FDAが切除不能な大腸がんの初回治療にペムブロリズマブ(キイトルーダ)を承認

本日、米国食品医薬品局(FDA)は、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機能欠損(dMMR)を有する切除不能な大腸がん患者の初回治療薬として、ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)静脈内注射を承認した。今回の承認は,初回治療薬として初めての免疫療法がこの患者集団を対象に承認されたことを意味し,本剤は化学療法を併用せずに投与される。

MSI-HおよびdMMR腫瘍は、細胞内におけるDNAの適切な修復に影響を及ぼす異常を有する。MSI-Hの頻度はがんの種類や病期によって異なり、切除不能な大腸がん患者では約5%にMSI-HまたはdMMR腫瘍が認められる。

「切除不能な大腸がんは、重篤で生命を脅かす予後の悪い疾患である。現在利用可能な,化学療法併用やバイオ製剤併用を用いた治療にはかなりの毒性がある」と、FDAのOncology Center of Excellence室長であり、同局の医薬品評価・研究センターのOffice of Oncologic Diseases室長代理を務めるRichard Pazdur医師は述べ、「特定の患者集団に対して化学療法を用いない選択肢を得たことは、治療における注目すべきパラダイムシフトである」と続けた。

ペムブロリズマブは体内の免疫細胞や一部のがん細胞で認められるタンパク質(PD-1/PD-L1)の細胞経路を標的とすることで作用する。この経路を阻害することで、ペムブロリズマブは体内の免疫系によるがん細胞への攻撃を助け、MSI-HまたはdMMRの切除不能な大腸がんの患者にベネフィットをもたらす可能性がある。FDAは過去に、ペムブロリズマブを他のがん種を適応として承認している。

今回の適応に対するFDA承認は、MSI-HまたはdMMRの切除不能な大腸がん患者307人を対象にペムブロリズマブと化学療法を比較した多施設、国際共同、非盲検、実薬対照、ランダム化比較試験である1試験の結果に基づいていた。本試験では、盲検下独立判定委員会により評価された無増悪生存期間(PFS)の統計学的に有意な改善が示された。PFSの中央値はペムブロリズマブ群で16.5カ月、標準治療群で8.2カ月であった。生存期間への影響を評価するためには、より長期的な解析が必要である。

ペムブロリズマブで多く認められた副作用は、疲労、筋骨格系の痛み、食欲減退、皮膚のかゆみ(そう痒症)、下痢、悪心、発疹、熱(発熱)、咳、息切れ(呼吸困難)、便秘、疼痛、腹痛などである。ペムブロリズマブは、肺(肺臓炎)、大腸(大腸炎)、肝臓(肝炎)、内分泌腺(内分泌障害)、腎臓(腎炎)などの健康な臓器の炎症を含む免疫介在性副作用として知られる重篤な状態を引き起こす可能性がある。高度または生命を脅かす輸注関連反応(インフュージョンリアクション)が現れた患者は、ペムブロリズマブの投与を中止するべきである。妊娠中の女性に対しては、ペムブロリズマブが胎児の発育に悪影響を及ぼす可能性があることを知らせるべきである。授乳中の女性は、乳児に害を及ぼす可能性があるため、ペムブロリズマブを投与されるべきでない。

FDAは本申請を優先審査として指定した。優先審査とは、もし承認されたら重篤な疾患の治療、診断、または予防における安全性または有効性を大幅に改善すると考えられる医薬品について,標準的な申請と比較して、申請の審査に対する全体的な注意と人的資源を向けるものである。この審査に、全販売申請前のデータ提出を効率化するReal-Time Oncology Review、FDAによる申請の評価を容易にするために申請者から自主的に提出するAssessment Aid、一部変更申請の承認を効率化するためにFDAが適格なデータ・サマリーに用いることを可能にするSummary Level Reviewも利用した。FDAは、Project Orbisの一環として、この申請書の審査において各国規制当局の担当者と協力した。

FDAは今回のペムブロリズマブの承認をMerck & Co社に与えた。

ペムブロリズマブの全処方情報(英語)はこちら。(日本の添付文書

翻訳担当者 岩見俊之

監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

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