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乳がん患者それぞれの健康負荷への対応には、フォローアップケアの個別化が必要

【ESMOプレスリリース】

乳がんがほぼ治癒可能な疾患となり、早期発見・早期治療のおかげでヨーロッパのほとんどの地域で診断後10年以上生存している女性が70%以上となる中、がん罹患後の生活の質はペイシェントジャーニーの重要な側面となっているが、現在のフォローアップの基準では十分な対応ができていない可能性がある。乳がんサバイバーが治療終了後に経験する症状の負荷には大きな違いがあることから、個々の患者に合わせたフォローアップケアの必要性があることを明らかにした研究が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer)2021バーチャル学会で発表された。

筆頭著者で、アムステルダムにあるオランダがん研究所のKelly de Ligt氏は、本研究の根拠について次のように述べている。「フォローアッププログラムは国ごとに異なります。例えばオランダでは、乳がんサバイバーは、5年間(若年者の場合は10年間)のフォローアップ期間に、治療を担当した医師による年に1回の診察を受けます。これまでの研究では、治療終了後に経験した副作用を独立した項目で評価していましたが、実際には、サバイバーは通常複数の症状を経験しており、それらが積み重なって日常生活に大きな負担となっています。私たちは、健康関連のQOL(生活の質)に対する全体的な負荷を測定し、積極的な症状管理が必要な人をよりよく知るためのパターンがあるかどうかを確認したいと思いました」。

オランダのすべてのがん患者の、診断と治療に関する包括的な情報が含まれている「オランダがんレジストリ」から、ステージIからIIIの乳がんで、術後化学療法の有無にかかわらず外科的治療を受け、診断後1年~5年の女性が選ばれた。参加した全404人のサバイバーに、疲労、吐き気、痛み、息切れ、不眠、食欲、便秘、下痢、感情や認知症状など、経験した負荷について質問した。

回答を分析した結果、乳がんサバイバーは、症状の負荷が軽度、中程度、高度という3つの主要なグループに分類された。de Ligt氏は、「患者のほぼ3分の1が属する負荷が軽度のグループでは、同じ質問票に回答したオランダの一般女性1,300人の代表サンプルで見られた平均値と比較して、症状による影響が小さいことがわかりました」と説明する。「これほど多くのサバイバーが、オランダの平均的な女性と同じくらい、あるいはそれ以上に良好な健康状態であることにとても驚きました」。さらに研究参加者の55%が、負荷中程度のグループに分類され、疲労、不眠、認知症状スコアがわずかに悪かったものの、一般の人々と同様の結果が得られた。

一方、負荷が高度のサブグループでは、de Ligt氏は観察された結果を憂慮した。「このグループは研究参加者の15%と最も少ないグループでしたが、それにもかかわらず、6人に1人の女性がすべての症状で一般集団よりも悪いスコアを示し、その差は15〜20ポイントと、統計的に有意であるだけでなく、臨床的にも重要であると考えられるほど大きかったのです」と説明している。de Ligt氏によると、今回の結果は、がん患者のフォローアップにおける個別化されたアプローチの必要性を裏付けるものであり、中には診断後5年を経過してもなお特別な配慮を必要とする患者もいる。

さらに、心臓病や糖尿病などの併存疾患を持つ患者は、症状の負担が大きいことがわかった。「今回の解析では、この関連性が非常に強かったため、患者が報告した症状負荷のレベルと、受けた治療の種類を関連づけることができませんでした。しかし、今回の研究では、症状負荷と併存疾患を同時に測定したため、これらの結果のみで結論を出すことはできません」と、de Ligt氏は付け加えた。「今後の研究では、乳がんの治療開始前と治療後に、患者の健康関連のQOLをPROM(Patient Reported Outcome Measures)で測定し、治療の効果が測定できるようにする試みが必要です」。

本研究に関与していないドイツのLMUミュンヘン大学病院の乳がん専門家であるNadia Harbeck氏は次のようにコメントしている。「臨床医としては、患者さんが受けた治療と、その患者さんが属する負荷で分類したグループとの間に関連性がないことが明らかになったことに驚きました。 というのも、例えば、治療が手術と放射線治療のみであったり、手術前後に何サイクルもの全身治療を受けた場合など、その治療内容は5年間のフォローアップ期間中に患者さんが経験する症状の負荷に影響を与えると考えられるからです。より多くの女性たちからデータを集めることで、より多くの知見を得ることができるでしょう。この研究を他の国でも行い、患者さんの回答に文化的・社会的な要因が影響しているかどうかを確認することは興味深いことです」と述べている。

同氏はさらにこう付け加える。「私の経験では、ドイツでは標準的なフォローアッププロトコルの一部である四半期ごとの外来診療を必要としない患者さんもいれば、医師との定期的な対話を必要とする患者さんもいます。そういった患者さんを見分けることは必ずしも容易ではありません。というのも、治療直後の患者さんは通常の生活に戻るのに精一杯で、身体的・精神的な負担を感じていなかったり、抑えていたりすることが多いからです。また、患者さんの中には、自分の病気の経験について自然には話してくれない人もいます。患者さんたちの経過観察期間におけるさまざまな段階で、この点に関する女性のニーズを具体的に評価すれば、再発のリスクだけでなく、長期的な身体的・精神的状態に合わせたケアを提供できることを、この新しいデータは、示しています。フォローアップケアに協力する婦人科医、家庭医、看護師は、これらの知見を意識しておくべきです」。

乳がん患者の治療後の経過における外来医療機関の重要な役割は、2003年から2013年の間にフィンランドのオウル大学病院で治療を受けた621人の乳がん患者のうち、事前に計画された管理訪問でがんの再発が発見されたのは少数(25%)であったことを明らかにした別の研究によって確認されている。95例の再発のうち半数以上は、患者さんが新たに感じた症状(最も多いのは痛み)について医師に連絡した結果、発見された。

「特に最初の診断から時間が経過している場合には、がんとの関連性を見逃さないために、何か異常を感じたら、乳がんサバイバーであることを伝えた上で、遅滞なく医療従事者に伝えることが重要です」とHarbeck氏は強調した。「抗がん剤治療がより効果的になるにつれ、転移のパターンは年々変化し、どの臓器にも影響を及ぼす可能性があるため、注意すべき主な症状や体の部位は1つだけではありません。そのため、患者さんには十分な情報を提供し、必要に応じて予定していた診察日以外にも医師に気軽に相談できるようにしておく必要があります」と述べている。

翻訳平沢沙枝

監修尾崎由記範(腫瘍内科・乳腺/がん研究会有明病院 乳腺センター乳腺内科)

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