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エンハーツ、HER2低発現乳がんでも試験成功

エンハーツは臨床試験で生存期間を延長させ腫瘍増殖を遅延させた

・HER2低発現乳がんにおける初の試験結果

・エンハーツは細胞傷害性化学物質と結合した抗体医薬品

・アストラゼネカ社は適応拡大の審査に向けて規制当局と協議

がん治療薬であるエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン、アストラゼネカ社)が、治療選択肢の少ない乳がん女性患者にきわめて有効であると示されたことから、さらに多くの潜在的な患者にも道が開かれつつある。

2月21日、日本の第一三共株式会社と開発および商業化で提携しているエンハーツが、HER2タンパク質が低発現している転移性乳がんの生存期間を延長させ、進行を遅らせることが発表された。

標準化学療法と比較した改善結果には「臨床的意義」があったとして、後期臨床試験の詳細な結果は、まだ公開されていない医学学会で発表される予定である。

本薬剤の適応拡大に向けた審査が迅速に行われるよう規制当局に働きかけるとのことである。

本試験は腫瘍が他部位に転移したHER2低発現患者に限定されているが、アナリストらは、試験結果が良好なことから、将来的には同疾患の早期での適応が見込まれ、新たに年間数十万人の患者が対象となる可能性があると述べている。

今回の発表により、アストラゼネカ社は、がん治療薬開発における高い成功率のおかげで、世界で最も急成長している大手製薬会社の一つとして、アナリストの間でその地位を高めることになりそうだ。

同社は、広く使われているCOVID-19ワクチンの売上が減少しているにもかかわらず、肺腫瘍に対するタグリッソ(一般名:オシメルチニブ)などのがん治療薬、腎臓病や希少疾患の治療薬により、2022年の連結収益が増加すると予測している。

同社の株価は10時44分(グリニッジ標準時間)に2.1%上昇したが、これはストックス欧州600ヘルスケア株指数(SXDP)の0.15%上昇を上回っており、4回の売買立会で5%の上昇となった。

クレディ・スイスのアナリストは次のように述べた。「HER2低発現乳がんにはこれまで十分な治療が行われておらず、大規模な患者集団が存在します。新たな患者集団からの最高売上額が30億ドルに達する確率は50%と見込まれます」。

アストラゼネカ社は、3年前に最大69億ドル相当の取引で第一三共株式会社が保有するトラスツズマブ デルクステカン(販売名:エンハーツ)の権利を取得した。エンハーツは、世界最大のがん治療薬メーカーであるスイスのロシュ社のADC薬であるカドサイラ(一般名:トラスツズマブ エムタンシン)と比較して、HER2高発現転移性乳がん女性に有効であることが認められている。

Susan Galbraith氏(アストラゼネカ社がん研究開発部門責任者)は次のように語った。「エンハーツは、乳がん分類を再定義し、女性にとって選択肢を増やすことにつながります。今回の試験では3〜4種の治療法を使い果たした女性を対象にしましたが、今後はHER2の低発現および高発現も含めて、より早期の女性にエンハーツを投与する試験が増え、これまで以上に多くの患者が試験対象となるでしょう」。

エンハーツは抗体薬物複合体(ADC)と呼ばれる有望な治療薬のひとつであり、ADCは腫瘍細胞に結合して殺細胞物質を放出する改変抗体である。

エンハーツは、2019年後半に最初の製造販売承認を受けた。さらに、HER2陽性胃がんについても承認を受け、現在は他の胃がん、肺がん、大腸がんに対する試験も行われている。

ロシュ社が開発したハーセプチン(一般名:トラスツズマブ)もHER2受容体をもとにデザインされているが、エンハーツはHER2低発現でも治療可能となるように、より大きな殺細胞効果を発揮するようデザインされている。

翻訳担当者平 千鶴

監修北丸綾子(分子生物学、理学博士)

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