【COVID-19緊急時下での臨床試験実施に関するFDAガイダンス】

◆下記は米国の食品医薬品局(FDA)のガイダンス全文です◆

COVID-19 による公衆衛生上の緊急時における

医薬品の臨床試験実施に関する

米国食品医薬品局(FDA)ガイダンス
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業界関係者、治験責任医師、治験審査委員会(IRB)向けガイダンス

2020年3月施行 2020年4月16日更新 最新版は原文を参照

(日本語PDFはこちら:COVID臨床試験FDAガイダンス2020.pdf

FDAの検討事項について、意見書は随時提出可能。書面による意見は認可証管理担当者(HFA-305)、FDA、5630 Fishers Lane, Rm1061, Rockville, MD 20852宛に提出。電子媒体による意見は 規制当局宛(原文参照)に提出。すべての意見書は、連邦登録簿に掲載されるリスト上で利用可能と通知された整理番号が明記される必要がある。
COVID-19大流行中の臨床試験実施に関する質問は、メール(原文参照)にて問い合わせること。

発行元:米国保健福祉省、米国食品医薬品局(FDA)、医薬品評価研究センター(CDER)、生物学的製剤評価研究センター(CBER)、医療機器·放射線保健センター(CDRH)、オンコロジーセンターオブエクセレンス(OCE)、GCP事務局(OGCP)

はじめに
パブリックコメント(意見公募)について
本ガイダンスは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による公衆衛生上の緊急事態に対応するため発行されている。FDAが本ガイダンスへの事前の一般参加は実行不可能あるいは不適切と判断したため、本ガイダンスは事前のパブリックコメントなしで発表されている(連邦食品医薬品化粧品法(FD&C法)第701条(h)(1)(C)項及び21 CFR 10.115(g)(2)項参照)。本ガイダンスは直ちに施行されるが、当局の慣例に従い、意見公募の対象となる。

当局の検討事項に対する意見書は随時提出することができる。書面による意見は認可証管理担当者(HFA-305)、FDA、5630 Fishers Lane, Rm1061, Rockville, MD 20852.宛に提出すること。電子媒体による意見は規制当局(原文参照)宛に提出すること。すべての意見書は、整理番号FDA-2020-D-1106を明記し、意見の対象となるガイダンスの題名を明記する必要がある。

ガイダンス文書の追加の写し
追加の写しは、「業界関係者、FDA職員およびその他の利害関係者向けCOVID-19関連ガイダンス文書」と題されたFDAのウェブページおよび「FDAガイダンス文書を検索」と題されたFDAのウェブページから閲覧可能。また、ガイダンスの写しを受け取るには、に電子メールで請求することも可能である。写しを請求する際には、文書番号FDA-2020-D-1106とガイダンスのタイトルを記載すること。

質問  
本文書に関する質問は、メールにて(原文参照)

目次===
I. 序文
II. 背景
III. ディスカッション
IV. 追加情報
付録 :Q&A
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COVID-19 による公衆衛生上の緊急時における

医薬品の臨床試験実施に関する

米国食品医薬品局(FDA)ガイダンス
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業界関係者、治験責任医師、治験審査委員会(IRB)向けガイダンス

本ガイダンスは、今回の検討事項について現時点でのFDAの考え方を示している。これは、いかなる人に対しても権限を確立するものではなく、FDAまたは一般市民を拘束するものではない。該当する法令や規制の要件を満たしている場合、本ガイダンスに代わるアプローチが適用される可能性がある。代替的なアプローチを検討する場合、タイトルページに記載されているように、FDAの本ガイダンス担当者または事務所に連絡すること。

I. 序文

FDAは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行といった新興感染症の脅威から米国を守るために重要な役割を果たしている。FDAは継続的に対応を行うため、この大流行に対して時宜にかなったガイダンスを提供する。

FDAは、COVID-19による公衆衛生上の緊急時において、臨床試験(*以下、「治験」と記載)参加者の安全性確保、医薬品の臨床試験の実施基準(GCP)の遵守維持、治験の完全性に対するリスクの最小化に関して、治験依頼者を支援するための一般的な考慮事項を提供するため、本ガイダンスを発行する。本ガイダンスの付録では、COVID-19による公衆衛生上の緊急時における治験の実施について、本機関に寄せられた質問に対する回答を提供することで、一般的な考慮事項を補足している。

本方針は、公衆衛生サービス(PHS)法第319条(a)(2)項に従って保健福祉省(HHS)長官が行った更新を含め、HHSが宣言したCOVID-19に関連する公衆衛生上の緊急事態が発生している間のみ有効であるものとする。

今回の公衆衛生上の緊急事態を考慮し、2020年3月25日の連邦登録簿の通知で議論されているように、”Process for Making Available Guidance Documents Related to Coronavirus Disease 2019″(新型コロナウイルス感染症に関連するガイダンス文書を閲覧可能にするためのプロセス)と題され(こちらより閲覧可能)、FDAは本ガイダンスに対する事前の一般参加が実行不可能あるいは不適切であると判断したため、事前のパブリックコメントなしで施行されている(連邦食品医薬品化粧品法(FD&C法)第701条(h)(1)(C)項及び21 CFR 10.115(g)(2)項参照)。本ガイダンス文書は直ちに発表されているが、当局の慣例に基づき、パブリックコメントの対象となることに変わりはない。

一般的に、本件を含むFDAのガイダンス文書は、法的強制力を確立するものではない。むしろ、ガイダンスは検討事項に関するFDAの現在の考え方を示したものであり、特定の規制要件や法的要件に言及しない限り、あくまで推奨事項としてみなされるべきである。当局のガイダンスで「すべき(should)」という言葉が使用されるのは、何かが提案あるいは推奨されているが、義務ではないことを意味している。

II. 背景

現在、新型コロナウイルスによる呼吸器疾患が大流行している。このウイルスは「SARS-CoV-2」、これにより引き起こされる疾患は「新型コロナウイルス感染症」(COVID-19)と名付けられた。2020年1月31日、HHSはCOVID-19に関連した公衆衛生緊急事態宣言を行い、HHSの運営部門を動員した 1。さらに、2020年3月13日、大統領はCOVID-19に対応する国家緊急事態を宣言した2

FDAは、COVID-19による公衆衛生上の緊急事態が医薬品の臨床試験の実施に影響を与える可能性があることを認識している。たとえば、ウイルス感染を避けるための隔離、治験施設の閉鎖、渡航制限、治験薬の供給網の中断3、治験施設の職員や被験者がCOVID-19に罹患した場合のその他の考慮事項などから課題が生まれる可能性がある。こうした課題により、治験薬の投与や使用、プロトコル(治験実施計画書)で義務付けられた来院や検査/診断検査の遵守など、プロトコルで定められた手順を守ることが困難となる可能性がある。FDAは、プロトコル変更が必要となる可能性や、COVID-19の疾病または公衆衛生上の管理対策のため、やむを得ないプロトコルの逸脱が生じる可能性を認識している。試験におけるCOVID-19への公衆衛生管理措置の必要性と影響は、検討対象の疾患の性質、試験デザイン、どのような地域で試験が実施されているかなど、多くの要因によって異なるが、FDAは、治験参加者の安全性を確保し、医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)の遵守を維持し、試験の完全性に対するリスクを最小限に抑えることに関して、治験依頼者を支援するため、以下の一般的な考慮事項を概説している。付録では、COVID-19による公衆衛生上の緊急事態の間にFDAが受けた臨床試験の実施に関する質問と回答を掲載することで、上記の一般的な考慮事項を補足している。

III. 検討事項

A. 進行中の試験に関する検討事項

-治験参加者の安全性を確保することが最も重要である。治験依頼者は、治験参加者の安全性に影響を与える可能性に着目し、各々の状況を検討し、それに応じて試験の実施を修正すべきである。試験に関して決めるべき内容には、治験参加者の募集の継続、既に試験に参加している患者への治験薬の使用の継続、試験中の患者のモニタリングの変更の必要性などが含まれる。いずれの場合も、治験参加者に影響を与える可能性のある試験およびモニタリング計画の変更について、常に治験参加者に情報を提供することが重要である。

