優れた効果を示すことが、2022年米国がん学会(AACR)年次総会で2022年4月11日にテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者により報告された。

多施設共同ランダム化第2相NeoCOAST臨床試験で、術前療法のデュルバルマブ単剤、および新規免疫療法薬である抗CD73モノクローナル抗体のオレクルマブ、抗NKG2Aモノクローナル抗体のモナリズマブ、抗STAT3アンチセンスオリゴ核酸のダンバチルセンそれぞれと併用した療法を評価した。本研究では統計学的に治療群を比較することはできなかったが、いずれの併用療法でもデュルバルマブ単剤療法と比較して高い病理学的奏効率(MPR)が得られた。

「免疫併用療法がこの患者集団に対し術前療法で有効であるというエビデンスが増えつつあり、本研究はそのようなエビデンスを基礎としています」と胸部・頭頸部腫瘍学助教で本研究の筆頭著者であるTina Cascone医学博士は語る。「究極的には、がんが再発せず延命できる機会を患者に提供したいのです」。

NeoCOAST試験は、Cascone博士が昨年報告したニボルマブ(販売名:オプジーボ)とイピリムマブ(販売名:ヤーボイ)の併用でニボルマブ単剤よりも高い奏効が導かれることを示す第2相NEOSTAR試験の結果や、Checkmate-816試験に基づくニボルマブとプラチナベース化学療法の併用が2022年3月に承認されたことなど、非小細胞肺がんの術前療法における最近の進歩への追い風となった。過去に第2相COAST試験で評価されたデュルバルマブ併用療法は切除不能なステージ3の非小細胞肺がんに有効であることが示され、より早期の病期で評価する根拠を与えている。

NeoCOAST試験には、2019年3月から2020年9月の期間に未治療で切除可能(2cm以上)なステージ1~3Aの非小細胞肺がん患者84人が登録された。患者の多くは男性(59.5%)で喫煙歴があった(89%)。年齢中央値は67.5歳、人種内訳は白人が89%、黒人が6%、アジア系が2%、その他が2%であった。患者83人は、デュルバルマブ単剤または他の治療法との併用による28日サイクルの術前療法を1回受けた。

主要評価項目は、試験分担医師が評価する病理学的奏効率(MPR)で、術時に切除した腫瘍組織および採取したリンパ節に残存する生存腫瘍細胞が10%以下と定義された。副次的評価項目として、試験分担医師は病理学的完全奏効(pCR)、すなわち生存腫瘍細胞の完全な消失を評価した。探索的評価項目は腫瘍、糞便、血液のバイオマーカーなどであった。

併用療法はすべて、単剤療法よりもMPRとpCRの率が数値的に高く、併用群間の奏効率に統計的な有意差は認められなかった。

・デュルバルマブ単剤療法を受けた患者はMPRが11.1%、pCRが3.7%で、これは他の単剤療法試験の結果と同等であった。
 ・併用療法のMPRは19%(オレクルマブ)〜31.3%(ダンバチルセン)、pCRは9.5%(オレクルマブ併用)〜12.5%(ダンバチルセン併用)であった。モナリズマブとの併用療法はMPRが30%、pCRが10%であった。

デュルバルマブ単剤投与群の安全性プロファイル(治療関連有害事象は患者の34.6%に認められた)は抗PD-1/PD-L1抗体に関する既報データと同程度であった。いずれの併用療法においても、新たな安全性のシグナルは検出されなかった(治療関連有害事象は患者の43.8%から57.1%に認められた)。

病理学的奏効(MPR)は、オレクルマブとモナリザブ併用群でベースライン時の腫瘍のPD-L1発現率が1%以上であることと関連していた。オレクルマブ(抗CD73抗体)併用療法群では、ベースラインの高いCD73発現が病理学的腫瘍退縮と関連しており、他の研究で既に認められているように、治療により腫瘍細胞上のCD73発現が減少した。また、オレクルマブ併用療法では、ベースラインと比較して治療時の腫瘍中心部のナチュラルキラー(NK)細胞およびCD8 T細胞の密度が高く、腫瘍微小環境でエフェクター細胞の浸潤が増加することが示唆された。

ベースラインと治療後の血液サンプルのトランスクリプトーム解析により、2つの併用群で異なる免疫細胞のシグネチャーが明らかになった。また、オレクルマブ併用群では、病理学的奏効(MPR)が得られた患者において、B細胞活性化およびT/B細胞共刺激経路に関与する遺伝子のアップレギュレーション(上方制御)が、病理学的奏効(MPR)が得られなかった患者よりも顕著であった。モナリザブ(抗NKG2A)併用群では、治療時の末梢血で、NK細胞動員やT細胞動員に関連するケモカインのCXCL9CXCL11の上方制御がみられた。

「われわれの研究は、橋渡し研究の知見を踏まえてデザインされた臨床試験が、免疫療法をベースとする新規併用療法をより大規模な試験へと迅速に進めるにあたり、いかに後押しできるかを証明するものです」とCascone博士は語る。「早期非小細胞肺がん患者の再発リスク低減と治癒率向上に向けて取り組んでいるので、このような初期の研究結果を心強く思っています」。

本研究の限界として、評価項目が探索的であること、サンプルサイズ(標本の大きさ)が小さいこと、中央判定を経ずに試験分担医師が結果を評価したことが挙げられる。

これらの結果と最近承認された術前療法のニボルマブ+化学療法に基づき、Cascone博士が研究責任医師を務めるランダム化追跡調査試験であるNeoCOAST-2試験が開始された。現在、切除可能なステージ2A~3Aの非小細胞肺がん患者を対象に、術前療法としてデュルバルマブと化学療法およびオレクルマブまたはモナリザブを併用し、その後、外科手術と補助療法のデュルバルマブおよびオレクルマブまたはモナリザブを投与する試験が行われている。

本研究は、デュルバルマブ、オレクルマブ、モナリズマブを開発したアストラゼネカ社(Innate Pharma社との共同開発)の資金提供を受けている。Cascone博士は、MedImmune社/アストラゼネカ社のコンサルティング/アドバイザリー業務を行い、企業サポートや研究コンサルティング契約をしていることを報告している。共著者一覧とその開示情報はこちら

翻訳松長愛美

監修川上正敬(肺癌・分子生物学/東京大学医学部附属病院 呼吸器内科)

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