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HER2食道がんの術前化学放射線療法へのトラスツズマブ追加は有効でない

HER2の過剰発現がみられる食道がん患者では、術前化学放射線療法にトラスツズマブを加えても効果がみられないことが第3相試験で明らかにされた。

HER2陽性の食道胃がんは「HER2陽性の乳がんと同じ動きをすることはないし、乳がんに効く薬剤が、同じように食道胃がんにも効くわけではない」とニューヨークのスローンケタリング記念がんセンターのDavid Ilson医師はロイター ヘルスに電子メールで伝えた。

「残念なことではあるが、この試験の否定的な結果から二つのことがわかる」とIlson医師は述べている。「まず、トラスツズマブ単独では局所進行HER2陽性食道胃がんの転帰の改善には不十分であること、次に、この結果は、標準治療とトラスツズマブのような新しい治療薬の追加を比較する臨床試験を慎重にデザインして実施する必要性を強調するものであるということだ」。

Lancet Oncology誌に報告されたように、患者203人(年齢中央値約64歳、男性約85%、白人96%)が、手術に先立ち、トラスツズマブ併用または非併用の化学放射線療法にランダムに割り付けられた。

化学放射線療法として、パクリタキセル投与(1時間かけて50 mg/m²静注)とカルボプラチン投与(曲線下面積2、30~60分かけて静注)を6週間行い、放射線50.4 Gyを28回に分割して照射した。

トラスツズマブを、第1週に4 mg/kg、化学放射線療法実施期間中は5週間にわたり週2 mg/kg、術前に1回6 mg/kg、術後21~56日目から3週間おきに6 mg/kgを13回静注した。

追跡期間中央値は2.8年であった。

無病生存期間中央値は、化学放射線療法単独では14.2カ月であったのに対して、化学放射線療法とトラスツズマブの併用療法では19.6カ月であった(ハザード比0.99)。

グレード3の治療関連有害事象の発現率は、トラスツズマブ群では43%、化学放射線療法群では54%であり、グレード4の発現率は、それぞれ21%、22%であった。両群で最も多くみられたグレード3以上の治療関連有害事象は、血液毒性(56%対57%)または消化器毒性(29%対21%)であった。重篤な有害事象の発現率は、36%対28%であった。

治療関連死は、トラスツズマブ群が5%(気管支胸腔瘻、食道吻合部漏出、肺感染、突然死、特定不能死)、化学放射線療法群が3%(多臓器不全2例、敗血症1例)であった。

有効性の欠如にもかかわらず、著者らは「トラスツズマブが毒性を増加させなかったことは、今後、食道がんを対象として、トラスツズマブと他のHER2標的薬との併用や他のHER2標的薬の使用を検証する試験の正当性を示唆するものである」と述べている。

Ilson医師は、「HER2を標的とする治療を継続するためには、併用戦略が有効であることは明らかである。トラスツズマブにペルツズマブという薬剤を追加しても、進行がんの転帰に有意な改善はみられないため、局所進行がんでこの薬剤を検討する必要があるかどうかは不明である」と述べている。

「転移がんでは、トラスツズマブと化学療法に、最近成績が向上している薬剤であるペムブロリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬を追加したところ、有望なデータが得られた。これは、局所進行がんにもこの併用療法を検討する必要があることを示すものであり、米国では、RTOG/NRGを通じて、そのような試験がデザインされている」と述べている。「トラスツズマブ デルクステカン、マルゲツキシマブ、ザニダタマブ、ツカチニブなど、他の有望な新規HER2標的薬も今後の検討に値すると思われる」。

この試験は、米国国立がん研究所とGenentech社から資金提供を受けたものである。Ilson医師と共著者2名はGenentech社から報酬を受け取っている。

原典:https://bit.ly/3KOaHkQhttps://bit.ly/3KQ3P6p The Lancet Oncology誌、オンライン版2022年1月14日

翻訳担当者渡邉純子

監修野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)

原文掲載日

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