-治験依頼者は、治験責任医師及び施設審査委員会(IRB)/独立倫理委員会(IEC)と協議の上、プロトコルに従った試験参加の継続、治験薬の投与や使用の中止、または治験への参加中止が、参加者の安全、福祉および権利を保護するために最善であると判断することができる。そういった決定は、治験薬の性質、適切な安全性モニタリングの実施能力、治験薬の供給網への潜在的な影響、試験対象となる疾患の性質など、特別な状況によって行われる。

-治験参加者は、プロトコルで指定された診察のために治験実施施設を訪れることができない場合があるため、治験依頼者は、必要かつ実行可能な場合、安全性評価のための代替方法(例: 電話による対応、オンライン診察、評価のための別の場所(地域の研究所や画像センターなど))を実施することができ、 治験参加者の安全性確保に十分かどうかを評価すべきである。治験依頼者は、被験者の安全性を十分に確保(例:安全性を評価するための必要な手順や、治験薬の適切で安全な使用の実施)するために対面での診察が必要かどうかを判断し、治験薬の使用や投与を継続するか決定する際には、モニタリングの方法を変更することで被験者の安全性が確保できるかどうかを検討すべきである。

– 場合によっては、治験薬の使用や治験実施施設へ行くことが不可能となった治験参加者には、追加の安全性モニタリングが必要とされる場合がある(例:進行中の治験薬投与を中止する時など)。

– 新しいプロセスを導入する必要性や既存のプロセスを修正する必要性の有無は、プロトコルや現地の状況により異なる。そういった評価には、たとえば、進行中の試験の評価を一部遅らせることが適切かどうかの検討や、既存プロトコルのもとで試験を適切に実施できない場合に継続中の募集の中止あるいは治験参加者の取り下げ可否を検討することなどがある。

-治験依頼者が新たな研究目的の一環として収集したデータを組み入れない限り、臨床試験が属する医療制度により義務付けられる可能性のあるCOVID-19のスクリーニング手順は、試験の診察中に行われた場合でもプロトコールの修正として報告する必要はない。

– 通常、プロトコールの変更はIRB/IEC(場合によってFDA)によるレビューや承認の前には実施されない。治験依頼者および治験責任医師は、COVID-19によるプロトコルまたはインフォームドコンセントに対する緊急かつ差し迫った変更が予想される場合には、できるだけ早くIRB/IECと協議することが推奨される。緊急のリスクを最小化あるいは排除するため、あるいは研究参加者の生命や健康状態を守る(例:COVID-19への曝露を制限する)ためのプロトコルや治験計画の変更は、IRBの承認なしに、治験薬の適用免除(IND)や治験医療機器の適用免除(IDE)の修正を申請する前に実施することができるが、事後報告が義務付けられる4。FDAは、治験依頼者や治験責任医師に対し、治験参加者の安全性に影響を与える可能性のある逸脱報告を優先する手順を予め定義するよう、IRBと協力することを推奨している。

– 代替プロセスの実施は可能な限りプロトコルと一致するべきであり、治験依頼者及び治験責任医師は実施された緊急措置の理由を文書化すべきである。治験依頼者及び治験責任医師は、COVID-19に関連した制約が、どのように試験実施の変更やその変更が継続する期間につながったかを文書化し、どの治験参加者が影響を受け、影響の内容がどのようなものであったかを記録すべきである。

– 試験の受診スケジュールの変更や果たされなかった来院、参加中止は、情報の欠落につながる可能性がある(例:プロトコル指定の手順に対する情報の欠落)。症例報告書には、欠落したプロトコル指定の情報(例:COVID-19による試験受診の未実施や試験中止)とCOVID-19との関係を含め、欠落したデータの根拠を説明する具体的な情報を記載することが重要であろう。治験報告書にまとめられた上記の情報は、治験依頼者及びFDAにとって有用である。

– 治験実施施設で予定された診察に大きな影響が出る場合、通常時に自己投与形式で配布されるような特定の治験薬は、安全な代替的投与方法が適している場合がある。通常は医療現場で投与されるような他の治験薬に対しては、代替的な投与計画(例:訪問看護や研究者ではないが訓練を受けた人員が在籍する代替施設での実施)について FDA の審査部門に相談することが推奨される。いずれの場合も、治験薬の説明責任を維持するための既存の規制要件は持続しており、その要件に対処し、文書化すべきである。

– FDAは有効性評価について、可能であればオンラインによる評価の利用、評価の延期、試験ごとに必要となる検体の代替的な採取法等の、有効性評価項目の測定に関するプロトコル変更について適切な審査部門との協議を行うことを推奨する。有効性評価項目が収集されなかった個別の事例については、有効性評価を取得できなかった理由を文書化する(例:COVID-19による具体的な制約事項を明らかにし、それによりプロトコルで指定された評価を実施できなかった理由を説明する)。

– プロトコルの変更により、データ管理や統計解析計画の変更が必要となる場合は、治験依頼者は適切なFDAの審査部門と協議の上、変更することを検討すべきである。データベースをロックする前に、治験依頼者は、統計解析計画の中でCOVID-19に関連したプロトコールの逸脱を、事前に指定された解析でどのように処理するかを記述すべきである。

– モニタリングのために計画された現場での診察が不可能になった場合、治験依頼者は、臨床治験実施施設の監視を維持するために、中央および遠隔によるモニタリング計画の最適化を検討すべきである。

B.通例、当該試験の方針や手順が未確立の場合

– 治験依頼者、治験責任医師、及びIRBは、治験実施施設におけるCOVID-19 管理対策の結果として試験が中断される可能性がある場合、治験参加者を保護し、試験の実施管理のため使用する手段を記述するにあたり、方針および手順の確立と実施、あるいは既存の方針および手順の改訂を検討すべきである。方針と手順の変更は、インフォームドコンセントのプロセス、試験の診察と手順、データ収集、試験のモニタリング、有害事象の報告、及び渡航制限、隔離措置、または COVID-19疾患自体に起因する治験責任医師、治験実施施設のスタッフまたは治験モニター変更の影響を取り扱うが、変更の内容は上記に限定されるものではない。方針と手順は、COVID-19の管理のために適用される(地域または国の)該当する方針に準拠しているべきである。上記の変更の性質に応じて、適用される規則のもとでプロトコルの修正が必要となる場合がある。5

C. COVID-19による公衆衛生上の緊急事態の影響を受けるすべての試験について

治験依頼者は、臨床試験報告書の適切なセクション(又は個別の試験専用文書)に下記の事項を記載すべきである。

1. COVID-19の管理対策の結果、試験中断時に行う内容を実行するための緊急時対策。

2. COVID-19に関連した試験中断により影響を受けた全参加者のリスト(被験者番号の固有識別子と治験実施施設別)と、個人の参加がどのように変更されたかの説明。

3. 実施された緊急時対策(例:治験参加者への治験薬投与中止や試験の参加中止、重要な安全性または有効性のデータを収集するために使用された代替手順)が、試験で報告された安全性及び有効性の結果に与える影響について言及した解析およびそれに対応する考察。

治験依頼者、治験責任医師、治験審査委員会(IRB)/倫理委員会(IEC)は、治験参加者の安全性と試験データの完全性を維持するための堅実な取り組みが期待されており、そういった取り組みは文書化されるべきである。上述のように、FDAは、COVID-19の疾患またはCOVID-19の管理対策によるやむを得ないプロトコールの逸脱を含め、プロトコルの変更が必要となる可能性があることを認識している。試験の完全性への影響を最小化する努力と、プロトコルの逸脱の理由を文書化することが重要である。

※注釈 その1※
1.アレックス・M・アザール保健福祉省長官、公衆衛生上の緊急事態が存在すると判断 (2020年1月31日)。こちらで閲覧可能。
2. 新型コロナウイルス病(COVID-19)の大流行に関する国家緊急事態宣言(2020年3月13日)。こちらで閲覧可能。
3. 本ガイダンスで被験薬とは、人体用の医薬品、バイオ医薬品、医療機器を指す。
4.CFR 21巻 56.108(a)(4)、56.104(c)、312.30(b)(2)(ii)、812.35(a)(2)を参照のこと。
5.CFR 21巻 312.30(b)、812.35(a)を参照のこと。適用される連邦規則の下では、治験責任医師は、承認されたプロトコルの修正を要求し、規制物質法(Controlled Substances Act)のもとでスケジュールⅠ薬物が関与する研究のプロトコルを修正しようとする場合には、米国麻薬取締局に連絡しなければならない。CFR 21巻1301.18 を参照のこと。

