NCIが支援するコロナウイルス臨床試験リスト

臨床試験とは、ヒトを対象にする研究試験のことです。臨床試験を通じて、医師は治療法や患者の生活の質を向上させる新たな方法を見出します。

NCIは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症(COVID-19)患者に対する有望な治療法を調べ、疾患による身体への影響の詳細を知るための臨床試験を支援しています。臨床試験の中には、がん患者のみを対象としたものもあります。臨床試験が自分に適しているか判断するには、担当医が手を貸してくれます。

臨床試験17件中の、1~17件目

【1】 進行・転移固形腫瘍、または再発・難治性血液悪性腫瘍を有する成人参加者と、そのうち新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を合併した患者を対象としたTAK-981の安全性、忍容性、および薬物動態(Pharmacokinetics:PK)を評価する試験

本臨床試験の主要目的は、進行または転移固形腫瘍・リンパ腫患者を対象にTAK-981の単剤投与の安全性と忍容性を、用量漸増とがん治療の拡大投与パートにおいて評価すること、ならびにCOVID拡大パートでは、重症急性呼吸器症候群(SARS)を起こすコロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルス量について、TAK-981投与から8日以内の変化を評価することです。

施設: 7施設

【2】 重度COVID-19入院患者(がんの有無を問わず)を対象としたPRE-VENT試験

本臨床試験は、がんの有無を問わず、重度COVID-19入院患者を対象に、パクリチニブ [pacritinib]の有効性と安全性を評価する第 3 相ランダム化二重盲検プラセボ対照多施設共同試験です。

施設:マウント・サイナイ・アイカーン医科大学、ニューヨーク州ニューヨーク市

【3】 COVID-19患者を対象とした治療薬としての、ヒドロキシクロロキンのプラセボとの比較試験

本第2相試験では、COVID-19患者における症状の重症度の軽減に、ヒドロキシクロロキンがどの程度の効果を示すのかが研究されています。ヒドロキシクロロキンは、自己免疫疾患の治療薬として承認されています。自己免疫疾患は、免疫系が誤って人体を攻撃する疾患である。ヒドロキシクロロキンは、免疫系がCOVID-19と闘う際に、その過剰反応を抑制できる可能性があると考えられます。本臨床試験結果から、医師はCOVID-19治療薬としてのヒドロキシクロロキンに関する詳細が明らかになるでしょう。

施設:スローン・ケタリング記念がんセンター、ニューヨーク州ニューヨーク市

【4】 重度COVID-19患者における呼吸不全・死亡の予防を目的とするトシリズマブの投与試験

本第2相試験では、重度COVID-19患者の呼吸不全や死亡の予防に対して、トシリズマブがどの程度の効果を示すのかが研究されています。COVID-19の合併症はSARS-CoV-2が肺を損傷することで生じます。また、こうした損傷の一部は、免疫系がこのウイルスを排除しようとする際に生じる過度の炎症反応によって引き起こされる可能性があります。インターロイキン6(IL-6)と呼ばれるタンパク質は、この種の炎症に重要な役割を果たしており、トシリズマブは、IL-6が細胞に接着し、炎症を引き起こして細胞を損傷することを阻害します。したがって、トシリズマブはIL-6を阻害することにより肺の損傷を抑制し、人工呼吸器治療の必要性を減少させると考えられます。すでに人工呼吸器を装着している患者に対し、トシリズマブにより病状が改善され、人工呼吸治療から離脱できると期待されます。

施設:スローン・ケタリング記念がんセンター、ニューヨーク州ニューヨーク市

【5】 COVID19患者におけるN-アセチルシステインの投与試験

本第2相試験では、治療に反応しない(難治性)重度COVID-19の治療において、集中治療室にいて人工呼吸器を使用している患者と集中治療室にはいないが大量の酸素吸入を必要とする患者で、N-アセチルシステインがどの程度の効果を示すのかが比較されます。先行研究から、SARS-CoV-2 が感染症やその他の疾患に対して人体を防御する免疫系を抑制することで、作用することが示唆されています。また、ウイルスが原因で血液中のリンパ球数が減少しているときに、N-アセチルシステインはリンパ球数を増加させることが示されています。本臨床試験から、N-アセチルシステインがSARS-CoV-2 に対して十分に有効であるかどうか、具体的には患者が集中治療室から出る、人工呼吸器を外す、または、人工呼吸器によるサポートや集中治療室での管理を予防できるかどうかが明らかになる。

施設:スローン・ケタリング記念がんセンター、ニューヨーク州ニューヨーク市

【6】 中等度および重度COVID-19患者の治療を目的とするバリシチニブ、プラセボ、および抗ウイルス薬による治療

本第2相試験では、中等度または重度COVID-19患者の治療法としてのバリシチニブ+抗ウイルス薬の併用療法の効果が研究されています。ヒドロキシクロロキン、ロピナビル・リトナビルや、 レムデシビルなどの抗ウイルス薬療法は、SARS-CoV-2が引き起こす感染症に対して効果がある可能性があります。バリシチニブは肺の炎症を抑える薬で、バリシチニブ+抗ウイルス薬の併用投与は抗ウイルス薬単剤療法と比較して、疾患の重症化リスクを減少させ、また、たとえ重症化しても人工呼吸器装着の必要がなくなる可能性があります。

