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タラゾパリブ、BRCA変異陽性進行乳がんの全生存期間の改善示されず

第3相EMBRACA試験の生存期間に後治療が影響したために過小評価の可能性あり

抄録:CTO71

テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが主導した第3相EMBRACA試験の新たなデータによれば、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害薬タラゾパリブ(販売名:TALZENNA)は、遠隔転移を伴うHER2陰性乳がんでBRCA1/2遺伝子変異を有する患者の全生存期間(OS)について統計学的に有意な延長を示さなかったことが明らかになった。この試験に組み入れられた患者の大半は後治療として全身療法を受けたが、そのことが生存転帰の解析に影響を与えた可能性がある。本研究では、タラゾパリブが既存の化学療法よりも患者報告による生活の質(QOL)を改善し、忍容性の高い安全性プロファイルを有するという既報の結果が確認された。

2020年4月26日、米国がん学会(AACR)年次総会にて、乳がん腫瘍内科教授であるJennifer Litton医師により、EMBRACA試験の副次的評価項目の結果が発表された。主要評価項目の解析結果はすでにNew England Journal of Medicine誌に発表されており、それによれば、タラゾパリブを投与した患者の無増悪生存期間(PFS)は化学療法に比較して有意に延長し、PFS中央値は化学療法で5.6カ月に対してタラゾパリブでは8.6カ月であった。その結果、タラゾパリブは2018年に米国食品医薬品局(FDA)に承認された。

EMBRACAは、生殖細胞系列BRCA変異陽性HER2陰性進行乳がん患者を対象としたPARP阻害薬単剤療法の、これまでで最大の試験である。全生存期間の最終解析は、324人の死亡が確認された後に治療意図による(ITT)集団を用いて実施された。タラゾパリブ群では追跡期間中央値44.9カ月で216人が死亡し、化学療法群では追跡期間中央値36.8カ月で108人が死亡した。また、タラゾパリブによる治療効果はBRCAの状態に関わらず同様であった。

「全生存期間は常に重要な評価項目ですが、転移を有する乳がん患者にとっては治療選択肢が多岐にわたるため、課題もあります。これらの患者の多くはPARP阻害薬やプラチナベース療法などによる後治療も受けており、そのことが結果に影響を及ぼした可能性があります」とLitton医師は述べた。

BRCA1/2遺伝子の変異は全乳がんの5~10%に認められ、正常なDNA損傷修復機能に異常をもたらす。PARP阻害薬はもう1つのDNA修復経路を阻害するため、BRCA変異を有する患者ではPARP阻害薬の抗腫瘍作用が増強される。タラゾパリブは、PARP酵素を阻害するだけでなく、酵素をDNAにトラップしてさらなるDNA修復を阻止することによって作用する。

この国際共同第3相EMBRACA臨床試験には、遺伝性BRCA1/2遺伝子変異陽性で局所進行または転移を有する431人の患者が登録された。HER2陽性患者に対しては分子標的療法が承認されているため、試験から除外された。化学療法歴はプラチナベース療法も含めて3種類までが許容された。

患者は、タラゾパリブ群(287人)または単剤化学療法群(144人)に2対1の割合で無作為に割り付けられた。化学療法群には医師の選択(PCT)によりカペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、またはビノレルビンが投与された。参加者の54%がホルモン受容体陽性(HR+)疾患を有しており、46%がトリプルネガティブ乳がんを有していた。BRCA1変異は45%、BRCA2変異は55%であった。

タラゾパリブ群のほぼ半数が後治療としてPARP阻害薬またはプラチナベース療法を受けたのに対して、化学療法群ではほぼ60%であった。PARP阻害薬についてみると、PARP阻害薬は本試験の期間中に各種臨床試験または市販化により入手しやすくなっており、化学療法群の約3分の1がPARP阻害薬による後治療を受けた。これに比較して、タラゾパリブ群でPARP阻害薬を受けたのはわずかに4.5%であった。

プラチナ療法による後治療を受けた患者はタラゾパリブ群では約46%であったのに対して、化学療法群では約42%であった。

後治療によって全生存期間の結果の解釈に交絡が生じた可能性があるため、PARP阻害薬および/またはプラチナベース療法による後治療を考慮に入れた2種類の感度解析が実施された。

この解析により、全生存期間の解析ではタラゾパリブの治療効果を過小評価していたことが示唆された。

患者報告による生活の質評価によれば、全般的健康状態の悪化までの時間は、化学療法群では6.7カ月であったのに対して、タラゾパリブ群では26.3カ月に延長されていたことが明らかになった。

Litton医師は、「タラゾパリブは無増悪生存期間の改善に寄与することから、生殖細胞系列BRCA変異陽性の進行乳がん患者にとっては、依然として有力な選択肢の1つです。それに加えて、1日1回の経口投与という手軽さや、転移を有する乳がん患者の生活の質を改善した実績などの利点があります」と述べた。

グレード3~4の血液学的有害事象が、タラゾパリブ群の56.6%、化学療法群の38.9%で発生した。タラゾパリブ群で報告されたグレード3~4の有害事象の大半は血液学的有害事象であり、支持療法および用量調節によって概ね良好に管理できた。タラゾパリブ群で最も頻度が高かった血液学的有害事象は貧血であり、タラゾパリブ群の54.9%で報告されたのに比較して、化学療法群では19.0%であった。

現在、相関研究が進行中であり、Banner MDアンダーソンがんセンターの乳がんプログラム副部長であるLida Mina医師により、EMBRACAの母集団を用いて腫瘍におけるBRCA変異の接合型およびゲノムにおけるヘテロ接合性の消失が有効性転帰に及ぼす影響を調べた解析も、AACR年次総会にて発表されている。

本研究はMedivation社から資金提供を受けた(Medivation社は2016年9月にPfizer社に買収された)。Litton医師は、Novartis、Pfizer、Genentech、GSK、EMD-Serono、AstraZeneca、Zenith Epigeneticsの各社から研究資金を受け取っている。また、AstraZeneca、Pfizer、Ayala Pharmaceuticals各社の顧問委員を務めているが、いずれも無報酬である。

翻訳角坂功

監修原文堅(乳がん/がん研究会有明病院 乳腺センター 乳腺内科)

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