IV. その他の情報源

COVID-19による公衆衛生上の緊急時における臨床試験実施に関する詳細な質問は、以下のアドレス(原文参照)にEメールで連絡すること。 
FDAの審査部門の連絡先は以下の通りである。
医薬品評価研究センター(CDER)
バイオ医薬品評価研究センター(CBER)
医療機器・放射線保健センター

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付録:Q&A

Q1. COVID-19による公衆衛生上の緊急時に、進行中の試験の中止もしくは継続の判断をする、または新たな試験を開始する際に、治験依頼者が検討するべき重要な要素にはどのようなものがあるか。

臨床治験参加者の安全性を確保することが、あらゆる決定の骨格となるべきである。治験依頼者は、治験責任医師および施設内治験審査委員会(IRB)・独立倫理委員会(IEC)と協議の上、プロトコルに従って被験者の参加を継続する、あるいは治験薬の投与もしくは使用、または試験参加自体を中止することによって、被験者の安全、福祉、権利が十分に保護されているかどうかを評価するべきである。こうした意思決定は、治験薬の性質、適切な安全性モニタリングの実施能力、治験薬供給網へ影響を及ぼす可能性、および試験中の疾患の性質など、個別の事情に左右される。この評価の一環として、治験依頼者は、臨床試験をどのように進めるか、また中止の要否を決定する際に、臨床試験実施において以下の点を慎重に検討するべきである。

• COVID-19による公衆衛生上の緊急事態によってプロトコル実施に課せられた制限が、治験参加者に新たな安全性リスクをもたらすかどうか、治験のプロセス・手順を改正することによってこれらのリスクを軽減することが可能かどうかを評価すること。

•試験の監督や、発生する可能性のある安全性の問題の適切な評価および管理を行う治験責任医師・治験分担医師の継続的な安定確保を評価すること。

•進展しているCOVID-19の状況、およびその状況がスタッフ確保に及ぼす影響を検討の上、十分な治験支援スタッフの確保ができるかどうかを評価すること。想定される業務を処理するために適切な訓練を受けたスタッフを確保することが可能か。治験支援スタッフのための十分な設備や資材があるか。

•治験責任医師の施設が対面評価を必要とする被験者に開かれているかどうか、治験責任医師が容認される代替施設で必要とする対面評価を行う能力を持っているかどうか、またはそうしたプロトコルで規定された対面評価の代わりにオンラインでの評価実施が可能かどうかを、評価すること。

•特に、治験薬の供給や適切な安全性モニタリングなどの重要な試験手順を維持するために不可欠な治験用品に関連して、治験用品の継続的な安定供給及びベンダーの継続的な運営状況を評価すること。これには、治療スケジュールが変更された場合、または治験実施施設が必要とされる期間に製品を適切に保管できない場合の製品の安定性(保存期間)の検討も含めるべきである。

•試験を支援するために必要な情報技術システムなどの技術的なツールの継続的な確保およびその支援内容を評価すること。現在の緊急時対応策が、予想される種類の混乱に対して適切であるか。混乱の可能性を最小限に抑えるために、他にどのような計画を立てることができるか。

•COVID-19流行中も試験のニーズに対応するのが妥当な場合、IRB/IECおよびデータモニタリング委員会(DMC)スタッフの継続的な管理の可否と、同スタッフと適切なコミュニケーションを取れているかどうかを評価すること。

•連邦当局および州当局がウイルスを制御するために実施したCOVID-19の公衆衛生対策の観点から、試験を実施することが可能であるかどうかを評価すること。

DMCが設置されている場合、試験へのDMCの関与により、上述した評価の支援が可能になる。DMCの主な責務は参加する被験者の安全性を保証することであり、COVID-19による試験実施の変更が患者の安全性に与える影響についてのDMCの評価を考慮することが重要である。

試験を継続することのリスクと利益は、試験開始の意思決定の際とは異なる可能性が高い(COVID-19の治験薬やワクチンの評価を目的とした試験を除く)。状況が変化し、治験責任医師、スタッフ、および供給網への影響が増大していることを考慮すると、治験依頼者は、患者の安全性と試験の完全性が保証されるように、効果的にリスクを軽減することができるかを慎重に検討するべきである。さらに、試験の開始が、ウイルスを制御するために連邦当局および州当局が実施している公衆衛生対策を妨げる可能性があるかどうかを検討することが重要である。

Q2. COVID-19による公衆衛生上の緊急時に、治験参加者に利益をもたらすと考えられる治験薬の投与または使用を継続するかどうかを決定する際に、治験依頼者が検討するべき重要な要素は何か。

治験製品(医薬品、生物学的製剤、医療機器のいずれか)が治験参加者に利益をもたらすと思われる状況があるかもしれない。治験依頼者がCOVID-19による公衆衛生上の緊急時に、そのような製品の投与または使用を継続するかどうかを決定する場合、治験参加者が被験薬による治療の利益があると見受けられるか、合理的な代替治療法があるか、治療対象の疾患や状態の重症度、必要に応じて別の治療法に切り替える際のリスクなど、状況に左右される問題を慎重に検討するべきである。FDAは、状況によっては(製品の供給不足、治験薬の投与または安全使用の確保ができない場合など)試験中に治験薬の投与を中止することが必要になる可能性があることを認識している。治験薬の投与を中止することが相当のリスクをもたらす可能性のある個別の被験者(被験薬から臨床的利益が認められることを治験担当医師が認識している場合など)がいる場合、治験依頼者は、関連する審査部門と協議の上、明らかに利益が得られている患者のみにの被験薬投与を制限し、それ以外の参加者への使用を中止するようにプロトコル改訂を検討するべきである。いずれの場合においても、治験参加者が試験治療を中止する場合には、中止後に適切な管理が行われることが重要である。

Q3. COVID-19による公衆衛生上の緊急時に、治験依頼者は進行中の試験のプロトコルの逸脱や改正をどのように管理するべきか。

FDAは、COVID-19による公衆衛生上の緊急事時に、臨床試験の治験依頼者がプロトコルで規定された手順を変更することが必要になる可能性があることを認識している。本ガイダンスの本文で考察されているように、現在のCOVID-19による公衆衛生上の緊急事態の影響によりプロトコルの逸脱が必要となった場合、治験依頼者は具体的なプロトコールの逸脱とその逸脱の理由を文書化しておくべきである。治験依頼者は、標準的なプロセスを用いてプロトコールの逸脱を文書化することが可能であり、また、このような逸脱の件数が多くなることが予想される場合には、代替の文書化方法を用いることができる。たとえば、来院がプロトコールで規定されているような治験実施施設ではなく、電話・ビデオで行われる場合、現在のCOVID-19の状況に起因するプロトコールの逸脱となる全治験来院リスト(試験参照番号、患者ID、来院日など)を文書化することが、通常容認される。

プロトコル実施における試験全体の変更については、通常、治験参加者への差し迫った危険を防ぐために必要なプロトコル改訂を直ちに実施することは可能である。IRB・IECには事後に提出して正式な承認を受けることとし、FDAへの報告は、新薬治験許可申請(IND)へのプロトコル改訂の申請、または治験医療機器免除(IDE)からの逸脱の申請により可能となる1

IND下での試験については、CFR21巻312条30(b)項で、被験者の安全性に重大な影響を及ぼす第1相試験プロトコルの変更、または被験者の安全性、 調査範囲、もしくは試験の科学的特質に重大な影響を及ぼす第2相および第3相試験プロトコルの変更を記載したプロトコル改訂版を、治験依頼者が提出する必要があることを規定している。COVID-19への曝露の可能性を減少させるために試験への登録を一時中止する場合は通常、被験者の安全性、調査範囲、または試験の科学的特質に重大な影響を及ぼすことを想定していない。よって、当該規定の下では、こうした一時中止の場合、プロトコル改訂版を提出する必要はない。