施設:2施設

【7】 重度COVID-19患者を対象とした経口薬セリネクソールの有効性と安全性の評価

本臨床試験の主要目的は経口薬セリネクソール(KPT-330)低用量投与による有効性の評価、ならびに、重度COVID-19患者の臨床的回復、ウイルス量、入院期間、重症度、および死亡率をプラセボと比較して評価することです。

施設:ウェイン州立大学カルマノスがん研究所、ミシガン州デトロイト市

【8】 入院COVID-19患者におけるサリルマブの有効性と安全性の評価

第2相試験:本臨床試験の主要目的は、入院COVID-19成人患者を対象に、疾患の重症度に関わらず、対照群と比較したサリルマブの臨床的有効性を評価することです。

第3相試験第1集団:本臨床試験の主要目的は、機械的人工換気を受けている重度COVID-19の成人入院患者を対象に、対照群と比較したサリルマブの臨床的有効性を評価することです。

第3相試験第2集団:本臨床試験の主要目的は、機械的人工換気を受けているCOVID-19の成人入院患者を対象に、対照群と比較したサリルマブの臨床的有効性を評価することです。第3相試験第3コホート:本臨床試験の主要目的は、ベースライン時に機械的人工換気ではなく高度酸素治療*を受けている入院COVID-19成人患者を対象に、対照群と比較したサリルマブの臨床的有効性の評価である。(*高度酸素治療(High intensity oxygen therapy)の定義は、10 L/分以上の酸素流量を有する非再呼吸式マスクの使用、50%以上のFiO2を有する高流量システムの使用、または非侵襲的換気療法(例.BiPAP™)もしくは低酸素血症治療用経鼻的持続陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure:CPAP)の使用です。)

施設:Clinical Trials.govを参照。

【9】 がん患者を対象としたCOVID-19の治療におけるTL-895+標準治療 対 標準治療の比較試験

本臨床試験では、チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である TL-895を評価します。本臨床試験は、第1相安全性導入期試験(第1部)とTL-895 の推奨用量を決定する第2相試験(第2部)から成る2部構成試験です。第1部では、TL-895を非盲検で指定用量を7日間単位で2サイクル、継続的に経口投与し、用量段階を最大3段階評価します。第2部では、適格患者をTL-895+標準治療群とプラセボ+標準治療群に1:1の割合でランダムに割り付けます。臨床試験担当医師と治験依頼者は臨床試験期間中、各群患者の割り付け試験を盲検化します。

施設:2施設

【10】 入院COVID-19患者を対象としたアカラブルチニブ+最善の支持療法と最善の支持療法の比較試験

CALAVI試験では、COVID-19の治療において、アカラブルチニブ+最善の支持療法の併用療法の安全性、有効性、および薬物動態を検証する試験です。

施設:オハイオ州立大学総合がんセンター、オハイオ州コロンバス市

【11】 過去1年以内に免疫抑制状態となったCOVID-19陽性のがん患者に対する治療薬ロピナビル・リトナビルの投与試験

本第2相試験では、COVID-19陽性のがん患者で、過去1年間に免疫系が弱まり(免疫抑制)、かつ、COVID-19が引き起こす軽度または中等度の症状を有する患者の治療において、ロピナビル・リトナビルがどの程度の効果を示すのかが研究されています。ロピナビル・リトナビルは、がん患者のCOVID-19の症状の軽減や、重症化の予防に有用な可能性があります。

施設:オレゴン健康科学大学ナイトがん研究所、オレゴン州ポートランド市

【12】 がん患者における軽度または中等度COVID-19の治療法としてのリンタトリモド+IFNα-2bの併用療法

本第1/2a相試験では、軽度または中等度のCOVID-19を有するがん患者の治療において、リンタトリモド+インターフェロン(IFN)α-2bの副作用を検証します。IFNαはウイルスに対する防御にとって重要なタンパク質で、ウイルス感染を排除できるよう免疫応答を活性化させます。リンタトリモドは、通常ウイルス感染時に活性化される免疫経路を活性化することで、ウイルス感染を再現するように設計された二本鎖リボ核酸(RNA)で、リンタトリモド+IFNα-2bの併用療法により、免疫系が活性化し、ウイルスの複製と放出を抑制する可能性があります。

