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PARP阻害薬3剤、卵巣がん初期治療に有望な結果

現在、PARP阻害薬として知られる薬剤は、治療後に再発した進行卵巣がん患者の治療に使用されている。最近、新しく3つの臨床試験の結果が発表され、これらの薬剤が進行卵巣がんと新たに診断された患者にも利益をもたらす可能性があることが示された。

PARP阻害薬であるniraparib[ニラパリブ](Zejula[ゼジュラ])、オラパリブ(リムパーザ)、veliparib[ベリパリブ]の、おのおのの臨床試験では、高悪性度の漿液性上皮性卵巣がん、卵管がん、または原発性腹膜がんの患者が組み入れられた。

新たに診断された進行卵巣がん患者に対する標準的な初期治療では、通常、手術と化学療法の併用による一次治療と、その後の維持療法(がんの再発防止を目的とした追加治療)が行われる。しかし、ほとんどの患者では、初期治療から3年以内に再発することが知られている。

3つの臨床試験すべてにおいて、一次治療、維持療法、またはその両方としてPARP阻害薬を使用することにより、参加者のがんが再発または悪化するまでの期間を大幅に遅らせることが示された。 3試験の結果は、スペインのバルセロナで開催された2019年欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会で発表された。

ニュースリリースにおいて、「さまざまな化学療法のアプローチを数十年にわたって研究してきたが、無増悪生存期間を有意に延長したのは初めてであり、PARP阻害薬により卵巣がん患者の長期転帰が改善することを願っている」と、1試験の研究責任者であるバルセロナのバルデブロン腫瘍学研究所のAna Oaknin医師は述べた。

本試験には関わっていないNCIがん研究センター女性悪性腫瘍部門のChristina Annunziata医師は、これらの結果は高揚するものであると述べたが、試験デザインや結果がそれぞれ異なり、卵巣がん患者の治療戦略にさまざまなPARP阻害薬をどのように組み込むのが最善かという点には疑問が生じると指摘した。

現在、専門家らが協力し、卵巣がん治療の新しいガイドラインを起草しているとAnnunziata医師は付け加えた。

DNA修復の障害
卵巣がん患者の3人に1人は、特定の種類のDNA損傷を修復できない腫瘍を持っている。たとえば、BRCA1およびBRCA2遺伝子の有害な変異は、DNA修復の欠陥につながる。

この重要なDNA修復能力を欠く腫瘍は、相同組換え修復異常またはHRDと呼ばれる。 HRDは、有害なBRCA変異の存在またはがん細胞株の検査で特定のスコアを評価し、定義した。

2018年、画期的な臨床試験により、PARP阻害薬であるオラパリブによる維持療法が、有害なBRCA変異を有する卵巣がん患者に有益であることが示された。

以降、HRD腫瘍である患者とHRD腫瘍ではない患者において、より大規模な試験を行い、PARP阻害薬が卵巣がん患者に対して有効であるかどうかを確認する必要があった。 今回発表された3試験では、この点を解決することにもつながっている。

PRIMA試験:ニラパリブによる維持療法
新しい試験のうち1つでPRIMA試験と呼ばれる国際共同試験では、PARP阻害薬であるニラパリブが、新たに卵巣がんと診断された患者に対する維持療法として有効であるかどうか評価された。この試験は、ニラパリブを開発するGlaxoSmithKline社が後援した。

一次化学療法で効果がみられた700人以上の患者が、ランダムにニラパリブまたはプラセボの投与に割り当てられた。参加者の半数はHRD腫瘍を持っていた。

全患者の解析では、ニラパリブはプラセボと比較して約6カ月、がんが悪化したり再発したりせずに患者が生存した期間の中央値(無増悪生存期間中央値、主要評価項目)を延長した(14カ月対8カ月)。

参加者には、再発リスクの高い女性(非常にがんが進行した患者や手術で腫瘍を完全に切除できない患者)が含まれており、実際の状況をより代表している点に注目することが重要であるとAnnunziata医師は述べた。

HRD腫瘍の患者において、無増悪生存期間中央値は、ニラパリブ群で22カ月、プラセボ群で10カ月であり、より顕著に改善した。

また、腫瘍がHRDではない患者においては、ニラパリブは無増悪生存期間中央値を約3カ月延長した(8カ月対5カ月)。

PARP阻害薬は、血液細胞に影響を与える可能性があり、ニラパリブ群で最も多くみられた重篤な副作用は、赤血球(貧血)、血小板(血小板減少症)、および白血球(好中球減少症)の正常値以下への減少であった。

PRIMA試験の結果は9月28日、New England Journal of Medicine誌に掲載された。

ニラパリブは最近、米国食品医薬品局(FDA)により、本試験とはわずかに異なる適応で承認された。適応症は、HRDである進行卵巣がんで、少なくとも3種類以上の化学療法を受けた患者が対象となる。 FDAは、Myriad Genetics社が製造するmyChoice CDxmと呼ばれるHRD腫瘍の検査も承認した。