患者への差し迫った安全性リスクを防ぐために必要ではないプロトコルの改訂の場合、FDAに提出し、IRBの承認を受ければ実施することができる2。FDAは、パンデミックが急速に進展する状況下では、これらの状況に対処するため、一連の変更が必要になる可能性があることを認識している。複数のプロトコルの修正を一つのプロトコル改訂版に統合することも容認されているが、迅速に行うべきである。治験責任医師は、修正を含むプロトコル改訂版がIRBに承認されFDAへプロトコル提出される前に発生した、プロトコルで規定された手順のいかなる修正の実施についても、プロトコルの逸脱として文書化しなければならない3

IDE下での試験については、CFR21巻812条35(a)項で、治験計画の変更を実施する前には通常、FDAの事前承認が必要だとしている。しかし、CFR21巻812条35(a)(3)項の下では、信頼できる情報に基づき、試験結果の妥当性、患者の起こり得るリスクと利益の関係、治験計画の科学的健全性、被験者の権利、安全性または福祉に影響を及ぼさないと治験依頼者が判断した場合、変更を実施してから5日以内にFDAに報告すれば、FDAの事前承認なしにプロトコルの変更を実施することができる。FDAは、COVID19の影響を取り巻く状況は独特かつ進展しているため、5日以内の報告を期限内に行うことは難しい可能性があることを理解している。治験依頼者は、5日以内の報告を行う際に、実施された複数の変更を統合することが可能なので、できるだけ早くIDEを改訂するべきである。

Q4. COVID-19による公衆衛生上の緊急事態に関連した課題に起因するプロトコルの変更を、治験依頼者はどのように提出するべきか。

IND試験の場合、治験依頼者は、カバーレターの件名に以下の情報を記載して、INDの正式な改正版を提出しなければならない。
プロトコル改訂- COVID-19

プロトコルの題名

治験依頼者は、COVID-19に関連して行われたプロトコルの主な変更点をカバーレターに要約し、審査を容易にするためにプロトコルのバージョン変更履歴をそこに記載するべきである。他のプロトコルの改訂と同様に、治験依頼者は、IRBによる承認を受けた場合、FDAに提出された時点でCOVID-19によるプロトコルの改訂を実施することができる。治験依頼者が実施前にFDAの意見を求めたい場合、カバーレターにその旨を記載しなければならない。

IDE試験の場合、治験依頼者は既存のIDEに補遺を加え、カバーレターの件名に以下の情報を記載して提出する必要がある。

プロトコル変更の補遺- COVID-19 または、該当する場合、IDE変更の報告- COVID-19

プロトコルの題名
IDEの提出物には、審査を容易にするためにプロトコルのバージョン変更履歴を記載する必要がある。

Q5. 治験依頼者は、治験依頼者および治験責任医師が、来院が治験参加者の安全のために必要であり、データの完全性に影響を及ぼさないと評価している場合、FDAに連絡することなく、患者をモニタリングするための臨床試験のオンライン来院を開始することができるか。

FDA規制では、変更が明らかに差し迫った危険を排除すること、または被験者の生命と健康を守ることを目的としている場合、FDAの事前の審査や承認なしに治験計画やプロトコルを変更することが認められている。4
したがって、患者の安全性を直ちに確保するために必要なプロトコルの変更、たとえば、直接来院ではなく、安全性モニタリングの目的で電話やビデオによる来院を行うなどの変更は、直ちに実施することが可能で、事後にIRBによる審査を受け、FDAへの報告を行う4。これは(改訂が承認されるまでは)プロトコルの逸脱を示すものであり、上述のように必要となった逸脱を文書化すること(すなわち、各逸脱、試験参照ID、患者ID、日付が記載された文書)が通常容認される。たとえば、プロトコルで規定されたすべての来院が直接来院ではなく電話連絡で行われること、および対面来院を必要とする手技は実施しない、または(適切な場合、事前に規定された)他の方法で実施することを文書化する。電話またはビデオによる来院に変更することにより、プロトコルで規定された手順(バイタルサイン、安全性試験のための血液サンプルなど)の一部が実施されない可能性が高いため、治験依頼者は、患者の安全性に影響を及ぼす可能性を評価し、治験薬を中止する必要性も含め、患者へのリスクをどのように軽減するかを検討しなければならない。

IDE試験について治験依頼者は、差し迫った安全性リスクに対処するために実施された逸脱を、逸脱が判明してから5営業日以内にFDAに報告することが求められている。FDAは、COVID-19大流行に関連した問題により、この期限を守ることが困難になる可能性があることを認識している。治験依頼者は、5日以内の報告を行う際に、実施された逸脱を統合することが可能なので、できるだけ早くFDAに報告するべきである。

Q6. COVID-19による公衆衛生上の緊急事態により、臨床試験実施において迅速な変更が行われる可能性がある。その変更には、患者の安全性確保に取り組むための複数の逸脱が含まれるが、治験依頼者および治験責任医師がこれらの逸脱に関するデータを取得する最善の方法は何か。

本ガイダンスの本文に記載されているように、COVID-19との関連性(COVID-19による試験来院の中止や試験中止など)を含む、プロトコルで規定された情報の欠落の根拠を明確にする個別の被験者の具体的な情報を文書化することが重要である。この情報が臨床試験報告書に集約されている場合、治験依頼者およびFDAにとって有用である。症例報告書にこの情報を記載することができない場合、治験依頼者は、データがFDAに提出される際に適切な分析が可能となるように、施設全体でこれらのデータを系統的に文書化することができるプロセスを開発するとよい。治験依頼者はまた、施設レベルでの状態、施設またはベンダーレベルでのプロトコルの逸脱、およびプロセスの逸脱を文書化することを目的とするプロセスを開発するとよい。

Q7. 患者が現在、自宅での自己投与のために、治験実施施設の薬局で治験薬の調剤を受けている場合、治験依頼者はプロトコルを変更せずに宅配に切り替えることができるか。

COVID-19への曝露リスクが懸念される場合、新たな安全性リスクを生じさせない治験薬の宅配を実施して、患者が治験実施施設に来院しないようにすることも考えられる。いずれの場合も、必要とされる治験薬の保管条件や治験薬の説明責任を維持するためのFDA規制の要件があるので、これらの要件に対応し、文書化しなければならない5。プロトコルには、自宅での自己投与のための薬局調剤が記載されているが、それを患者への直送に変更する場合、治験薬の宅配を容認するには、プロトコルの改訂が必要である6。 宅配の範囲が、プロトコルに記載されている患者集団全体ではなく、特定の参加者に限定されている場合、プロトコールの逸脱による治験薬の配布方法の変更として文書化することも可能である。治験薬の配布方法の変更をプロトコルの改正に含める場合、そのような変更は、緊急のプロトコルの変更ではなく、発生する多くの変更を含む「累積的な」改訂の一部としてよい7

Q8. 患者が現在、治験実施施設で治験薬の点滴を受けている場合、治験依頼者は在宅点滴に切り替えることができるか。

治験依頼者は、治験実施施設に来院することができないために治験薬の点滴を受けることができない被験者の安全性リスクを考慮するべきである。一般的に、医療現場で通常投与される治験薬については、投与を行う代替施設(訪問看護や、訓練を受けているが試験には参加していないスタッフが在籍する代替施設など)の計画を、適切なFDAの審査部門に相談することが推奨されている。たとえば、複雑な被験薬(細胞治療薬や遺伝子治療薬など)については、保管や取り扱いの条件が変更され、製品の安定性に悪影響を及ぼす可能性がある場合、FDAに相談することが強く推奨されている。いずれの場合も、(治験計画の再構成前および再構成後に)必要とされる治験薬の保管条件、治験薬概要書に記載されている治験薬の再構成仕様、および治験薬の説明責任を維持するための適用要件があるので、これらの要件に対応し、文書化しなければならない。代替施設での点滴を容認するようにプロトコルを変更する場合、保管条件および治験薬の説明責任を検討するべきである。治験薬の投与を中止する場合の状況は規定されているが、相応しい代替策がない場合には、評価が遅れる可能性があっても試験への参加を継続することが適切な選択肢となり得る。