施設:ロズウェル・パークがん研究所、ニューヨーク州バッファロー市

【13】 SARS-CoV-2感染症患者におけるサイトカイン放出症候群の治療薬トシリズマブ

本第3相試験では、SARS-CoV-2感染症患者におけるサイトカイン放出症候群(cytokine release syndrome:CRS)の治療において、トシリズマブ+標準治療の併用療法と標準治療単独との効果を比較します。CRSは、SARS-CoV-2感染症に反応して免疫系の細胞が産生する物質(サイトカイン)が過剰に放出されることで生じる重篤になりうる疾患である。トシリズマブは人体の免疫反応を抑制し、炎症を抑える可能性があります。トシリズマブ+標準治療の併用療法は標準治療単独と比較して、SARS-CoV-2感染症の患者におけるCRS治療法として有効な可能性があります。

施設:エモリー大学病院ウィンシップがん研究所、ジョージア州アトランタ市

【14】 放射線治療を受けている患者におけるCOVID-19予防を目的としたヒドロキシクロロキンとプラセボの比較試験

本2相試験では、放射線治療を受けている患者を対象に、SARS-CoV-2感染予防においてヒドロキシクロロキンがどの程度の効果を示すのかが研究されています。ヒドロキシクロロキンは、マラリアの予防・治療薬、ならびに、全身性エリテマトーデスと関節リウマチの治療薬として承認されています。放射線治療を受けている患者は医療従事者や感染している可能性がある他の患者と頻繁かつ密接に接触しているため、SARS-CoV-2に感染するリスクが高まります。また、がん治療を受けている患者は免疫系が弱っていることもあります。がんの放射線治療を受けている患者にヒドロキシクロロキンを投与することで、SARS-CoV-2感染を予防できる可能性を検証します。

施設:7施設

【15】 COVID-19に対する防御としての医療従事者用BCGワクチン

SARS-CoV-2は世界中で急速に蔓延しています。大規模流行は利用可能な病院の収容力に深刻な影響を与え、また、医療従事者への感染がこうした影響を増大させるおそれがあります。従って、継続的な患者ケアの確保には、医療従事者の感染と重症化の予防を目的とする方策が切実に必要とされています。カルメット・ゲラン桿菌(Bacille Calmette-Guérin:BCG)は抗結核ワクチンで、in vitro試験とin vivo試験において他の気道感染症に対する非特異的防御効果があり、罹患率と死亡率が70%も低下したことが報告されました。さらに予備解析では、既存のBCGワクチン接種プログラムがある地域では、COVID-19による発生率と死亡率が低く抑えられているとみられます。BCGワクチン接種により、SARS-CoV-2 の流行期における医療従事者の感染と重症化が抑制される可能性があると仮定されています。

施設:MDアンダーソンがんセンター、テキサス州ヒューストン市

【16】 NCIによるがん患者におけるCOVID-19、NCCAPS研究

本研究では、がんの治療を受け、かつ、SARS CoV-2(COVID-19という疾患を引き起こす新型コロナウイルス)の検査結果が陽性の患者から、血液検体、診療情報、および医用画像を収集します。血液検体、診療情報、および医用画像の収集により、研究者らは、COVID-19ががん治療を受けている患者の転帰にどのような影響を及ぼすか、また、がんの存在がCOVID-19にどのような影響を及ぼすかを明らかにできるかもしれません。

施設:695施設

【17】 急性かつ消散したCOVID-19患者におけるB細胞とT細胞のレパートリーと免疫応答の研究

背景:SARS-CoV-2感染者には、増悪して死亡するという予測不能のリスクが存在する。その結果、自宅隔離可能な患者と病院で治療すべき患者の決定は困難である。こうしたリスクは人体のB細胞とT細胞がウイルスに応答する機序と関連する可能性があると考えられている。B細胞とT細胞は、人体の免疫応答の主要な構成要素である。B細胞とT細胞が人体に有益なパターンでSARS-CoV-2に応答することで回復に至る可能性があり、この有益なパターンの定着が有用な可能性がある。COVID-19ワクチンの臨床試験参加者がワクチンに応答するときに、このような有益なパターンが得られる場合、これは、ワクチンが奏効するという有用な早期の前兆になる可能性がある。目的:免疫細胞がSARS-CoV-2に対して応答する機序を調査する。適格条件:18歳以上の成人で、SARS-CoV-2感染が確認もしくは疑われている、または、SARS-CoV-2 感染歴がある人。また、SARS-CoV-2感染が疑われない健常人。試験デザイン:参加者を診療記録の再調査で選別する。参加者を研究用検査法で検査し、SARS-CoV-2 感染者と非感染者を判定する。この検査法は研究結果の理解用で、参加者への助言用ではない。顕性感染の参加者を通常、病院に隔離する必要がある。それ以外の参加者は、NIHまたは地元の医院や検査施設で採血が受けられる。参加者は採血が週3回まで合計10回受けられ、COVID-19ワクチンの臨床試験開始後にも採血が受けられる。参加者は2カ月毎に最大2年間、電話または電子メールで連絡を受ける。

施設:米国国立衛生研究所臨床センター、メリーランド州ベセスダ市

翻訳担当者 渡辺岳

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/市立岸和田市民病院)、花岡秀樹(遺伝子解析/イルミナ株式会社)

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