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AYAがん患者の転帰に影響する特有の要因

思春期および若年成人におけるがんの特徴が明らかになり、生存改善に向けた提案が示される

近年、改善が確認されているとはいえ、思春期および若年成人(AYA)がん患者では他の年齢層で報告されているほどの生存改善がみられないとの報告が、CA: A Cancer Journal for Clinicians誌11・12月号に掲載された。

米国だけでも、15~39歳の世代で年間約7万人が新たにがんと診断され、これは新たに浸潤性がんと診断される全患者の5%を占めると、筆頭著者のAllison G. Close医師(米国ペンシルバニア州ピッツバーグ、ピッツバーグ大学医療センター、ピッツバーグ小児病院、血液内科/腫瘍内科)は書いている。

AYAのがん患者は生存率が低いという過去の報告に加えて、小児およびAYAのがん症例数は、直近の調査期間(2011-2015年)で30%増加している。2006年から2015年までの成人男性におけるがん発症率は低下、成人女性では横ばいであるのにもかかわらずである。AYAのがん発症率が上昇傾向である上に生存率も低いという事態の深刻さに触発されたClose医師らは、AYAのがん人口統計を調査するとともに、AYAがんが臨床医にとって特別な懸念領域であることの生物学的、社会的、心理的要因を検証した。

著者らはまず、米国国立がん研究所(NCI)のSurveillance, Epidemiology and End Results(SEERS) プログラムおよび北米中央がん登録所協会に2015年までにAYAについて登録されたがん発症率および生存データと、米国疾病対策予防センター(CDC)の国立健康統計センターの死亡率データを検証した。彼らは、2000年以降、AYAがん患者において小児がん患者に匹敵する5年生存率の上昇を表す有望なデータをみつけたが、依然として「AYAギャップ」があることも判明した。「AYAギャップ」とは、過去数十年におけるAYAがん患者の生存改善率が他の年齢層と比べて低いことをいう。この格差は、AYA世代内における差異、独特ながん生物学的特徴、および社会的要因に起因すると考えられる。

がん種と生存率の分布は、AYA世代内の年齢群や性別によって大きく異なる

著者らはAYA世代を、それぞれに特性を有する3つの年齢群、すなわち15~19歳、20~29歳、29~39歳に分けた。年齢群によって異なるがん種に罹患する傾向があった。例えば、血液腫瘍は15〜19歳で最も多く発生し、特にリンパ腫では全症例の22%を占めていた。この年齢群は、脳腫瘍の発生率も高かった(10.4%)。20~29歳群および29~39歳群では、血液腫瘍と脳腫瘍の発症が15〜19歳群ほど多くなく、リンパ腫と白血病の発生率はそれぞれ7.7%と3.4%であった。AYA年長者では、メラノーマ(黒色腫)、乳がん、大腸がんが多くなる。乳がんと子宮頸がんの発生率は30〜39歳の女性でそれぞれ29.0%、7.7%であるのに対して、思春期ではがん全体の1%に満たない。AYAで男女ともに発生するが、男女間で違いがあるがん種の発生率に重大な格差がみられた。女性AYAの甲状腺がんの発生率は男性と比べて5倍近く高かった。

生存率は、AYAの年齢群によって異なることがわかった。2008年から2014年まで、急性骨髄性白血病(AML)患者の5年生存率は15〜19歳の男性で81.2%であったが、20〜29歳60.3%、30〜39歳の男性62.7%であった。大腸がんの5年生存率は、男性ではどの年齢群でも66~67%あたりで同程度であったが、女性、特に15〜19歳の年齢群では90.3%であった。

著者らによると、小児、AYA、成人の死亡率は1970年以降低下している。2007年から2016年までのAYAの死亡率を調べたところ、年に0.8%低下していた。この低下傾向は、白血病と非ホジキンリンパ腫では男女ともに同様であったが、一部のがん種では男女差があった。例えば、ホジキンリンパ腫の死亡率は、女性AYAでは年10%低下したが、男性ではわずか年5%であった。残念なことに、こうした進歩も、大腸、骨および関節、子宮体のがんなど、AYAで多く診断されるいくつかのがん種の死亡率が横ばいまたは上昇しているため、帳消しとなっている。

一部のがんの生物学的特徴はAYAに特有

がんの特異な生物学的・ゲノム特性がAYAで確認されている。AYAがんのドライバー変異の解析が進行中であるが、これまでに得られたデータから、AYAでは変異負荷が高めのようであり、乳がんや大腸がんなど一部の腫瘍は組織構造があまり良くないことが示されている。粘液性大腸がんやトリプルネガティブ乳がんなど悪性度の高いがん種は、AYAで非常に多い。MUC遺伝子変異は、AYAで粘液性大腸がん発生率が高いことに関連していると思われる。データから、遺伝性非ポリポーシス大腸がん症候群の遺伝的素因がある患者を除外した場合でも、大腸がんの発生・進展に重要な役割を果たすミスマッチ修復遺伝子の変異が、AYAでは年長成人と比較して不相応に多い可能性があると言える。また、最近の報告から、AYAにおける大腸がん発生率の上昇は、若年成人の肥満増加に伴うものと考えられる。