Q9. COVID-19による公衆衛生上の緊急時において臨床試験の実施施設でのモニタリングに遅れが生じる可能性があることを考慮し、こうした状況でどのようなことをFDAは想定しているか。

FDAは、COVID-19による公衆衛生上の緊急時において、モニター が適切な時期に治験実施施設に来院できない可能性があることを認識している。治験依頼者は、適切かつ実行可能な場合には、中央モニタリングの強化、試験手順、治験参加者の状況、および試験の進捗状況を確認するための治験実施施設との電話連絡、または登録された個別の治験参加者の遠隔モニタリングなど、被験者の安全性と試験データの質と完全性を維持するための代替策を見つける取り組みを行うべきである。FDAは、治験実施施設でのモニタリングの遅れにより、当該施設における(重大なプロトコルの逸脱を含む)GCP違反の特定が遅れる可能性があることを認識している(COVID-19の影響によるものではないプロトコルの逸脱も含む)。治験依頼者は、モニターが治験実施施設へ来院できなかった状況、または治験実施施設のモニタリングを遅らせなければならなかった状況を慎重に文書化しておくべきである。また、治験依頼者やモニターは、治験実施施設で確認されたプロトコルの逸脱などのGCP違反の問題についても、特定の遅れがモニタリングの延期によるものかどうかを文書化しておくべきである。FDAは、治験実施施設ではCOVID-19の感染防止対策に起因する独自の事情が発生することを認識しており、検査結果を評価する際には、これらの事情を考慮する。

Q10. COVID-19の感染防止対策により、患者がいる部屋に入り、署名済みのインフォームドコンセント文書を回収することができない場合、隔離中の当該患者から署名済みのインフォームドコンセントを入手するにはどうすればよいか。

FDA規制では通常、治験参加者のインフォームドコンセントについて、IRBの承認を受けること、および同意時に被験者または法的な権限を持つ被験者の代理人が署名し、日付を記入した書面による同意書を用いて記録することを義務付けている(CFR21巻50条27(a)項)。COVID-19感染防止対策を考慮すると、インフォームドコンセントに署名する予定の患者がCOVID-19で隔離されている場合、以下の手順でこの文書化の要件を満たすことになる8

•その技術が利用可能な場合、インフォームドコンセントを電子的に入手する方法を検討するべきである9

•電子的にインフォームドコンセントを入手することができない場合、治験依頼者は以下の手順を踏むことを検討するべきである。

1. 医療従事者が入室して、署名のない同意書を患者に提供する。

2. 隔離された患者と直接連絡を取ることが可能でない、または安全でない場合、治験責任医師(またはその指名した者)が患者の電話番号を入手し、患者、公平な立会人、および患者の要請があり、実行可能であれば、追加の参加者(近親者など)の3者間の通話またはビデオ会議を設定する。

3. 患者に対し一貫した方法で交渉するために、以下の項目を満たす標準的なプロセスを用いる必要がある。

o 誰が電話に出ているかの識別

o 治験責任医師(またはその指名した者)による患者とのインフォームドコンセントの確認と、患者からの質問への返答

o立会人による患者の質問が回答されていることの確認

o治験責任医師による、立会人が電話で聞いている間に、患者が治験に参加する意思を表明し、インフォームドコンセント文書に署名していることの確認

o 患者が治験に参加したいと考え、手元にあるインフォームドコンセント文書に署名し、日付を記入したことの口頭での確認

署名済みのインフォームドコンセント文書を患者のいる場所から回収し、試験記録に入れることができない場合、FDAは、患者がインフォームドコンセント文書に署名したことを示す文書を提供するために、以下の2つの選択肢を容認することを検討している。

•通話に参加した立会人および治験責任医師が作成した、患者が治験に参加することに同意し、インフォームド・コンセントに署名したことを認める日付入りの証明書
または
•インフォームド・コンセント文書の写真と、その写真を試験記録に加えた者による証明書。証明書には写真の入手法および患者が署名したインフォームド・コンセントの写真であることを記載する。

治験責任医師および立会人が署名したインフォームドコンセント文書のコピーは、治験責任医師がどのように同意を得たか(電話など)のメモを記載した上で、患者の原資料に加えるべきである。治験実施施設の試験記録では、患者が同意書に署名したことをどのように確認したか(立会人および治験責任医師による証明書類または署名された同意書の写真)を文書化しておくべきである。メモには、患者が署名したインフォームドコンセント文書がなぜ保存されなかったかの説明も記載するべきである(感染性物質により文書が汚染される可能性があるなど)。

患者はインフォームドコンセントを提出することができないが、法的な権限を持つ代理人がいる場合、治験責任医師はCFR21巻50条27(a)項に従って、法的な権限を持つ被験者の代理人から書面による同意を得なければならない。

Q11. 患者が臨床試験実施施設に来ることができず、電子版インフォームドコンセントもない場合、どのようにインフォームドコンセントを得たらよいか?

治験責任医師は、被験者候補者またはその法定代理人がCOVID-19への罹患や移動制限のために治験責任医師が所在する施設への移動ができない場合でも、被験者候補者またはその法定代理人からインフォームドコンセントを得なければならない場合もある。治験責任医師が電子版インフォームドコンセント(eIC)を使えない場合10、十分な情報交換と文書化が可能な方法、および同意書の署名者が臨床試験の被験者として登録する予定の人、またはその被験者の法定代理人であることを保証できる方法であれば、対面式の同意面接以外でインフォームドコンセントを取得する方法を許容してもよい。たとえば、同意書を被験者または被験者の法定代理人にファクシミリまたは電子メールで送付し、その後、被験者または被験者の法定代理人が話し合いの際に同意書を読むことができる場合、電話で同意面接を行ってもよい。同意の話し合いの後、被験者または被験者の法定代理人が同意書に署名し、日付を記入することも可能である。治験責任医師に文書を返送する方法としては、ファクシミリ、同意書をスキャンして安全な電子メールアカウントを介して返送する、または安全なインターネット上の保管場所に置く方法などがある。あるいは、被験者は、署名・日付入りの同意書を、移動制限が緩和されてから臨床試験施設への次の来院時に持参してもよいし、治験責任医師に郵送してもよい。各被験者の病歴には、試験参加前にインフォームドコンセントを得たことを記録しなければならない11。さらに、同意書に署名した人は、同意書の写しを受け取らなければならない12。FDA規則では、被験者に渡す写しが署名済みの写しであることを義務付けていないが、FDAは署名済みの同意書の写しを渡すことを推奨している。

被験者の所在地から汚染された可能性がある同意文書が治験責任医師に郵送される懸念がある場合、治験責任医師は、署名済み同意文書の画像を電子的な手段によって送付してもらうことで、上述の手順を用いて隔離されている患者の登録を行ってもよい。

被験者または被験者の法定代理人が同意文書に署名および日付の記入を行う前に、治験責任医師は当該被験者についての試験に関連するいかなる手順も開始してはならない13。試験に関する手順の開始前に治験責任医師が署名済みの同意文書を受け取ることが不可能な場合、治験責任医師は、同意面接中に、被験者または法定代理人に口頭で、被験者または法定代理人が文書に署名および日付記入を行ったことを確認しなければならない。さらに、監督するIRBは、計画されたインフォームドコンセントのプロセスを確認および承認しなければならない14

Q12. COVID-19による公衆衛生上の緊急時に、リモート・パフォーマンス・アウトカム(PerfO)評価を実施するか、面接による医療者報告アウトカム(ClinRO)評価を実施するかを決定する際に、治験依頼者はどのような要因を考慮すべきか?

