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PARP阻害剤はBRCA1/2陽性、HER2陰性の高リスク早期乳がんの無病生存を有意に延長

【米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解】

「OlympiA試験の結果は、高リスク早期乳がん患者におけるBRCA遺伝子変異検査の必要性を強調するものです。これらの結果は、高リスク初期ステージ乳がん患者の治療決定に重要なインパクトを持つ可能性があり、治療決定には術後療法としてのPARP阻害薬の使用もおそらく含まれます」と、ASCO会長Lori J. Pierce 医師(FASTRO:米国放射線種学会フェロー、FASCO:米国臨床腫瘍学会フェロー)は述べた。

標準的な術前/術後化学療法、外科手術、必要な放射線療法を完了した後にPARP阻害薬オラパリブ(販売名:リムパーザ)による治療を1年間行うことにより、BRCA1/2に生殖細胞系列遺伝子変異をもつHER2陰性高リスク早期乳がん患者の無浸潤疾患生存割合(IDFS)と無遠隔転移生存割合(DDFS)が有意に延長したとする新しい研究が、2021米国臨床腫瘍学会(ASCO)年会で発表される。

【試験の概要】

注目点:特定の乳がん患者における術前/術後化学療法完了後の術後療法としてのPARP阻害薬の効果

研究対象:BRCA1/2に生殖細胞系列変異(遺伝性変異)をもつHER2陰性高リスク早期乳がん患者1,836人

結果:事前に設定した中間解析時点では、推定3年無浸潤疾患生存割合(再発性浸潤性乳がんおよび二次がんのない生存患者の割合)はオラパリブ投与群で85.9%であったのに対してプラセボ投与群では77.1%であった。中間解析時点での追跡期間中央値は2.5年であった。

また、推定3年無遠隔転移生存割合は、オラパラリブ投与群、プラセボ投与群それぞれで87.5%、80.4%であった。

結果の意義:これらの結果は、治癒可能な早期で診断された生殖細胞系BRCA1/2変異のあるHER2陰性乳がんで、術後化学療法を必要とするレベルの再発リスクがある患者における術前/術後化学療法の標準的ケアを変える可能性がある。

【主な知見】

OlympiA試験において、標準治療に加えてプラセボ投与を受けた患者の推定3年無浸潤疾患生存割合(再発浸潤性乳がんおよび新しい二次がんのない生存患者の割合)は77.1%であった。経口PARP阻害薬であるオラパリブを1年間追加投与された場合には、推定3年無浸潤疾患生存割合は85.9%に改善された。推定3年無遠隔転移生存割合も、プラセボ投与で80.4%であったのがオラパリブ投与では87.5%と改善されていた。

推定3年全生存率(OS)はオラパリブ投与群の方が高かったが、追跡期間中央値2.5年の中間解析時点では統計的に有意な差ではなかった。

有害事象(AE)はこれまでにオラパリブ投与で報告されているものと整合するものであった。オラパリブ投与による重篤な有害事象(SAEs)の発生頻度はプラセボ投与に比べて高くはなかった。

「PARP阻害剤の“術後療法”としての生存期間に対する効果についての初めての報告となるOlympiA試験の結果は、BRCA1/2に生殖細胞系列変異のある乳がんで、術後あるいは術前化学療法を必要とするレベルの再発リスクがある患者に対する標準的ケアに新しい方法を加えることができる可能性を示唆しています」と、発表の筆頭演者でありInstitute of Cancer Research(ロンドン)とBreast Cancer Now Research Unit at Guy’s Hospital King’s College Londonの乳がん研究部門長および乳がんNow Toby Robins研究センター長であるAndrew Tutt教授(医学士、博士、医学アカデミーフェロー)は述べた。

米国では、乳がんの5-10%が生殖細胞系列遺伝子変異と関連している。これらの変異を持つ初発乳がんは、悪性度が高い高リスクな疾患である可能性がある。外科手術、放射線治療や化学療法を含む複数の治療手段を終了しても、再発率が高くなることがある。有効な新規治療法に対するニーズは未だ満たされていない。

ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)を阻害する経口標的治療薬であるオラパリブは、BRCA1あるいはBRCA2に生殖細胞系列変異をもつ遠隔転移を有する乳がんを適応として既に承認されている。

OlympiA試験はPARP阻害剤の術後療法としての有効性に関する初めての第3相試験であり、化学療法薬の組み合わせを含む複数の標準的治療手段を終えたBRCA1あるいはBRCA2に生殖細胞系列変異をもち再発リスクの高い早期乳がん患者を対象としている。

【試験について】

ランダム化二重盲検第3相試験であるOlympiA試験には、HER2陰性であり生殖細胞系列のBRCA1/2遺伝子変異を有する高リスク早期乳がん患者1,836人が登録された。これには、トリプルネガティブおよびホルモン受容体陽性の乳がんを含む。

すべての試験参加者は、早期ステージの乳がんに対して標準的な術後あるいは術前化学療法、外科手術、必要とされる放射線療法を既に受けていた。試験参加者は定められた病理学的選別基準により選ばれた。この基準はトリプルネガティブおよびホルモン受容体陽性の乳がんについては異なるが、浸潤性疾患の再発リスクの低い患者を除外するようにデザインされた。参加者はオラパリブあるいはプラセボのいずれかを1年間投与されるように無作為に割り付けられた。

主要評価項目は無浸潤疾患生存割合であり、副次的評価項目は無遠隔転移生存割合と全生存率であった。事前に計画された中間解析の結果が独立したデータ監査委員会によりレビューされた後に、追跡期間中央値2.5年の時点で早期に報告された。

OlympiA試験は、Breast International Group (BIG)、Frontier Science & Technology Research Foundation (FSTRF)、NRG Oncology (米国国立がん研究所が支援する全米臨床試験ネットワークグループ)とスポンサー企業により世界的にコーディネートされた産学連携による試験である。

【次のステップ】

この試験に参加した患者の全生存および長期安全性評価項目に対する影響について追跡調査が継続される。

翻訳伊藤彰

監修下村昭彦(乳腺・腫瘍内科/国立国際医療研究センター 乳腺腫瘍内科)

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