メラノーマに関しては、メラノーマのドライバー遺伝子の変異は、AYAと年長成人とでは同様の割合で発現すると推定されている。しかし、AYAでは、紫外線に関連しないDNA損傷の分布が異なることが報告されており、それがミスマッチ遺伝子修復に関連し、メラノーマ発症増加の原因となっている可能性がある。別の例として甲状腺がんをみると、年長患者と年少患者では同様のドライバー変異がみられるが、二次遺伝子変異に違いがあることが報告されている。対照的に、急性リンパ性白血病の遺伝学的解析では、フィラデルフィア染色体陽性型白血病など、高リスク変異の発現率が高いというドライバー遺伝子変異の顕著な不均一性が明らかになり、不均一性は診断時の年齢が上がるほど増大する。

AYAが最適なケアを受けられない背景として、AYAを対象とした研究件数や臨床試験登録者数、ケアを受ける機会、医療保険適用者がいずれも少ないこと、AYAに特化した心理社会的支援が欠如していることなどがある

15歳から19歳までに、がん治療は小児科医からより広範なプライマリケア提供選択肢へと移行する。今回の研究者らによれば、成人医療機関におけるAYA患者の臨床試験登録者数は成人登録者数よりも少ないと思われ、小児医療機関では、AYA患者の試験登録者数は小児登録者数よりも約10〜20%低いことがわかった。

AYAの臨床試験への登録は、受診医療機関の影響と保険の影響を二重に受ける。すなわち、無保険の患者、年長AYA患者、および小児医療機関で治療を受けないAYA患者は、臨床試験に登録される傾向が低かった。さらに、米国で無保険者の割合が最も高い年齢層は、26歳以上の若年成人であり、2016年の無保険率は、19~25歳で14%、26~34歳で16%であった。これに対して45~64歳では9%、65歳以上では2%であった。小児と思春期世代の無保険率は5%であったが、思春期後期に急上昇し、18歳でほぼ10%となっていた。

公的保険適用または無保険の状態は、AYAに最も多いがん12種類それぞれの死亡リスクが高いことと関連があると判断された。というのも、公的保険適用あるいは無保険の人々は、疾患が進行してから診断を受ける傾向にあるからである。無保険状態は、同じ病期で診断を受けた患者でも、死亡率に関わる独立危険因子であることもわかった。

法的に独立する年齢は18歳であるが、脳の生理学的発達は30歳まで続き、対処能力の心理的発達は生涯続くと、今回の記事は指摘している。AYA患者はがんの診断中および診断後、仕事を続けたり、教育を修了したり、成熟した関係を維持する能力が下がるとの報告があり、診断と治療のせいで心理的発達が停滞、停止、または退行さえする可能性があることが示唆される。心理社会的ニーズが満たされていないことが、健康関連の生活の質の低下、疲労、および仕事/学業の能力低下につながったと考えられる。

AYA世代のがん患者は、各年齢群間および年長患者と年少患者との間で必要なサポートが異なる。すべての患者は、がんの診断と治療の効果に対して感情面で折り合いをつけなければならないが、若いAYA患者は、それに加えて学業の中断や自立生活の遅れなど、その年代ならではの問題の影響を受ける。年長AYA患者はキャリアアップの中断に向き合うこととなり、それによって経済的自立にも影響が及ぶ上に、十分な医療保険に入れない可能性もある。これらの要因はAYAの年長群で増大し、そこに生殖機能の温存を含む性的および人間関係に関する懸念が加わる。AYAがん患者のほぼ3分の1で確認されている抑うつ症状を改善するには、メンタルヘルスと支援グループサービスの向上が必要である。

結論

著者らは、AYAと他の年齢層のがん患者の間の格差は、AYAがんを対象とした研究件数と臨床試験登録者数を増やすことで縮小できる可能性があると結論づけた。社会的措置としては、彼らがケアを受けやすくするとともに保険適用を受けられるようにすること、さらにAYAならではの心理社会的サポートを提供することなどがある。著者らの記述によれば、こうした目標に向けて複数の組織が立ち上げられており、具体的には、Research Efforts Directed Toward AYA Cancers、The Global AYA Cancer Congress、Teen Cancer America in the US、Teenage Cancer Trust in the United Kingdom、CanTeen Australia などがある。

すべての年齢群にわたって同等ではないが、AYAの臨床試験登録者数は2006年の14.8%から2012年と2013年の17.9%まで増加したことを著者らは確認した。上記以外の組織でSouthwest Oncology Group およびChildren’s Oncology Group (COG)は、研究プロトコルにおける年齢層間の格差是正を試みている。例えば、COG白血病・肉腫研究プロトコルは、適格年齢を30歳以上と拡大し、Sarcoma Alliance for Research through Collaborationは、臨床試験プロトコルの最低年齢を12歳に引き下げた。もう一つの例は、AYA世代に特化したプロトコル専門委員会に組み込まれた大規模コホート研究、BRIGHTLIGHTである。

著者らは、一人一人が臨床試験登録の機会を探したり、心理学関係者との協力関係を築いたり、患者が利用できるあらゆる財源をすべての患者に周知させることによって、AYA患者を支援することを提言している。

参考文献:Close AG, Dreyzin A, Miller KD, et al. Adolescent and young adult oncology—past, present, and future. CA: A Cancer Journal for Clinicians 2019; 69(6):485-496. doi: 10.3322/caac.21585.

翻訳山田登志子

監修佐々木裕哉(白血病/MDアンダーソンがんセンター)

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