ClinROとPerfOは、一部の臨床試験で用いられる2種類の臨床アウトカム評価である。本ガイダンスでは、ClinRO とは訓練を受けた医療専門家が被験者の健康状態を観察した後に行う評価であり、PerfOとは被験者によって行われる標準化されたタスクに基づく評価であり、被験者への投与および評価は、適切な訓練を受けた個人が実施するか、被験者本人が行う5

面接によるClinRO 評価とPerfO評価を遠隔で管理することは、実施状況(評価の方法や被験者の安全性への配慮など)によっては可能な場合もあるが、すべての評価を遠隔で行えるわけではない。 治験依頼者は、リモート評価(たとえば電話またはビデオ)が、収集しようとしている臨床データの種類に適しているかどうかを検討しなければならない。たとえば、臨床項目の評価の中には他の項目よりも視覚的な情報をより多く必要とする場合があり、遠隔での評価が困難な場合がある。さらに、依頼者は、遠隔でのClinROまたはPerfO評価の使用を検討する場合、被験者が自分の居場所で安全に評価に参加することできるかどうかを判断しなければならない(たとえば、6 分間歩行検査は安全ではないかもしれない、または被験者の自宅の床が均質ではないかもしれない、など)。

FDAは、ある試験では、依頼者が一部の被験者には施設内評価を実施することが可能かもしれないが、連邦および州当局が実施するウイルス管理のための公衆衛生対策を遵守するためにリモート評価が必要な場合もあることを認識している。そのような場合、依頼者は、ばらつきを最小化し、リモート評価が施設内評価と同等であることを保証するために、被験者の安全とプライバシーを保護しつつ、施設内で実施されている評価にできるだけ近い方法でリモート評価を実施しなければならない。たとえば、小児対象の試験では、被験者の評価が施設内評価の際に介護者の立会いのもとで行われる場合、リモート評価の際にも望ましくないばらつきを最小限に抑えるために介護者の立会いのもとで行われなければならない。アウトカム評価のばらつきが大きくなると、データの質が低下し、FDAが規制上の決定を下すために用いる試験データの範囲が制限される可能性がある。

リモート評価(電話やビデオなど)を実施するかどうか、またどのように実施するかを決定する際には、依頼者は、評価の実現可能性を裏付けることができる根拠と情報を考慮しなければならない。たとえば、依頼者は、障害のある被験者(たとえば、視覚障害)で使用するための評価方法の実現可能性を検討すべきである。PerfO 評価では、依頼者は、被験者が評価指示を確実に遵守するために、ビデオの使用を検討すべきである。実現可能な範囲で、依頼者は、リモート評価の方法と実施が、施設、被験者、訪問先で一致していることを保証しなければならない。たとえば、依頼者が、多施設試験で使用するリモート評価の方法としてビデオが好ましいと判断した場合、異なる方法(たとえば、同じ試験で電話とビデオの両方)を用いて評価を実施すると、望ましくないばらつきが増える可能性がある。

依頼者はさらに、治験責任医師がリモート評価の実施のための準備を十分していることを確認しなければならない。たとえば、治験責任医師は、そのような評価を試験で行う前に、リモート評価の練習(模擬的な)を最低1回してもよい。治験責任医師は、被験者が参加している環境が、被験者の安全とプライバシーを保護し、完全かつ正確なデータ収集を可能にするために適切なものであることを、被験者とともに評価、確認する準備をしなければならない。

FDAによるデータ審査を容易にするために、ClinROおよびPerfOの評価について、治験責任医師は、評価が対面で行われたか遠隔で行われたか(使用した技術の種類を含む)、および評価の日付と評価実施者を文書化し、依頼者は臨床試験データセットにそれを報告しなければならない。

一部の試験におけるClinROまたはPerfOの評価の構成要素には、視覚化や被験者との対面でのやりとりが規定されている場合があり、遠隔でのやりとりでは再現が困難な場合があることを認識した上で、依頼者はこれらの構成要素について、評価を可能にする別の方法で評価できるかどうかを検討しなければならない。評価の構成要素を遠隔で実施できない場合、治験責任医師は、遠隔で実施できない評価の側面を文書化し、治験依頼者は臨床試験データセットにそれを報告しなければならない。治験依頼者は、遠隔で収集できる情報が、臨床アウトカムを正確かつ確実に評価して、試験の堅固な結論を裏付けるのに十分であるかどうかを検討しなければならない。

臨床試験の一環としてリモート評価を使用することを計画している治験依頼者は、そのような評価を容易にするために、 被験者および治験責任医師に技術的支援を提供するための手順を作成しなければならない。たとえば、治験依頼者は、既に臨床試験に登録されているか、今後臨床試験に登録される可能性があるが、適切な通信技術(たとえば、携帯電話やインターネット)を利用できない被験者に、これらのサービスを提供することで、被験者のために便宜を図る計画を立てることができる。

治験依頼者は、リモートデータの取得、送信、および保存が安全に行われ、被験者のプライバシーが保護されていることを保証しなければならない。治験依頼者がリモート評価を行うためにデザインされた電子プラットフォームを使用する場合、これらのプラットフォームには自動化された監査証跡(変更記録)が含まれなければならない。

Q13. 私は試験モニターだが、COVID-19による公衆衛生上の緊急事態のために施設内モニタリングのための施設訪問ができない。リモートモニタリング訪問でもよいか?リモートで原資料審査を行う場合、その方法についてFDAの推奨はあるか?

FDAの規則では、治験依頼者は臨床試験の実施と進捗状況をモニターすることが求められている16。規則は、依頼者によるモニタリングの方法については具体的に規定していないので、さまざまな要因によって変化しうる幅広いモニタリング法に対応している。したがって、施設モニタリング訪問の一部は、技術的に可能であればリモートで行ってよい。FDAは、臨床試験のモニタリング計画および手順に定められた施設内モニタリング訪問のタイミングから逸脱する可能性があること、およびCOVID-19による公衆衛生上の緊急時に施設内モニタリング訪問をリモートモニタリング訪問に置き換える方法を依頼者が検討する可能性があることを理解している。さらに、試験のモニタリング計画に概説される施設内モニタリング訪問には、リモートでは完了できない要素がある可能性もある。

COVID-19による公衆衛生上の緊急時に、従来の施設内モニタリングは、(1)施設がモニタリング訪問に対応できない(たとえばスタッフ不足、施設の閉鎖などのため)、または(2)モニターが治験実施施設に移動することができない、などの理由から困難である可能性がある。計画された施設内モニタリング訪問が不可能な場合は、その理由を文書化し、依頼者による審査およびFDAによる査察中に利用できるようにしなければならない。

依頼者は、リスクに基づく方法を用いて、施設にリモートモニタリングのための優先順位を付けなければならない。その場合、可能な限り多くの治験実施施設を含み、施設モニタリング計画に記載された回数に可能な限り近い回数を考慮しなければならない。各施設のリモートモニタリングの優先順位は、中央モニタリング、または施設の成績についてわかるその他の情報にしたがって決定しなければならない(たとえば、過去のモニタリング訪問中または現在行われている中央モニタリングによって判明したプロトコールからの逸脱の頻度および重大性、現在行われているランダム化試験への参加者数、施設スタッフの経験、過去の大規模監査または査察における既知の指摘事項歴など)。

リモートモニタリングでは、重要な治験実施施設の文書および原資料の審査を集中的に行わなければならない。審査の対象として特定された資料の中に、通常は施設で審査される参加者の医療記録が含まれている場合(そのような審査が治験参加者のインフォームドコンセント文書と一致している場合)、後述するように、原資料審査を完了させるために、医療記録のリモート審査を治験実施施設と検討してもよい。試験のモニターが施設にアクセスして重要な原資料を審査できない場合、個人の健康情報を含む可能性がある原資料の審査の請求は、進行中の試験のモニタリング計画またはその他の適切な試験固有文書に記載の原資料検証および審査の要件に合致して行わなければならない。依頼者がこれまでにリモートモニタリングのプロセスおよび手順を説明していない場合、このようなプロセスおよび手順を確立しなければならない(たとえば、試験モニタリング計画の改訂、または既存の依頼者の方針および手順の更新など)。

リモートモニタリングの期間中、試験モニターは治験参加者の安全性および/またはデータの信頼性に不可欠な試験活動に集中的に審査すべきである。依頼者およびモニターは、臨床施設の記録へのリモートモニタリングアクセスを容易にするために、以下の選択肢を1つ以上検討してもよい。