PAOLA-1試験:オラパリブとベバシズマブによる維持療法
進行卵巣がん患者の一次治療後の維持療法として、FDAは2種類の治療を承認している。オラパリブは、有害なBRCA変異陽性の患者に対して承認されており、ベバシズマブ(アバスチン)は、BRCA変異の有無に関係なくすべての患者に対して承認されている。

PAOLA-1と呼ばれる別の新しい試験では、維持療法としてベバシズマブとオラパリブの併用療法を評価した。一次治療によって腫瘍が完全または部分的に縮小した進行卵巣がん患者800人以上が、ベバシズマブとオラパリブの併用療法またはプラセボのいずれかによる維持療法を受けるようランダムに割り当てられた。

この試験に参加したすべての患者では、ベバシズマブとオラパリブの併用療法により、無増悪生存期間(PFS)中央値が約5カ月改善された。

PRIMA試験と同様に、HRD腫瘍の患者において、最も有効であると考えられた。HRD腫瘍の患者では、無増悪生存期間中央値が、プラセボ群よりもオラパリブ群で19カ月延長した(37カ月対18カ月)。

一方、腫瘍がHRDではない患者では、オラパリブ群とプラセボ群の間で無増悪生存期間中央値に差はみられなかった。

しかし、ミラノ・ビコッカ大学の研究者であるNicoletta Colombo医師は会議において、「母集団全体で主要評価項目の有効性が確認されたため、HRD検査陰性の患者を除外しなくてもよいのではないか」と述べた。

重篤な副作用の報告は、両群の患者で同程度であり、最も多かったのは高血圧と貧血であった。オラパリブ群では、患者の20%が毒性のために治療を中止した。

ベバシズマブとオラパリブの併用により転帰が改善されることは刺激的な発見であるとAnnunziata医師は述べた。「これまでは、BRCA変異陽性患者にはオラパリブ、陰性患者にはベバシズマブを選択しなければならなかった」と彼女は述べ、両方の選択肢を組み合わせることができる可能性を示唆した。

VELIA試験:ベリパリブによる一次治療および維持療法
VELIA試験では、ベリパリブを一次治療の一部および維持療法として評価する少々異なるアプローチをとった。 ベリパリブの製造元であるAbbVie社は、国際共同試験を支援した。試験結果は9月28日にNew England Journal of Medicine誌に掲載された。

新たに進行卵巣がんと診断された1,000人以上の患者が、化学療法に加えてプラセボまたはベリパリブのいずれかを一次治療として受け、その後プラセボまたはベリパリブのいずれかを維持療法として受けるようランダムに割り当てられた。

ベリパリブ群(一次治療と維持療法でベリパリブを投与した患者)の結果を、対照群(一次治療と維持療法でプラセボを投与した患者)と比較しました。

全患者の解析では、ベリパリブは無増悪生存期間(PFS)中央値を約7カ月延長した(24カ月対17カ月)。HRD腫瘍の患者の無増悪生存期間中央値は、対照群よりもベリパリブ群で11ヶ月延長した(32カ月対21カ月)。

無増悪生存期間の延長は、有害なBRCA変異を持つ患者においてさらに顕著であり、これらの患者の無増悪生存期間中央値は、ベリパリブ群で35カ月、対照群で22カ月であった。

ベリパリブ群の患者で最も多く報告された副作用は悪心であった。また、対照群の患者よりも血小板減少症の発生率が高かった。ベリパリブ群の19%は、副作用のために維持療法中にveliparibを中止した。

どのような患者に初期治療としてPARP阻害薬を投与するべきか?
3つの新しい試験では、BRCA変異陽性の患者に加えて、HRD腫瘍の患者において、PARP阻害薬による初期治療が有効であることを示す大規模なデータが得られた。「これは大きな前進である」と本試験には関与していない、シカゴにあるノースウェスタン大学の腫瘍内科医であるDaniela Matei医師は述べた。

新たに卵巣がんと診断された患者に対し、3つのレジメンのいずれも現在FDAによって承認されていないことを考えると、医師がそれらの中からどのように選択するかを予測するのは困難であるとMatei医師は述べた。しかし、新薬であるベリパリブの使用経験は少ないため、医師がベリパリブを選択する可能性は低いだろうと彼女は付け加えた。

腫瘍がHRDではない患者に関しては、PARP阻害薬による初期治療の効果は不明である。HRD腫瘍ではない患者の結果は試験間で異なり、このような患者の結果を具体的に分析するために設計された研究はないため、「これらの試験から得られた知見は決定的ではない」とAnnunziata医師は説明した。

そのため、現時点では、PARP阻害薬による初期治療をすべての女性に推奨すべきか、HRD腫瘍の女性のみに推奨すべきかは明確ではないと彼女は述べた。 BRCA変異の検査は標準治療の一部だが、HRD検査はまだ一般的ではない。

また、別の重要な課題として、Matei医師は、病気が再発した患者やPARP阻害薬による初期治療が無効な患者にどのような治療が有効かという点を挙げた。

翻訳河合加奈

監修勝俣範之(腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)

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