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がん患者の幹細胞移植ドナー拡大へ期待:クローン性造血とDNMT3A変異の新発見

● 「クローン性造血」状態を来たしている人の多くが、幹細胞移植の安全なドナーになり得ることがわかった。

● 特定の遺伝子変異がある幹細胞を移植することにより移植を受けた患者の生存期間が改善されることが明らかになり、研究者を驚かせている。

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クローン性造血(clonal hematopoiesis:CH)と呼ばれる無症候性の血液所見を呈するドナーから幹細胞移植を受けた人に、その先健康上の問題が生じるリスクがあるか否かについては、長い間がん専門医の間で意見が分かれていた。こうした懸念から、クローン性造血を有する人をドナーから除外する移植センターも現われるほどだ。

クローン性造血ドナーからの移植はそのほとんどが安全かつ有効であることが、ダナファーバーがん研究所の新たな研究で示された。さらに驚くことに、特定の遺伝子変異がある細胞を移植したレシピエントががんを再発するリスクは、クローン性造血をもたないドナーから移植した場合よりもしばしば低いことがわかった。Journal of Clinical Oncology誌のオンライン版に掲載されたこの結果により、ドナー候補の選択肢が広がる可能性がある。

クローン性造血は、白血病に関連した遺伝子に変異があれば、白血病やその他の血液関連のがんに罹患していなくても年齢に伴い起こる状態である。これまでクローン性造血は、おもに移植歴のない患者を対象に研究が進められてきた。それによれば、40歳以上では、このような遺伝子変異のある血液細胞が少数存在することは一般的である。しかし、こうした遺伝子変異の1つをもつ血液細胞の割合が高ければ、将来、血液腫瘍および心血管疾患などのがん以外の疾患を発症するリスクが増大する。

過去の研究から、クローン性造血を伴うドナーから採取した幹細胞がレシピエントに生着することはわかっているものの、移植レシピエントにおける白血病リスクが上昇するかや移植後の免疫機能にどのような影響が現れるかは明らかになっていない。レシピエントにもドナーのクローン性造血による健康上のリスクが伝わるのではないかという懸念から、クローン性造血のある高齢者をドナーとして受け入れることに難色を示す医師もいる。 

「高リスク造血器(血液)悪性腫瘍患者の多くにとって、ドナーからの血液細胞の元となる)造血幹細胞移植が治癒を得るための唯一の望みです」本試験の統括著者であるダナファーバーがん研究所のR. Coleman Lindsley医学博士はそう話す。「45歳未満のドナーから移植を受けた患者さんはその後、よりよい経過をたどる傾向にあります。若いドナーがみつからなければ適合率の高い、より高齢の兄弟や親族が候補になり得ます。

クローン性造血がドナーからレシピエントへ伝わる可能性を示す強力な証拠がある一方、それによりレシピエントが受ける影響についてはほとんどわかっていません。今回の試験で私たちが調べたのはその影響についてです」。

試験ではまず、40歳以上のドナー1,727人の幹細胞検体それぞれにおいて、クローン性造血に高頻度にみられる変異遺伝子46個を分析した。その結果、388人のドナーの(22.5%)にクローン性造血があることがわかり、最も高頻度にみられた変異は、DNMT3A(ドナーの14.6%)およびTET2(同5%)遺伝子であった。

次に、クローン性造血があるドナーのうち102人の遺伝子変異が、移植後3カ月および1年経過したレシピエントでも検出されるかを調べた。

Lindsley氏は「ドナー由来のクローン性造血クローン細胞の85%が生着していることがわかりました」と説明する。「意外なことに、移植細胞の1%以上にDNMT3A変異がある場合、クローン性造血のないドナーから移植した患者さんと比べ、生存期間が延長しました。これはDNMT3A変異がある細胞を移植した患者さんの再発率が低くなるためです」。

クローン性造血を伴う非移植患者には有害な変異が、移植でクローン性造血を獲得した患者では有益に働くという一見矛盾する発見は、DNMT3Aの細胞内での関与によって説明できるかもしれない。DNMT3A遺伝子の変異は、変異以外は健康な人において免疫系の活性や炎症を増強させ、心筋梗塞や脳卒中などの疾患リスクを助長することが知られている。その一方、幹細胞移植では、まさに免疫活性の増強がレシピエントのがん細胞を殺傷するために必要となる、とLindsley氏は説明する。

「クローン性造血の状態は多様であり、人によりさまざまな様相を呈します。DNMT3A変異のあるクローン性造血を理由にドナー候補から除外すべきではありません。このようなドナーからの移植は悪影響がないどころか恩恵が得られるとわかったのですから」とLindsley氏は言う。

今回の試験では、DNMT3A変異をもつドナーから移植した人の多くが良好な生存転帰を示した。この結果をきっかけに、幹細胞移植以外の領域においても優れた治療法が生まれる可能性がある。免疫療法薬とDNMT3Aを標的とする薬剤を組み合わせれば、腫瘍細胞を攻撃する強力な免疫系を動員させることができるようになるかもしれない。

この試験は、米国国立衛生研究所(助成金K08CA204734、P01CA229092、K08HL136894、R01HL156144)、およびDamon Runyon Cancer Research Foundation、Alan and Lisa Dynner Fund、James A. and Lois J. Champy Family Fund、Jock and Bunny Adams Education and Research Fund、Ted and Eileen Pasquarello Tissue Bank in Hematologic Malignancies、Connell and O’Reilly Families Cell Manipulation Core Facilityの支援を受け実施された。

翻訳担当者伊藤美奈子

監修吉原哲(血液内科・細胞治療/兵庫医科大学)

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