・施設が適切なリソースと技術的能力を提供できる場合には、施設スタッフが試験モニターの審査のために施設の試験文書および/または治験参加者の原資料へのアクセスを提供できるような、安全なリモート閲覧ポータルの設置を検討すること。さらに、治験参加者の電子健康記録へのリモートアクセスの可能性を治験実施施設と検討してもよい。

・施設は、適切にセキュリティ管理がなされている依頼者が管理する電子システムまたはその他のクラウドベースのリポジトリに、原資料の認証コピー17をアップロードしてもよい。盲検化または部分盲検化された試験の場合、原資料に盲検化されていない可能性のある情報が含まれている場合は、原資料を転送する前に、試験の盲検化を保護するための管理が行われるべきである(原資料を審査するための非盲検の試験モニターの利用、原資料のコピーを含むフォルダへのアクセスの制限など)。このようなリポジトリにアップロードされた原資料の認証コピーの管理は、臨床施設が行う必要はないが、治験責任医師は原資料の記録の管理を維持すべきである。

リモート審査に使用された原資料のコピーの保持については、治験責任医師が FDA の記録保持規則に従って原資料を保持していれば、リモート審査に使用された原資料の認証コピーを保持する必要はないと考えられる18

さらに、リモート審査のために一時的に保管場所に置かれ、リモートモニタリング終了後に不要となった原資料のコピーを処理するためのプロセスと手順を確立しなければならない。

原資料のリモート審査を含むリモートモニタリング活動は、施設内モニタリング活動と同レベルの詳細さで文書化し、リモートの原資料審査によって特定された問題に対処するために生じる行動は、試験モニタリング計画に記載されている手順とプロセスと一致してなければならない。

Q14. 私は商業用INDの治験依頼者で、COVID-19による公衆衛生上の緊急事態のために電子化コモン・テクニカル・ドキュメント(eCTD)の要件を満たすことができない。誰に問い合わせればよいか?

商業治験依頼者は、比類ない稀な環境においては、短期的に、FD&C法第745A条に基づくeCTD要件の免除を受けることができる。COVID-19における公衆衛生上の緊急時においては、依頼者がeCTD要件を満たすことができない稀な状況が発生する可能性がある(たとえば、現在のCOVID-19による公衆衛生上の緊急事態がコンピュータ操作に影響を与える場合など)。FDAへの電子提出物の送信に技術的な問題がある企業は、免除を要請するのではなく、技術的な支援について、FDAの電子提出スタッフ(下記の連絡先)に相談すること。FDAガイダンスセクションIII.E、Providing Regulatory Submissions in Electronic Format – Certain Human Pharmaceutical Product Applications and Related Submissions Using the eCTD Specifications(規制当局への電子形式による書類提出- eCTD規格を用いた特定のヒト医薬品申請書および関連提出書類)に記載のとおり:

下記の事象または状況が1つ以上当てはまる場合、FDAはeCDTの提出要件の一時免除を付与することができる。

・コンピュータ操作に影響を与える自然災害などを含むがそれらに限定されない、提出者が制御できず免除を正当化する異常な事象または状況が発生した場合。

・計画外の長期的なインターネット障害やその他の計画外の事象が発生し、依頼者がeCTD形式での提出ができなくなった場合(たとえばマルウェア攻撃など)。

・依頼者が、eCTD形式への変換が完了していない申請の取下げを求める意向である場合。

・依頼者が取り下げ申請を提出しているが、FDAの承認をまだ受けていない場合19

ガイダンスはさらに以下のように述べている。

依頼者または申請者がeCTD電子形式要件の免除を申請する場合には、その免除の正当化を裏付ける文書として、以下のすべてを付記しなければいけない。

(a) 免除の必要を生じた状況または事象の説明(その状況または事象の予想継続期間を含む)。

(b) 免除を請求する期間。

(c) 依頼者または申請者が免除期間中に使用する代替提出形式の提案についての説明。

この請求は、免除の対象となるすべての製剤を参照しなければならない。免除を請求する際には、提出書類の最初のページの一番上に「WAIVER REQUEST – eCTD REQUIREMENTS」というタイトルを太字の大文字で明記すること20

新薬承認申請(NDA)、バイオ医薬品ライセンス申請(BLA)、略式新薬承認申請(ANDA)、医薬品マスターファイル(DMF)、商業用INDの免除要請は、FDAの電子申請スタッフに電子メールでCDERまたはCBERに送ってもよい。免除が認められた場合、FDAは回答書に提出物をどのように送信するかについての情報を記載する予定である。FDAは、依頼者および申請者に対して、提出書類を代替の電子フォーマット(たとえば、eCTD構造に沿ったPDFファイル)で電子的に送信することを勧める予定である

Q15. COVID-19における公衆衛生上の緊急時において、一部の患者は、繰り返し予定されているプロトコルに基づいた治療のために中央施設に行くことができなくなる可能性がある。試験の完全性を維持しながら、点滴用の治験薬を治験分担医師ではない地元医療従事者に輸送して患者に点滴投与できるか。もし可能であれば、試験のモニタリングと施設内治験審査委員会(IRB)の監視に関して、他に何が必要か?

臨床試験の状況によっては、被験薬(IP)をINDが規定する臨床試験施設以外の場所へ輸送すること、およびIPを投与することの実現可能性および適切性に影響があるだろう。試験で評価されるIPが点滴投与される場合、代替の点滴施設には、適切な訓練を受けた人員がおり、対象の製剤のクラスに関して十分な経験を持つ医師によって監視されており、治験実施施設での投与と同等の安全性を被験者に保証することが重要である。

本ガイダンスでは、通常の臨床診療と異ならない方法で薬剤を投与している地元医療提供者(HCP)は治験分担医師とはみなされず、Form FDA 1572.21に記載する必要はない21。FDAは、治験責任医師から委任された活動のログなどとして、これらのHCPを施設記録に記載することを推奨する。HCPが治験薬を投与することを許可するための試験プロトコルの変更はいずれも、一般にIRBの審査および承認を受けなければならない22

上記段落では、施設の診療範囲内で医療行為を行っている地元HCPが治験薬を投与する場合を説明した。反対に、治験依頼者が地元 HCP に試験に固有の研究手順または試験の臨床データに直接かつ重要な影響を与える評価(たとえば、患者に対する薬物応答の評価や、通常診療の一部ではなく研究に特有の手順の実施など)を依頼する場合、これらのHCPは治験分担医師とみなされ、Form FDA1572に記載されなければならない。

治験責任医師の監督下で、説明責任と製剤の品質を保証する手順(つまり、プロトコルに定められたとおり、被験薬(IP)の保存条件が輸送中に維持され、医薬品の包装が受領時に無傷であること)を用いて輸送されることを条件に、IPを中央の発送拠点から直接HCPに輸送してもよい。

被験薬(IP)を投与するHCPが治験分担医師とみなされない場合、治験責任医師は、地元HCPが提供する、バイタルサインの測定、点滴に伴って発生した症状または徴候の評価結果などの試験に関連するデータを含む医療記録へのアクセスを得るための同意を治験参加者に求めることにより、IPの投与に関する記録を確実に取得できるようにしなければならない。このような記録を請求する意思を事前にHCPに伝えれば、このプロセスは容易になると考えられる。

また、上記Q8のとおり、代替投与の計画については、適切なFDA審査部門に相談することを推奨する。

Q16. 被験者が治験薬を治験実施施設から受け取ることはできないが、その製剤が他の用途でFDAに承認されている場合、患者や医療提供者はその製剤を商業的に確保することができるのか、またCFR21巻312条8項に基づいて依頼者による治験薬料金の請求対象とみなされるのか。被験者が治験薬を商業的に入手した場合、依頼者はその実費を償還することができるか?

臨床試験で試験中の製剤がFDAの承認を受けており、試験が盲検化を要求していない場合、その製剤の地元調達(たとえば、製剤を直接患者に輸送する代わりに地元医師に製剤の処方箋を書いてもらうなど)はFDAに許容されるだろう。FDAは、COVID-19による公衆衛生上の緊急時に、治験薬を治験実施施設から確保できなかった場合の治験参加者による治験薬の商業的調達を、CFR21巻312条8項のFDA規則によるIND下における依頼者による治験薬料金の請求対象とはみなさない。FDAは、商業的に製剤を購入することによって発生した費用、または輸液に関連した料金を、依頼者が患者に償還した場合にも異議を唱えない。

CFR21巻312条6項のFDA規則によると、ヒトへの使用を意図した試験用新薬の緊急パッケージには、「警告:新薬– 連邦(または合衆国) 法により試験用途に限定 “Caution: New Drug–Limited by Federal (or United States) 」と記述されたラベルを表示しなければならない。FDAは、商業的に入手した製剤には、その容器にこのような記述がないことを認識している。COVID-19による公衆衛生上の緊急時において、試験施設に来ることができない参加者に治験薬を提供するために代替の手配が行われている場合、FDAは、CFR21巻312条6項に基づく治験薬表示要件のCFR21巻312条10項に基づく免除申請を依頼者が行う必要はなく、柔軟に対応することを意図している。

Q17. 本ガイダンス全体を通して、FDAは、依頼者が進行中の臨床試験の変更について審査部門に相談することを推奨している。医薬品や生物製剤の場合、タイプAの会議の予定を組むこと指しているのか?依頼者は医療機器の臨床試験に関して、どのようにFDAに連絡すべきか?

我々のガイダンス「Best Practices for Communication Between IND Sponsors and FDA During Drug Development(医薬品開発におけるIND依頼者とFDA間のコミュニケーションのベストプラクティス)」23に記載のとおり、審査部門の規則プロジェクトマネージャー(RPM)は、治験依頼者とFDA間のコミュニケーションの主要な窓口である。FDAおよび治験依頼者の双方は、情報交換や課題解決を効率的に行うために、さまざまなコミュニケーション手法を用いて議論を集中させる。たとえば、治験依頼者とFDAのRPMとの間の電話でのコミュニケーションは、時間的制約がある事項については効率性が高いかもしれない。FDAのスタッフは、FDAの公衆衛生上の優先事項と他の仕事の義務のバランスを取りながら、治験依頼者からの質問に迅速に対応するように努めている。なお、治験参加者の安全を確保するため、安全性に関する問い合わせへの対応は、他の問い合わせよりも優先される。より一般的には、COVID-19による試験実施の変更に関して生じる多くの疑問に対して迅速に対応する必要があることを、FDAは理解している。RPMは、依頼者と協力して、迅速な方法で変更についての質問に答えるための最善の道筋を決定する。

CDRHで管理されているIDEに関する緊急の問題については、依頼者は筆頭審査員に連絡しなければならない。CBERで管理されているIDEについては、依頼者はRPMに連絡しなければならない。提案されている今後のIDE試験に関するFDAのフィードバック、または緊急性のない進行中の試験の修正(欠損データに対処するための統計解析計画など)については、事前提出を推奨する。事前提出の詳細については、FDAガイダンス「Requests for Feedback and Meetings for Medical Device Submissions: The Q-Submission Program(医療機器提出についてのフィードバックおよび会議の要請: Qサブミッションプログラム)」24を参照のこと。

COVID-19における公衆衛生上の緊急事態の期間中における、臨床試験実施についてのFDA方針に関する一般的な質問については、依頼者はこのアドレス(原文参照)に連絡すること。

※注釈 その2※
1 CFR21巻56条108(a)(4)項、312条30(b)(2)(ii)項、および812条35(a)(2)項を参照。
2 CFR21巻312条30(b)(2)項を参照。
3 CFR21巻312条62項を参照。
4 CFR21巻56条108(a)(4)項、312条30(b)(2)(ii)お項よび812条35(a)(2)項を参照。
5 CFR21巻312条60項、312条62項、および812条140項を参照。
6 CFR21巻312条30(b)項および812条35(a)項を参照。
7 CFR21巻312条30(b)項、812条35(a)項、および812条150(a)(4)項を参照。
8 提案されている手順は、CFR21巻50条23項に基づく一般的なインフォームドコンセントの要件の例外、またはCFR21巻50条24項に基づく緊急試験のためのインフォームドコンセントの要件の例外には適用されない。
9 施設内治験審査委員会(IRB)、治験責任医師、および治験依頼者のためのガイダンス「臨床試験における電子的インフォームドコンセントの使用(Use of Electronic Informed Consent In Clinical Investigations)」(2016 年12月)を参照のこと。https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidancedocuments/use-electronic-informed-consent-clinical-investigations-questions-and-answersで閲覧可能。
10 Id.
11 CFR21巻 312条62(b)項および812条140(a)(3)項参照。
12 CFR21巻50条27(a)項参照。
13 CFR21巻50条20項および50条27(a)項参照。
14 CFR21巻50条27(a)項、56条103(a)項、および56条111(a)項参照
15 FDA-NIH バイオマーカーワーキンググループBEST (Biomarkers, Endpoints, and other Tools(バイオマーカー、エンドポイントおよびその他のツール)情報源[インターネット]。メリーランド州シルバースプリング: 食品医薬品局 (米国); 2016、 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK326791/で閲覧可能。 国立衛生研究所(米メリーランド州ベセスダ)と共同発表。
16 CFR21巻312条50項、312条53(d)項、312条56(a)項、812条40項、812条43(d)項、および812条46項参照。
17 ICH(医薬品規制調和国際会議)と共同作成された「臨床試験の実施基準(GCP)」に関するFDAガイダンスでは、認証コピーを「原本のコピー(使用される媒体の種類に関わらず)であって、文脈、内容、構造を記述するデータなどの情報が原本と同じであることが確認された(日付入りの署名または検証済みのプロセスを経て生成された)もの」と説明している。 業界関係者へのガイダンス E6(R2) Good Clinical Practice: Integrated Addendum to ICH E6(R1) (February 2018) https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/e6r2-good-clinical-practice-integrated-addendum-ich-e6r1を参照
18 CFR21巻312条62項、および812条140(a)項参照。
19 https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/providing-regulatory-submissions-electronic-format-certain-human-pharmaceutical-product-applications-0で閲覧可能な業界関係者へのガイダンス「Providing Regulatory Submissions in Electronic Format – Certain Human Pharmaceutical Product Applications and Related Submissions Using the eCTD Specifications (February2020)(電子形式による規制当局への提出物の提供 – eCTD規格を使用した特定のヒト医薬品申請及び関連提出物(2020年2月)」を参照。本ガイダンスがFD&C法第745A 条(a)項に基づくeCTD報告要件の免除および免除の基準を規定している範囲では、本ガイダンスは法令に基づき拘束力のある効力を有する。
20 Id
21 治験分担医師の定義については、CFR21巻312条3(b)項を参照のこと。また、FDAフォーム1572に治験分担医師を記載する要件については、CFR21巻312条53(c)(1)項を参照のこと。
22 上記Q3への回答で述べたように、治験参加者に対する明白な即時の危険を取り除くために必要なプロトコールの変更は、FDA及びIRBの審査及び承認の前に実施されてもよい。CFR21巻56条108(a)(4)項およびCFR21巻312条30(b)(2)(ii)項を参照のこと。
23 https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/best-practices-communication-between-ind-sponsors-and-fda-during-drug-developmentで閲覧可能なガイダンス「Best Practices for Communication Between IND Sponsors and FDA During Drug Development (December 2017)(医薬品開発におけるIND依頼者とFDA間のコミュニケーションのベストプラクティス(2017年12月)」を参照。
24 https://www.fda.gov/regulatory-information/search-fda-guidance-documents/requests-feedback-and-meetings-medical-device-submissions-q-submission-programで閲覧可能なガイダンス「Requests for Feedback and Meetings for Medical Device Submissions: The Q-Submission Program (May 2019)(医療機器提出についてのフィードバックおよび会議の要請: Qサブミッションプログラム(2019年5月)」を参照。

翻訳担当者 佐々木亜衣子、会津麻美、粟木瑞穂

監修 原文堅(乳腺内科医長/がん研有明病院 乳腺センター)、 、

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